ver.2.1-30 諦めが悪いものは、潔くいかないもので
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!まだまだだぁぁぁぁぁ!!」
「全力をもって、迎え入れるためにもやるのじゃぁぁぁぁぁ!!」
‥‥‥アリスのテイム失敗によって落ち込むのかと思いきや、燃え上がるミートンたち。諦めの悪さはすさまじく、挑み続ける気力はあったらしい。
【オォォォ…‥ン】
【いや、流石にあれ、同族逃げる。と言ってますネ】
「翻訳されなくても見たらわかるって」
僕たちの方がテイム出来てしまったアリスの言葉に、全員同意して頷いてしまう。
テイムする気はなかったが、放置するとさらにミートンたちが暴走してやらかしかねない気がしたとは言え、彼らがまず彼女と同じようなモンスターをテイムできるのだろうかと疑問に思ってしまう。そもそもやっている時の絵面が、危ない不審者にしか見えなかったからなぁ。
【シャゲシャゲ、シャゲェ】
【バルバルゥ】
【ガウウ】
【ギャビィ】
他の面子が呆れたようになっているが、まぁ落ち込むよりはマシなのかもしれない。ちょっと危ない人たちの絵面になっているとも言えるが、止めようが無いしね。でも、一応動画に取っておいて、お孫さんの方へ流しておこう。あ、メールが…‥‥
―――――
>メールを受信しました。
『お爺ちゃんたちの暴走ぶりが良く分かりました。これからお婆ちゃんと一緒に向かいますが、巻き添えになる前に逃げてください。お婆ちゃん、鬼神のように凄い怖いことになってますので( ゜Д゜)』
―――――
‥‥‥そういえば、孫がいるってことは子供がいることで、つまりミートンは妻子が存在する…‥‥何だろう、今まで気が付かなかったけれども、結構驚愕の事実じゃないかな?あの人がまず結婚出来ていたということに驚愕させられるのだが、若さゆえのあやまちなどもあったのだろうか?
【あ、同職の方から連絡が…‥‥ふむ、ご主人様、この場からの退去をおすすめしマス】
「というと?」
【孫娘様の方にどうやら私の姉妹機もとい、使用人がいるようですが、そちらから状況が伝えられまシタ。いわく、『爆発寸前の火山』がいるようデス】
どう考えても、かなり不味い状況なのがうかがえるだろう。
テイム条件をそろえるためのものも失ったのに、それでも根性を見せるミートンたちを見ていられなくなったのかもしれない。
「全員、船に乗って避難するぞ。夫婦喧嘩は犬も食わぬというか、そんな家庭の状況を見たくないからね」
【シャゲ!】
【ガウウッ!】
【バルルル!】
【ギャビィ!】
【オォン!!】
【幸い、船も来たようデス】
この場に長居は無用という事で、末路が気になるけれども巻き添えにはなりたくはない。
緊急事態という事で別れを言う間もなく、この島の船着き場へ全速力で駆け込み、僕らはその場を去った。
‥‥‥そして数時間後、ネットの掲示板の一つに目撃情報が載ったようだが、火山噴火イベントでも起きたのかと勘違いされるほどのものであった。
「‥‥‥何ともまぁ、世の中にはすさまじい妻をもつ爺さんも居たのじゃなぁ。変態グループ相手に堂々とできるとは、何とも豪胆なものかもしれぬ」
「ミートンと同じような口調なのに、こっちのほうがまだまともに見えるなぁ」
「まともなんじゃが。ずっとまともな者なんじゃが」
ひとまず避難先として、僕らは今、大樹の村に訪れていた。
のじゃロリのいるところへ向かってしまったが、一応目的はある。
「それで、前に遭ったあの不審人物だけど、そのパーティの一人だったよ。来た時に逃げられるように、注意しておいてね」
「わかっているのじゃ。いくら何でも、変態はさけてほしいからのぅ」
そう、先日の襲撃変態の一人が、あのレッドのタローンであり、のじゃロリと遭遇すると結構絵面的に危ないので、注意を告げに来たのである。念のために、動画などももってきて、どういう人物だったのか、特徴は何なのかということも伝えておく。
悪い人ではないとは思うが、流石にぶっ飛び過ぎているからなぁ。のじゃロリには良い薬かもしれないけれども、流石に薬も度が過ぎれば毒となるからね。
「そう言えば、薬神のイベントは今どういう状況かな?」
「うむ、お主らが奉納してくれた薬は好評じゃったようでな、イベント終了後に特別賞などもあり得るかもしれぬのじゃ」
忘れがちだったが、今はイベント期間であり、今もなおプレイヤーたちによる薬の奉納は続いていて、大量に捧げられているらしい。
人によって出来上がる薬は様々であり、終了後は注目された薬のレシピが公開予定になっているらしく、今後のアルケディア・オンライン内でのポーションの向上などが期待されるようである。
「とは言え、悪ふざけで変なものを捧げる者たちもいたようじゃけれどな。薬と付けば何でもいいのかと疑問に思った者たちが検証グループとやらを立ち上げたらしく、滅茶苦茶なものも出て来たのじゃ」
「具体的には?」
「毒薬、麻痺薬は定番じゃが、何をどうやって作ったのか過敏薬や混乱薬なども捧げてきたようでな。度が過ぎた輩には天罰が落ちていたのぅ」
捧げるイベントとは言え、流石に度が過ぎると天罰として下るようだ。中身としては強力なデバフや、一部スキルや称号の期間限定凍結処理、アイテムの抹消などがあったらしい。
また、プレイヤーからの影響を受けるテイムモンスターにもくだっていたらしく、退化やおかしな方向へ進化するようになってしまった人たちもいたらしい。テイムモンスターにとってもとばっちりかもしれないが、その成長を楽しみにするプレイヤーにとってもかなりの罰にはなるだろう。
「何にしても、そんなこともあったがゆえに、今は通常通りというかまともなものが捧げられているのぅ」
ゲームの世界であっても、オンラインで多くの人々が集うからこそ、モラルは自然と求められるもの。節度を守って楽しむのが、一番である。…‥‥それ、ミートンたちに一番言えるかもしれないが、お婆ちゃんとやらの怒りに任せるとしよう。
とにもかくにも、この薬神のイベントはもう間もなく後半へ入り、あっと言う間に終盤に向かうだろう。だからこそ、今のうちにイベントを楽しんでおいたほうが良いかという事で、ミートンたちの末路を気にしない方針でいくことにしたのであった…‥‥
【オオォン?】
「‥‥‥しかしのぅ、新しい子が入ったのは良いのじゃろうけれども、あてつけか?持たざる者への大きな圧力をかけてきている気かのぅ?」
‥‥‥いや、そんなつもりは毛頭ない。ただ単純に、同じぐらいのものが出て来ただけで、大きな差を見せるようなことなんぞ考えていなかった。
【これ、レティアさんにはあとで、上からある程度の融通が働くかもしれまセン】
「え?なんで?」
【‥‥‥黙秘いたしマス。私は使用人で、それ以上のことを言う権限はございませんし、雷を落とされたくもありまセン】
どうなったのかは、定かではない。
ただ一つ言えるのは、一つの島で噴火が起きたと勘違いされるようなことになっていたらしい。
家族仲良くやっているのは良いのだが、バラバラに行動していてももうちょっと考えて‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥救済、できなかったよ。悲しいね、人の怒りって怖いね。




