何事かと思ったら、想像の斜め上を行った
と、その前に、俺の母親について少し説明しておこう。
名前は、斎藤楓。
年齢は45歳であるが、年齢よりも若く見られ、街では20代の若いお姉ちゃんと間違えられることもある。
その上、本人も可愛らしい服装や、流行りのカフェなどが大好きなのでより一層45歳には見えない。
俺自身も昔は、「大きくなったらお母さんと結婚するー」などとのたまっていたほどだ。
しかし、外から見る人にとってはそのような可愛らしい一面しか見えないが、内から見ている俺にとっては、母親は45歳と呼ぶにふさわしいほどに『おばちゃん』している。
晩酌はもちろん、テレビを見ながら鼻くそほじったりするし、大きな口を開けて寝ていることも多々ある。
だらしないので俺が何度注意しても変わらない。
これが、可愛らしい面とだらしない面を併せ持つ俺の中では中々に自慢できる母親である。
ちなみに、親父はいるが、他に女を作ったみたいで家に帰ってこないことが多い。
俺も母親も気づいているが、親父の金で飯を食わしてもらっているのでなるべく言わないようにはしている。
さて、前置きはこのくらいでいいだろうか。それでは、母親の話の続きから物語を進めよう。
「実は今日ね、信二が学校に行っている間、お父さんが帰ってきたの…」
「え、仕事はどうしたの?」
「うん、お母さんに話があるから早上がりしてきたみたい…」
「それで、話って何だったの?」
俺は離婚程度は十分に覚悟しながら慎重に話を聞いた。
「それがね…できたんだって…」
「は?まさか、浮気相手と子供ができたの?」
「…」
母さんは俺の質問を聞いたのち、また涙を浮かべた。
「何でそこで沈黙になるんだよ。母さん!」
「…」
母さんは暫く口を閉じてその後、30秒ほどして再度口を開いた。
「違うよ…」
「え」
「やっと、自分のプラモデルができたんだって」
「は?」
俺のきょとんとした顔を見て、母さんはさらに続けた。
「なんかずっと作ってたプラモデルが完成したんだって」
「それで、何を泣くことがあるの?」
「だって、私よりもプラモデルに夢中なことが悲しくて…」
どうやら、俺の母親にはメンヘラな一面があるようだ。
一瞬、本当に離婚の危機も考えたけど、俺の取り越し苦労だったみたいで助かった。
「それと、俺が何の関係があるの?」
「だって…お父さんもそうだけど、家族が離れ離れになっていくように感じてきたから…」
母親でなければ、間違いなく惚れていたであろう程に可愛らしく感じてしまった。
いや、親子でそんなことはダメだとわかっているけれど。
「そんなことないよ、俺だって家族を大切にしようと思ってるよ」
「ホント?」
「ホントだよ」
母親には迷惑かけてきたし、本当に家族の事は一番に考えたいと思っている。
「じゃあ、何でご飯は後でいいとか言うの?」
「それは…ちょっとやることがあって…」
「そっか…わかった…」
母親の寂しそうな眼を見た途端、俺は配信のことなどどうでもよく感じてしまった。
「と!思ってたけど、やっぱり一緒に食べようかなって思ってたんだ」
「ホント!?じゃあすぐ準備するね」
「待ってるよ」
寂しそうな感じから一気に嬉しそうな表情に変え、母さんは台所に戻った。
その時にはもう涙は浮かべてなかった。
「ふふん♡」
「そういえば、親父は帰ってくるの?」
「ん?今日は帰ってこないって」
また、違う女のところか。母さんを寂しい思いさせるなら、もう離婚してしまえばいいのに。
「わかった。じゃあ俺、ご飯の前に風呂入ってくるよ」
「おっけー」
俺は体を横に往復しながら、楽しそうに夕食を作る母親を背に風呂に向かった。
小説を書くって難しいですね。
プロの方からすれば、私の小説など小説でもないのかもしれませんね笑