ver.2.1-26 〇人そろって、〇〇〇はお約束なのか?
謎の戦隊不審人物が吹っ飛んで30分後。僕らは気を取り直して全員で薬草の採取を行い、難なく目的の薬草を必要な分だけ確保することが出来ていた。
「ふむ、早いのぅ。ここで必要な薬草の種類としてはややレアに該当するので、もっとかかると思っていたのじゃが‥‥‥人海戦術なのもあるのか?」
「それもあるけど、『緑の手』のスキルもあるからね」
あまり目立たないが、こういう薬草採取に関してはこのスキルが役に立つ。レアな薬草の採取確率を向上させるし、採取作業自体が慣れたもので、多少の目利きぐらいは出来ていると自負しているのだ。
‥‥‥まぁ、人海戦術なのが大きかったというか、人外ばかりなのが功を奏したのもあるけれどね。面子的に素早く引っこ抜けたりしたからなぁ。
【シャゲェ!】
【ガウ!】
【ギャビィ!!】
ハウス内にいたロロもルトも出てきて全員で採取したが、とりあえずこれで必要な量が集まったのであれば、次は製薬過程に入りたいところ。
とは言え、アルケディア・オンラインは何度もあったアップデートを経て一つの薬品づくりにもこだわりを持ってほしいのか調合過程がいくつも必要になるものも存在しており、今回作る薬もその類に該当するらしい。最初のころの水と混ぜるだけのものが楽だったけれども、こういうリアルさも欲しくはあるので不都合ではないけれどね。
ひとまず鮮度が大事という事で、持参してきた調合用の道具を一旦並べた。薬神への奉納イベントなのも相まって製薬用のアイテムなどが作られており、より手軽になったのは良い事だ…‥‥
「さてと、磨り潰しに煮詰めに、練り合わせ、千切り、混ぜ合わせ…‥‥色々あるけれど、一つずつやっていくかな」
時間がかかるかもしれないが、失敗しないためにも丁寧に作業をしたほうが良い。一応余裕があるように予備の分まで採取したのだが、うまく余ってくれた方が後々利用しやすいからね。
そう思いながら、全員で手分けをして作業をしようとしたところで‥‥‥
【ガウ?ガウガーウ】
「あ、もしかしてまた?」
【ガウ】
ぴくぴくと耳を動かしながらリンが返答してくれたが、どうやら先ほどの不審者がまた接近しつつあるらしい。
最初こそ驚いたが、二度目の襲撃が分かっているのであれば、こちらも素早く対応できるものだ。
「全員戦闘態勢、いや、戦闘じゃなくて一撃でお帰り願う変態撃退編隊でやろうか」
「変態撃退編隊とは、また長い名称じゃな…‥‥しかも冷静にそのような指示が出せるとは、前にもやったことがあるんかのぅ?」
「まぁ、一度はね」
うん、公式PVなどのおかげで釈然としないとはいえ、僕らに襲い掛かるようなプレイヤーはほとんどいなくなった。
けれども、やはり人外の美しさや可愛さを持つ彼女達に対して欲望を抱く人はいるようで、PVがある前から襲撃をかけようとする者たちだっているようなのだ。これがプレイヤー相手ならばPvPを仕掛けてくれるので対応しやすいが、NPC相手などだと奇襲もあるので面倒なのである。
さっきあっさり撃退出来ていたが、あれは一応僕らの持っていた武器を使ったとはいえ、この世界のNPCでもあるのじゃロリだからこそ、ぶつけることが出来たんだよね‥‥‥またのじゃロリに任せて良いけれども、あのような変態襲撃終末期のような光景を再び見るのは避けたいところ。
そこで今回は、最初から全力でふっ飛ばせば良い話なので‥‥‥
「ほんの一瞬、それだけでいいのならこのスキルが使えるかな?『黒き女神ver.2』!!」
人前で使うことはあまりしたくはないが、今回に限っては瞬時にふっ飛ばす簡単な仕事なので、目撃する時間も与えずに問答無用で出来るはず。
なお、のじゃロリの前ではあるが、元々このスキルの原因になったような『女体化』のスキルを渡してきた相手なので見られても問題はない。言いふらす気ならお仕置きを使えるので口封じも容易い。
スキルの仕様と同時に、アバターの身体が一気に変化していく。
髪の色が普通の黒ではない、深淵を思わせるような深い黒へと変化して長さが伸びる。体格も失う感覚を味わいつつバランスが変わるのでよろけないように気を使う‥‥‥が、ver.2になったせいなのかほんのちょっとだけ浮きつつ転ぶことはないので、気を使う必要はない。某青猫ロボの仕掛けかな?
着ていた衣服も瞬時に真っ黒な衣服へと変化していく中で、ついでに使い魔見習いとしての影響かマリーとリンの衣服も変化し、彼女達の身体に浮かんでいた模様も輝き、ふさわしい姿へ変化した。
「…‥‥ついでに、身バレ防止のために全員の衣服も変えておくか」
「‥‥‥見ておいて言うのも何じゃが、それ、女神なのかのぅ?全員着替えたら、悪の美女頭領とその女幹部たちというような構成にしか見えぬのじゃが」
それを言われると、ぐぅの音も出ない。いや本当に、ますます悪の組織感がパワーアップしているというか、より真っ黒な集団に見えなくもない。せめてもの救いは、全員醜い容姿ではなく美しい容姿なので、邪悪ではなく妖艶な集団になったと言えることなのだが…‥‥んー、でも、救いにもなってないか。僕自身が大人の女性の容姿になるのは何とも言えない。前が重いし、喪失感凄いし、黒の女神としてなのか力が大きいのを実感するけれども、加減に気を使うし‥‥‥
何にしても、このスキルを使用したら女神化したというのか、プレイヤーとしての枠組みが少々ズレるようで、このアルケディア・オンラインの世界において神としての力を振るえるらしい。
神というと信仰心が必要そうなものなのだが、黒き女神はスキルの枠にも入るせいかそのあたりは必要なく、自身の周辺の空間に影響を与えることが可能になる。
そう、本来プレイヤー同士ならばそう容易に衝突はできないはずだが、この姿になると簡単にこちらから手が出せるようになるのだ。相手のプレイヤーからも手が出しやすくもなるようだが、力量差では圧倒的にこちらの方が上になる。
ついでに言えば、この容姿の変化とマリーたちの服装変化だけでも全員の印象などが一気に変わるので、より一層僕らであるとは分かりにくくなるだろう。面子だけ見るとバレそうな気もしなくはないのだが…‥‥
【メイド服も、変化しまシタ】
「‥‥‥ロロの場合、何で黒い翼と仮面、凶悪そうなパイルバンカーにモーニングスターまでセットになるの?近距離・中距離で相手にしたくない感じが増すんだけど」
【仕様デス】
それで良いのか、使用人。まぁ、ネット上だと雇い主のアバターに合わせた変化も可能になってきているそうで、出来れば自分が好むメイド服や執事服を着せるためだけにネタ装備に走る人もいるという話も聞くので、これはこれでおかしくはない…‥か?いや、でもそれだと服装だけのはずなんだよなぁ。
とにもかくにも、万全の態勢で即座にお帰り願うことが可能になった。
瞬間的にしか見られないだろうし、最初から手加減無しでお星さまになってもらえばこちらも終末変態不審者を見る必要が無くなるので一石二鳥。
絵面だけ見れば、悪の組織に囚われたのじゃロリという構図にも見えなくもないが‥‥‥気にしないでおこう。僕らは悪の組織でもないけれどね。
「さぁ!!かかってこい!!」
がさがさがぁっと森の奥の方から駆け抜ける音がしており、その気配自体は先ほどの不審者と同じもので、全員出てきた瞬間に一斉攻撃でふっ飛ばす用意は万端。
そして今、先ほどと同様に木々をふっ飛ばして出てきた瞬間に‥‥‥目にもとまらぬ速度で、集中砲火!!
ドッガァァァァァァン!!
「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」
【ブモワアアアアアアアアア!?】
「‥‥‥あれ?」
手ごたえはあったのだが、何やら声の重なり方がおかしいような。
そう思い、ふっ飛ばされていく相手の影を捕らえたが、どうも人数が増えていた。黒き女神になったせいか視力も向上しているようで、目視出来た姿は‥‥‥ああ、終末変態不審者戦隊の仲間か。全員同じような衣服を着ているからね。
でもなーんか、今聞き覚えのあるような声も混じっていたというか、最初の一名を除く面子は何処かで見たような‥‥‥
「あ、そっか。あれミートンさんたちに似ているんだ」
以前、アサシン島までの船旅で知り合った、ミートン一家。
下心丸だしな老人ミートンさんに御付のスッケンさん、カックウさん、そしてついでにテイムされたマッチョン…‥‥飛ばされゆく面子の体格や種族を見れば、一致する。でもマッチョン確かマッスルオークだったはずだけど、肉体的にすこし変わってないかな?
知り合いもまとめて吹っ飛ばしたような感じではあるが、あの様子を見る限り新しい面子を加えて野郎パーティとして一新した様子。
何にしても、何であんな変態終末戦隊と言えるような格好になっているのかは全く分からない。
…‥‥まぁ、ひとまず今は正体がバレないように元の姿に戻って、少し経ってから連絡を取ってみるかと思うのであった。
「そもそも何であんな格好をしてきているのか‥‥‥疑問すぎる」
「ぬぅ?知り合いかのぅ?」
「知り合いというか、何と言うか‥‥‥理由を聞いてみようかな」
というか、今まとめてふっ飛ばしちゃったけど、感覚的にヤッチャッタかもしれん。死亡扱いでどこかにリスポーンしているかもなぁ…‥‥加減、慣れないと不味いね。
乱用する気はないのだが、このスキルに関してはまだ謎がある。
というか、プレイヤーとしての扱いに変化があるのは、気になる処。
なんかこう、面倒な事でも押し付けられる予感がするような‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥お久しぶりの、ミートン一家。前は水〇黄門モドキだったけれども、なんか新しい姿になったのだろうか。




