今日知り合ったばかりの少女なのにやたらと話をすることになってしまった
由利と共に学校に戻ると誰かに目撃されたときになんやかんや言われると面倒なので、それぞれ別に行くことにした。
「あの、今日一緒に帰ってもいいですか?」
少々考えたが、帰宅時間なら見られたところで誰にも何も言われないだろう。
丁度、今日は部活ないし、マルも早めに帰るとか言ってたしいいだろう。
それに、もう少し情報が欲しいところではある。
「いいよ、でも終わる時間はまちまちじゃないかな?」
「多分二年生の方が早いから少しだけ待ってますよ」
「1時間くらい待つことになるけど大丈夫?」
「教室で宿題してるので大丈夫ですよ」
「じゃあ、ちょっとだけ待ってくれるかな?」
「17時中庭で待ってます。何かあったらまた連絡してください」
「わかった」
帰りの約束をして俺たちは学校に戻った。
教室に戻ると早速質問ラッシュが止まらなかった。
「授業サボってどこ行ってたんだよ!」
「彼女と変なことしてたんじゃないだろうな!」
「キョウコちゃんに報告させてもらうからな!」
うるさいうるさい、彼女もいないし、報告でもなんでも勝手にすればいい。
今はリアルよりもネットでの安息が失われかけてることの方が何倍の重要なのだ。
貴様ら三次元と相手してる暇などない。
俺はうるさい群衆を抜け、自分の席に座り早々に寝たふりをかました
「なんだよあいつ。面白くねぇな」
「マジでボッチの典型的な例だな」
ご自由にどうぞ。この問題が解決したらお前らとも話してやるからよ。
とりあえず授業も聞いていてもつまらないし、『ユリキドール』の対処法について考えるか。
一つ有力な武器として、由利を仲間に引き入れたのは大きい。
何か俺の配信に問題があれば彼女に処理してもらえばいい。汚れ仕事になるが、今日の感じを見てたら引き受けてくれるだろう。
『ユリキドール』の事は解決していないが、昨日のような配信にはならないだろう。
実験として今日、由利に配信をサポートしてもらおうか。アイドルのマネージャーのようなことをしてくれればいいと言えば、了承してくれるが、問題の根本的な解決には繋がらない。仕方ない、俺が由利の友達に事情聴取して特定するしかないか。もし、この学校にいないのであれば本当にブロックするしかないが。
やはりネットの世界ということもあって姿が見えないことがやっかいだ。
とはいえ、できることはしないとな…由利みたいに…配信を…楽しんで…く…。
俺は眠ってしまった。気が付くと、昼飯の時間になっていた。どうやら午前の授業は全てトんでしまったようだ。そこまで成績も落ちてないし、少しくらいなら別にいいだろう。まだ高2だし、卒業したら就職するし。
俺は一人で食べても別にいいと思ったが、どうせならこの時間ですら無駄にしたくないと思い弁当を持って一階に行き1-Cに入って大きな声で一言。
「由利!一緒に昼ご飯食べないか?」
正直、どこに由利がいるのかも分からなかったし、これなら誰か友達が反応してくれるだろうと思った。
すると、俺の一言と共にクラスは騒がしくなった。
「え!由利、あの人と付き合ってるの?」
「ていうか、めっちゃイケメンじゃない?」
「二年生じゃん。しかも成績優秀な斎藤先輩じゃない?」
騒然とするクラスの中心に由利はいた。
顔を赤くしながら俺に近づいてきた。
「どうせだし、中庭で食べる?」
由利は俺の前に到着した。
「何しにきたんですか?」
「え、まあなんというか一緒に飯でもどうかなって思っただけだけど?」
「…わかりました…ちょっと待っててください…」
由利は、自分の席に弁当を取りに戻った。
「由利、あの人誰なの?」
「後でちゃんと説明する…」
「彼氏?」
「彼氏ではないよ…私が推してる人…」
「誰?誰?」
「待たせると悪いから後で話すね」
「うん、行ってらっしゃい」
友達と少し話をした後、由利は俺のもとに戻ってきた。
「行きましょうか…」
「オッケー」
俺は由利と一緒に中庭に向かい、ベンチに座った。
「一緒に帰るって約束したのに早くないですか?」
「ちょっと話がしたくて…」
「嬉しいからいいですけど…」
「それでさ、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「な、なんですか?」
由利は先ほどと打って変わって少し緊張してるようだ。
別に誰に見られてるわけでもないのに緊張することないのに…
「あのさ、由利の友達も俺の配信を聞いてくれてるって言ってたよね?」
「はい」
「その友達を紹介してもらっていい?」
「え、どうしてですか?」
「俺の配信についていろんな意見を聞きたいからさ」
「あー、それは別にいいですけど、何を聞くんですか?」
「どういう配信がいいとか、何か配信の参考になりそうなことだよ」
「ふーん、わかりました。じゃあ今日、一緒に帰れそうな子連れてきます」
「ごめんね、ありがとう」
よし、これで何かの情報は得られるだろう。
「ちなみに、話は変わりますけど、信二さんの女の子のタイプ教えてもらっていいですか?」
「え、俺のタイプか…あんまり意識したことないけど、元気で人の悪口とか言わない子とかが好きかな?よくわからないけど…」
「ほうほう、メモしますね」
由利はポケットからメモ帳を取り出し、俺の発言をメモしだした。
「別にメモしなくてもよくない?」
「信二さんの言うことは尊いのでメモしておこうかと思いまして」
配信を応援してくれるのはありがたいけど、それは違う気がする。
「他にも、もっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「いいよ」
この子の機嫌を取っておくことは俺にとってもそう悪い話ではないからな。
俺はそこからどういう女の子が好きか、女の子と付き合う時に大切にしたいことは何かなどを散々聞かれた。
正直、途中でもうやめて欲しいとは感じていたけれど、勿体ぶるなことでもないし全ての質問に答えた。
「由利、そろそろ昼飯食べないと授業に遅れるよ?」
「あー、授業なんて聞いても聞かなくても一緒なんでいいです」
天才少女か?
「でも信二さんはそういうわけにもいかないですよね…」
優しいからそう言ってくれたのかもしれないが、受け取り方のよっては嫌味にしか聞こえないぞ。
「いや、俺も別に授業聞かなくてもいいけどさ」
その言葉を聞いた瞬間、由利は顔を赤くして俺に提案を持ち出してきた。
「こんなお願いしたら迷惑かもしれないけど、一緒に午後の授業抜け出しませんか?」
「いいよ」
一瞬どうしようか考えたけど、今日知ったので若干の特別扱いはいいだろうということで了承した。決して俺が女の事遊びたかったわけではない。
そうして俺たちは授業をサボって学校を抜け出すことにした。
皆さんの意見や批評など、よろしければ何でも送ってください。
なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。
よろしくお願いします。