ver.F-最終話 終わり~そして、その世界はどこかで続く
―――アルケディア・オンライン。
かつては、VRMMOとしてメーゼ・イワド社が生み出し、超新星爆発のような人気を世界中で巻き起こした、仮想現実を楽しむゲームであった。
しかし、その仮想現実の世界は次第に現実世界に浸透していき…気が付いた時には、新たな世界として現実世界につながっていた。
生体移動が可能になり、ありとあらゆる問題解決ができるなどの夢のような物が多く存在しており、最終アップデートを経てもなお、長い間サービスは続き、人々はその世界から様々なものを得ていただろう。
…だが、それでも世界のつながりというのは、永遠ではない。
たとえ、どれほど解決したとしても、人の欲望と言うのものは飽くなきものであり、いずれ破綻する運命にあった。
いや、むしろをそのことすらも理解していたのだろう。
人の欲望に蝕まれるのであれば、どうすればいいのか。
簡単な話として…そのつながりを断つのだ。
既にサービスは終了し、その代わりになるようなものも存在はしている。
それゆえに、いつの間にか世界同士のつながりが失われいたとしても、すぐには気が付かず…恩恵が消えていたとしても、気が付いた時にはもう遅い。
もちろん、起こりえる他の問題も想定して動かれており…結局のところ、世界同士を行き来できたサービスが開始されるよりも前の状態へ、元の世界は戻っただけである。
正解に言えば、その世界では過ごしにくかったものたちも同時に縁を断ち切って…様々なしがらみや偏見などからようやく解き放たれ、理想郷のような場所を手に入れていたのだ。
「…それでかつ、長い時を過ごして、ようやく死の間際になったと思ったら…今度はこれって…」
「ははは…まぁ、フロンお、ゴホン、お姉ちゃんがいる時点で、多少は予測できた事実だったからね。でもよかったじゃん。女神要素が無いからこそ、女体分の因子も持っていかれて、性転換するようなことは無くてさ」
「それはそうだけど、まさかこっちの姿になるとは思わなかったじゃん!!」
…とある森の中にある、一軒家。
その中で、ミントの笑い声に対してツッコミを入れるハルの姿があった。
その肉体は元居た世界での現実世界の肉体のはずで、アバターとしての肉体も切り替えられるようにもなっている。
しかし、その現実世界の肉体が、この世界で長く使用された結果…目覚めていなかった他の因子が今更ながらにして開花し、姿を変えたのだ。
「メイド服じゃないだけマシだけど、ところどころちょっとした機械の意匠があるし…まさか、生身の肉体がちょっとサイボーグっぽいことになるとは思わないよ!!」
少し手を振るだけで、一部変形して肉体が切り替わる。
状況に応じて、望むままに変じることができるようだが、これはもはや完全に人ではない。
「そもそも、女神の血筋は途中からだし…抜けてもその前からのものはあったんだよ」
かつて、ハルの長い長い系図の奥底にいた祖母が答えていた、女神の血についての話。
最初からではなく、途中から入ってきたものであり…女神が離れても、先祖の事実が抜け落ちていなかったのだ。
それがどのようなものであるかは、ここで言うことはない。
言えることは、このオンラインの…いや、オンラインだった新しいこの世界に移住したあとに発現したことが幸いだっただろうか。
「ああ、もう!!どうしてこうなるんだよーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「執事服も似合うから、別に良いとは思うんだけどなぁ…」
…その心からの叫びは、周囲へ響き渡っていく。
聞いていた自身の姿に、どこかで黒き女神も笑っていたりするのだろう。
まぁ、最近ではあまりの欲望の深さに人外の枠組みへ滑り込みをしてきた何者かが突撃してくるらしいので、安寧の時は奪われているらしいが…これはこれで、悲惨と言うべきだろうか。
アルケディア・オンライン。かつて存在したこの仮想現実の世界は仮想の枠組みが消え失せ、今日も新しい世界として…誰かの理想郷のようにあちこちが変わりつつ、オンラインサービスが無くなったとしても世界の一つとして続いていくのであった…
―――to be continued.
完成ではなく、新しい様々な世界の礎として、まだまだ続く日々も…あるらしい。
でも、ひとまず誰かの話としては―――ここで、THE END.
…いったん、ここで彼らの話は終わりを迎える。
けれども、その世界はまだまだ続き、これを糧にして他にも世界が広がっていくだろう。
そう思いつつ…ここで、話は一区切りっと…
…長い間のご愛読、ありがとうございました。
改めて後程、活動報告等で話すことを書け次第、完結にしたい…かな?




