ver.2.1-27 出会ってしまった運命は、時として・・・
「集合場所は、牛系モンスターが大量出現する『バイソン島』…‥‥牛頭のミノタウロスなどの強敵が出るここで待ち合わせだけど、何でここを選んだんだろうなぁ?」
【シャゲェシャゲ】
疑問はあれども、こちらから聞いて集合場所を提案したのだから、文句は言えない。
僕らは今、ミートン一家と連絡をメールでやり取りして、待ち合わせ場所となったこの島で待っていたのだが、選んだ理由がちょっと気になっていた。
「っと、そろそろ来たかな?」
船が着き、下船してきたプレイヤーたちの姿。この島に訪れる人たちが下船してくるのだが、本日は約束していたミートンさんたちしか訪れてこないようで、下船してきた人数は少ないだろう。
だがしかし、人数が少なくとも色が濃い。いや、前よりもカラフルになっているというか、面子が増えたようだ。
遠目で見て観察していると、どうやら僕らの事に気が付いたようでこちらに駆け寄り‥‥‥途中でスピードを速めたかと思えば、ばっと一斉に全員が飛びあがり、空中で回転しながら着地を決めた。
「お初にお目にかかるが、名乗りをあげさせてもらおう!!真っ赤に燃える血潮をたぎらせ、全てを焼き尽くして守って見せよう情熱の戦士、レッドのタローン!!」
「お久しぶりじゃな!!勢いそのまま、卵ご飯には欠かせない黄身の戦士、イエローのミートン!!」
「あ、久しぶりで。、付き合わされているが、これはこれで悪くはない、草花に同化したい雑草の戦士、グリーンのカックウ!!」
「新入り含め、なんか変わったと思う。冷静沈着な海の戦士、ブルーのスッケン!!」
【ブモブモブモウ、ブモオオォゥ!!(※特別カンペ:知性と筋肉は両立可能、知恵と力は公平な審判を下せる平等の戦士、マッチョン!!)】
「「「「4人と1匹そろって!!欲望戦隊『ミセタインジャー』ただいま見参!!」」」」
【ブモウ!!】
ドォォォンっと、それぞれのポーズを決め、名乗り終えた直後に爆発が鳴り響く。
なんというか、もうちょっと統一しろというか、ツッコミどころが満載過ぎて何も言えないのだが‥‥‥うん、ツッコミを入れるのを諦めるか。なんか増えているけど、あの人も良く見ればのじゃロリにぶっ飛ばされた赤い人だしな。
とにもかくにも、一旦情報の洪水に対して整理すべく、スルーを決めて情報を交換し合うのであった。
「‥‥‥なるほど、先日儂らが空の彼方へ吹っ飛ぶのを見て、連絡を取りたかったのじゃな」
「そうだよ。僕らの方はイベントで薬草を取りに行こうかと移動していた時に、ふと空の彼方へ吹っ飛ぶ姿が見えたから、何があったのか気になったので今回話し合いをしたいと持ち掛けたんだ」
他に下船をする人があまりいなかったとはいえ、一応プレイヤーたちが行き交う港から離れ、僕らは島の中の適当なエリアにて情報を交換することにした。
なお、説明内において少々嘘を言っている。僕らは見かけたとあるが、一応吹っ飛ばした側なんだよな…‥面倒事を避けるために見かけたと言っておいたが、無事にばれていないらしい。ここへ来る前にメールでも言っておいたが、どうやら完全に別物として理解してもらえたようだ。
「うう、ふっとばされた理由は分からぬが、おそらくレッドのとばっちりだろう。先ほど名乗りをあげたが、儂らに新しいメンバーが加わったのじゃが‥‥‥自己紹介、もう一度やっておくのじゃ」
「改めて、初めまして。ハルさんのことはミートンさんたちから聞いております。レッドとしてこの面子を率いさせてもらっているタローンです」
戦隊服のようなコスチュームを脱がず、そう名乗るのはタローンというプレイヤー。
説明によれば彼は二週間ほど前まではソロでプレイしていたようだが、ミートンさんたちと遭遇し意気投合した結果、パーティを組むことにして一緒にいたようだ。
そもそも、なぜ戦隊ものの格好をしているのかというツッコミどころがあるが、それには理由があるらしい。説明を求めると、ふっ飛ばされる前の話…‥‥彼らが遭遇した時から始まった。
――――――
事の起こりは二週間ほど前、ミートン一家は女性のパーティ加入を諦めることなく、アルケディア・オンラインの世界であちこち巡り歩き、必死に勧誘活動を続けていた。
僕らからの情報提供である女性型のモンスターと言えるようなものたちにもテイムできないか根気よく挑戦していたようだが、遭遇することから躓いていたらしい。
どうにかこうにかして女性を追い求めるも、どうにもできない現状。
ここはもう潔く諦めて、どうにか現実の方で土下座かあるいは色々と尽くして孫娘に加入してもらえないかどうかと思っていたその時に、とあるモンスターと戦闘してピンチに陥っていたタローンと出会ったそうだ。
ソロプレイをしていたようで状況が厳しく、一応求める以外はまともな部分もあるミートン一家は助太刀に入り、難を逃れた。
そしてタローンにお礼を言われつつ、互いに何か感じたようで場所を移し話し合った。
どうやら話し合う中で、タローン自身もどうやらソロではなくパーティを組みたいと思っていたが、相手に求める条件があって中々組むことができなかったらしい。
というのも、タローンもミートン一家同様に女性を求めていたようだが…‥‥その求める条件は幼い少女という事のようで、普通のプレイヤーでは年齢が合わない人が多くてソロになっていたらしい。
幼い少女を求めるプレイヤーと、女性を求めるプレイヤー。互いに年齢層の違いはあるが、それでも同じ異性を求める者同士という事で気が合い、話し合っていく中である結論が出たようだ。
―――――
「そう、それこそが戦隊ものパーティとして結成すること!!」
「女子に持てたいならば、魔法少女などのパーティのほうが良いかもしれないが、この面子ではどう考えても変態集団にしかならないだろう!!」
「ならば面子的にましな容姿になる、戦隊になって動くことで人々の助けになり、人気を得る!!」
「そして戦隊と言えば正義の味方のイメージもあり、対抗して悪の組織のようなものたちも出るだろう!!」
悪の組織に正義の味方、その二つが揃う事さえあれば、お互いの存在意義が成立する。
そして成立した暁には、それぞれの支援・対抗をするような者たちが出てくると予想でき‥‥‥その中に、自分達のファンになったり入隊を希望するような女の子たちが出るかもしれないと思い、今の戦隊風のパーティとして結成したようだ。
「‥‥‥なんか、物凄くばかばかしいというか、それで本当に出てくるのかなという疑問が出るんだけど」
浅いというか、そんな考え方でうまくいくのだろうかと思ってしまい、つい口が出た。
するとその瞬間、ずうううんっと分かりやすく意気消沈した。
「ふふふ、痛いところを突いてくるね…‥‥」
「戦隊ものは、確かに受けが良かった」
「だがしかし、受けたのは男性ばかり…‥‥しかも、中には男もいける人が出てきて、地獄があった」
「それでもやめないのは、このスーツが…‥‥脱げないんだよ」
「え?」
―――――
『欲望戦隊スーツ』
評価:【呪いの品:欲望】
効果:戦隊もののスーツとして作成された装備品。スーツを着たプレイヤーが互いに色違いの場合、人数が多ければ多いほどステータスの値に+効果が乗せられ強化されていく。
‥‥‥ただし、製作中にあふれ出る欲望が纏わりついたことが原因なのか、呪いの装備と化し着脱不可能。解呪には100以上の善行を積まなければならないという制限がかかっており、教会やポーションなどでの解呪は不可能となっている。その代償に、解呪までは強化される値が大幅に増加される。
―――――
‥‥‥恐ろしいのは、人の欲望だったようだ。というか、どんな思いを抱いて製作すれば、着脱不可能な装備品が出来上がってしまうのだろうか。
「そもそもどれだけあふれていたんだその欲望…‥‥」
「仕方がないだろ…‥‥だって、だって、絶対に幼女たちにモテたかったのだから!!大人の女性が寄って来ても、対象外なんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「モテたかったのだ!!入らなくても、応援してくれたり、差し入れがあったり、それを夢見ていたのだぁぁぁ!!」
「少なくとも水〇黄門のような形じゃないなら、もっと大うけして色恋沙汰が来ると思ったのにぃぃぃ!!」
「畜生、どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
泣き叫び、絶望の声を上げるミートン一家とタローンさん。己の欲望に流された結末が、このようなことになるとは哀れすぎる。しかし、その欲望の混じった声に女性陣‥‥‥マリーたちやロロが、彼らを冷たい目で見ているのは言わないでおこう。余計に悪化しかねない。
ちなみに、そんなに欲望が溢れるのであれば使用人の女性でも雇えば良いという人も出そうだが、彼らは散財しやすいようで雇うALもないらしい。タローンさんも同様らしいが、こちらはまだまともな散財というべきか、街中で子供のNPCがいたら全員にお菓子で餌付けできないか試すために、菓子系のアイテムを毎回大量購入するらしい。
「というか、戦隊ものどころか呪われた組織だよね」
【正義の味方ではなく、欲望の味方、どちらかと言えば悪の組織寄りデハ?】
ぐさぁっとここまで具現化した音が刺さったことは見たことが無いが、うっとうめき声をあげる一同。うすうす自覚していたようだが、どうしようもあるまい。
「でも、100以上の善行を積めば解呪できるなら、そっちをさっさとすればいいんじゃないかな?へんてこな戦隊ものをやっているぐらいだし、正義の活動ぐらいはしているんだよね?」
「‥‥‥」
「何で黙り込むんですか?」
【ブモゥ、ブモーン】
【あ、翻訳しマス】
っと、先ほどから彼らと一緒に一喜一憂をしていた、テイムモンスターのマッチョンが説明してくれるらしい。前から時間も経って進化し、「インテリジェンスオーク」となった彼は知性を手に入れたようで、絵を描きながら説明をしてくれた。
「‥‥‥あー、なるほど。善行と悪行が相殺されるのか」
何をもって善悪の判断がなされるのかはこの世界そのものの判断次第なのかもしれないが、第三者から見てもやらかしていることは悪行だろう。
まぁ、被害を出すたびにミートンさんの孫娘が謝罪のために動くようで、なおかつ一応彼らも善人といえば善人のようなのでそこまで問題になることはないらしいが、それでも脱げる条件が揃うまでは長い道のりになりそうだ。これ、自業自得としか言いようがないなぁ…‥‥
とにもかくにも、何で戦隊ものの格好をしているのだとか、そのあたりの謎は解けた。のじゃロリへのレッド突撃に関しては、タローンさん自身に何やらロリ感知レーダーなるものがあるようで、それが暴走した結果らしいという結論も出た。細かいツッコミはしきれないので省こう。
「それにしても、ハルさんはハルさんで儂らとは違った道を…‥‥より美しい女子たちを率いるようになって羨ましいのぅ」
「うう、何故こうも、我々には女運が無いのだ…‥‥」
「悲しくて、涙が…‥‥」
「あ、自分は幼女にしか興味が無いので、残念ながらその気持ちはないかな」
タローンさん、その発言は問題しかないような気がするが、ツッコミを入れて欲しかったのかな?
「だが、それもここに来ることでどうにかできるはずだと思い、集合場所に選んだのだ!!」
「そう言えば、何でここを集合場所にしたのか聞いていなかったけど‥‥‥何かあるんでしょうか?」
呆れた雰囲気を変えるべく、話題を出すとどうやらしっかりと理由が存在していたらしい。
「イベントでな、薬草がドロップしやすくなっているじゃろう?儂らは今回、この島限定で出るモンスターからドロップするという薬草を手に入れたくてな、数が多い相手はちょっときついから、話し合いをするついでにハルさんにも共闘してもらえないか誘いたかったのじゃ」
「案外まともな理由だった…‥‥それなら別に良いけれども、何を目当てにしているんだ?」
「うむ。この島でも数が多いと言わるモンスターでな…‥‥そやつがドロップする中でもレアドロップの薬草じゃよ」
ふむ、薬神奉納イベントにもしっかりと参加しているようで、真面目な目的なのだろう。それならば、僕らが手伝ってもいいのかもしれない。大勢相手というが、数相手に関しては広範囲攻撃を使いやすいし、問題もそうないはずである。
「なら良いかも。でも、取り分とかは?」
「そこはまだ話し合う必要があるが…‥‥頼む」
何にしても、まともな話し合いになるのであれば、良いだろう。変な話でもないようだし、のじゃロリに聞いた薬の件も良いのが作れそうだけど研究中の過程だし、そこに足しになるのならば受けて良い。
そう思い、僕らはミートン一家改め、欲望戦隊との協力を行うことを決めるのであった…‥‥
「‥‥‥まぁ、ハルさんがいれば、もしかすると可能性はあるからのぅ」
「ネット上で超低確率で遭遇出来ると言われるけど、可能性を引き上げるには必要そうだしね」
「だますような気がするけれども、ハルさんにも悪くはない‥‥‥話かな?」
「個人的にはもう少し幼い方が好みだが‥‥‥大きかろうと、その見た目がストライクゾーンならば問題ない」
【ブモウ…‥‥】
‥‥‥隠れて彼らが怪しげな笑みを浮かべたことには気が付かなかったが。
欲望が手を取り合ってもろくな結果にならなかったらしい。
善行を先に積んだほうが良さそうな気がするが、薬神への奉納も善行扱いになるかもしれない。
一応自業自得かもしれないが、多少は同情するので、手助けをするのであった‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥珍しい薬草が手に入るなら、それはそれで面白いしね。
でも何かこう、怪しい企みもやってないか?




