ver.6.0-49 人に迷惑をかけてはいけないが
…そもそも、マッドサイエンティストとはどのようなものなのか。
狂気の天災(誤字にあらず)科学者と一言でまとめる人もいるだろう。
ただ、知り合いのガチものによれば…
「ぶっちゃけ、周りの迷惑とかそういうものを考えず、バリバリに自分の欲望に馬鹿正直な、ある意味いつでもハッピーライフを送っている感じかなぁ…とりあえず、着たのならこの薬飲むか?」
「遠慮します」
「まぁまぁ、そういわずに」
…そのあと父さんが突撃し、筋肉と薬の摩訶不思議な化学反応が起きた惨劇は忘れないだろう。
いや、全力で忘れたい。せめて、天才科学者というのであれば、記憶消去薬ぐらい作ってほしい。
そんな、幼き時の苦い思い出を思い出しつつ、ハルたちは今、ゴリランドロノメダ内を進んでいた。
目指すはザ・サンフラワーの討伐に役立つ惑星破壊ミサイル。
そのありかを探るために、色々と手掛かりを集めて…
「HAHAHAHAHA!!小生の前にこのモンスター共は敵ではなーい!!」
「いや、もっと正確に言えば小生たちの前では」
「「「くずにもひとしぃいいい!!いえぇぇぇい!!」」」
【オボゲェェェェェェェェ!?】
大量の毛玉に群がられて、断末魔を上げる岩石モンスターロックゴロンの群れ。
巨大な岩塊の脅威の防御力を誇る岩の塊たちは今、毛玉によって蹂躙されつつあった。
「…自己投薬系マッドサイエンティストな方向か。まだ、世界征服系とかよりはましな方…なのかな?」
「一応、NPCだけど特殊なクエスト用に作られているようで、その能力を活かしてなんだろうけれども…凄い光景だね」
軍隊系の攻撃に関しては、コユキの雪兵召喚で慣れている。
だがしかし、自分自身をこうも増殖させつつ、NPCだけどプレイヤーとは遜色のない火力を見せるドクターリリエルの大群には驚愕させられるだろう。
グランドドワーフと呼ばれる類で、普通のドワーフのイメージだと酒飲みの良い感じのおっさんてきなものなのだが、見た目がすでに剛毛の毛玉なのもあってイメージが少々バグりそうである。
「その大量の毛玉に襲われるのは、中々怖いな…」
「ふわふわならまだしも、剛毛だもんね…」
もふもふものならば、まだ救いはあった。
しかし、剛毛なのは結構厳しいか。
ざくざくと毛が刺さる音や、体当たりによる毛玉とは思えない轟音に、ときおりサイエンティスト要素なのか薬をぶっかけて熔解させたり生やしたりとさせてくる相手…絶対に、敵に回したら面倒な類になるのは目に見えている。
しかも、目的の惑星破壊ミサイル探しに協力してくれる気持ちはあるようだが、周囲の他のものにも目移りしまくっているようで…その一環で、犠牲になったのがあの哀れな岩のモンスターたちだろう。
こういうサイエンティスト系って体力のない感じがするけど、ドワーフゆえか相当あるようで、全力で物理で攻撃している様子が見える。
しかも自己増殖で数の暴力を活かしてくるのだから、たちが悪すぎる。
「ゴリラマンさんが何故こちらに任せたのかがちょっと理解できたかも…ああいう突発系の行動力溢れすぎる人は、制御が難しいか」
ゴリラマンさんも実力があるといえばあるが、根っこが教育者。
教育者としては生徒の暴走を止めなければいけないという思いもあるのだろうが、その反面実力行使のし辛さも、物理的に大きくあるのかもしれない。
だからこそ、こういう時に生徒と教師の関係とは違う方向の、第三者が来てくれた方が良かったのだろうな。
「GAHAHAHA!!いえーい、新薬の材料、ゲットだぁぁぁ!!」
そう考えている間に、どうやらモンスターたちの末路は決まっていたらしい。
手下を仕向ける系のマッドサイエンティストではなく、行動力が溢れすぎる系マッドサイエンティストの厄介さを、垣間見たような気分になるのであった…
「…でも、現実の知り合いの方よりはマシか。こっちのほうが、はるかに健全だな」
「その知り合い、縁を切るのを進めたいけど…どういう人だったの?」
「あの人はあの人でこう、色合いが人間じゃない狂人の類と言って良いような…人間…だったのかな、アレ?」
…人外の存在をここ最近よく認識するようになったが、もしや、まともな人のほうが少ないのでは?
嫌な世界の真理に近づいてしまったような…全力で、逃げるとしようか。
ミサイルめがけて進みゆく
その道にどれほどの犠牲が出るかはわからないが、
後で弔っておくぐらいは…
次回に続く!!
…そういう系のぶっ飛んだ悪役になりたい。
そう言ってた友人が、いたようないなかったような…悪の天才、それはそれでロマンかもしれない。




