よく分からない女との鬼ごっこ
次の日
目が覚めたのと同時に俺は配信アプリ『嫌ホン』に接続した。
昨日の配信に対しての炎上していたら鎮圧しないといけないのでな。
…どうやらいくつかの書き込みがされているようだな。
『今日の配信は、ユリキドールが邪魔過ぎました(ドランゴ)』
『なんかいつもと違いました…(nikko)』
他にも同じようなコメントが10数件入ってるな。
俺に対する批判はないので、とりあえず炎上と言うほどの事は起きてなかった。
だが、このままでは昨日と同じようなことになってしまうので何とかしないといけないな。
ブロック機能を使って追い出すこともできるが俺の評価が少しばかり下がることは避けられないだろう。
『それはよろしくないのでは?』とか『もうちょっと大人になろうか』などのイメージダウンにつながってしまうので、できればしたくない。
解決するには昨日の女を捕まえて問いただすしかないようだな。
俺は朝飯を食べ、散歩に行き、用意を済ませ学校に向かった。
行き道に特に問題はなく下駄箱に着くと、昨日と同様に手紙が置かれていた。
『昨日の配信は少し思ってたのと違いました。』
いや、お前のせいだろうが。
それとも『ユリキドール』なんて奴はこの学校にはいなくて、ただの荒らしがこの世のどこかにいるってことか?
それはそれで困る。ここにいないと問題の根本的な解決に繋がらない。
とりあえず、この手紙の主を捕まえて知ってることを聞くしかないな。
俺は、始まりの地に向かい学校モードに切り替えた。
「諸君、おはよう。今日は授業が大変だけど共に頑張ろうではないか」
「うるせぇよ斎藤。変な喋り方してんじゃねぇよ」
ガヤがうるさいことはいつもの事なので特に問題はない。
この地に『ユリキドール』がいれば話は早いんだが。
俺が到着した時刻が早かったわけではないが、俺が地に着くとほぼ同時に師が来た。
「みんな、早く席について!ホームルーム始めるよ!」
登場したところで紹介でもしようか。
師の名前は…いや知らなくてもいいだろう。俺の物語にこいつの出番はないからな。
師の一言により、うろうろとしていたクラスメイトは全員席に着いた。
「と言っても、今日は特に話すことないんだけどね」
「ないんかーい」
「おい、キョウコちゃんに文句言ってんじゃねぇぞ」
「うっせぇ、お前はキョウコちゃんに気に入られたいだけだろうが!」
師の言葉はクラスメイト達には響かなかったみたいだ。
それもそのはず、師は教師と思えないくらい容姿が整っており、まるでモデルをしているんじゃないかってくらい綺麗だ。
それに加え、締まりのない可愛い声、おっとりとした雰囲気は生徒をまとめ上げるのにあまりにも適していない。
他の師が言い寄ってくるシーンも生徒の俺たちでさえ何度も見ている。
「まあ今日もいじめや喧嘩とかはしないで過ごしてね」
「可愛い―」
教師と生徒のやり取りと思えない。
大体こいつらはどういう気持ちで師にそんなことを言ってやがる。正直、気持ち悪いとしか言いようがない。
「そういうのいいから、朝からの授業に集中してね」
「はーい」
こいつらの師に対する態度は置いといて、今日中に何としても見つけなければいけないな。
一時限目が開始する前に俺は再度、下駄箱に向かった。
もしかしたら、また手紙を入れてるかもしれないからな。
俺の下駄箱を覗いてみたところ、分かってたことだけど何も入ってなかった。
どうしたらいいんだよ。
すると、中には何も入ってなかったけど、俺を見る視線を感じた。
振り返ってみると、俺が来た方向に一人の女がこちらを見て立っていた。
「おい、お前が俺の下駄箱に手紙を入れてた女か!?」
「すいません!」
俺が話を聞こうと近づくと、女は一目散に逃げた。
今度こそ逃がすか。
俺は女を追った。一階、二階、三階と階段を上り俺から逃走するが、どうやら足の速さは俺の方が早かったらしく、少しずつ距離が縮まっていった。
よし、この調子なら追いつける。
女が三階に着いて追いつかれると思ったのか女子トイレに入った。
くそ、これじゃあ女が出て来るまで待たなきゃいけないじゃないか。
躊躇いなく突入することもできるが、そんなことをすれば俺の主人公としての立場がなくなるのでやめることにした。
授業もあるが、今の俺にとって授業よりも女の事が気になるので俺は授業を捨てる覚悟を決めた。
10分経過。
女はまだ出てこない。授業は既に開始しているが、俺は女が出て来るまでトイレの前で何分も待つことを決めていた。
そこからさらに10分経過して問題が発生した。
一人の師が授業をサボってないか見回りに来た。
別に授業をサボってることをバレることは構わないが、女の行方を分からなくなることは避けたい。
俺は男子トイレに入り、その場をやり過ごすことにした。
「おーい、誰かトイレ入ってるのか?」
師は男子トイレに入ってきて箱に入ってる俺に対して声をかけてきた。
「お腹の調子が悪いのでまだ出れそうにありません」
「このトイレにどんだけ腹壊してる奴いるんだよ」
それを聞いた途端、俺は箱から一気に出た。
「女子トイレにも入ったんですか?」
「え、まあ一応確認の為に入ったけどそこにいた子はもう既に戻ったぞ」
マジかよ…
「その子は何処に行きましたか?」
「え、知らないけど一年生のバッチをつけてたから一階に行ったんじゃないか?」
俺は師を無視して、一階に直行した。
もう間に合わないかもしれないけどとりあえず走った。
俺が一階に着いて教室の方を見ると、女は丁度教室に入ろうとしてるとこだった。
1-C組みたいだ。
俺は急いで1-Cの前に向かい、女の容姿を確認した。
遠くてよく見えなかったけど、大体どんな子か分かった。
これだけでも一つの収穫だろう。
安心した俺のもとに一人の女子生徒が話しかけてきた。
「すいません、2年生の人が授業中に何の用ですか?」
そう、この学校は左胸にバッチをすることになっており、その色によって学年が分かるようになっている。
赤が一年、青が二年、黄が三年生と言う風になっている。
ついでに言うなら、階層により学年の教室が分かれている。
一年は一階、二年は二階、三年は三階と言う風になっている。
ちなみに、この女のバッチは赤である。
そんな前置きはともかくこの女子生徒に何か言い訳をしなければ…
一年生の女子生徒を追ってここまで来ましたなんて言ったら、その後どうなるかわからない。
「ふ、俺に学年の概念も授業の概念もない。ただ単に好きな時に好きなことをするだけのㇽ浪人よ」
とりあえず、いつもキャラで貫いてなんとかするしかない。
「え、ちょっと待って。もしかして…」
女は驚いたような表情で俺を見つめてきた。
「流浪人だったら、ちょっとお時間よろしいですか?」
「う、うむ。問題ないが…」
俺は、赤の女に半ば強引に校外に連れていかれた。
皆さんの意見や批評など、よろしければ何でも送ってください。
なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。
よろしくお願いします。