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ver.2.0-5 どこかの誰かの胃が、悲鳴を上げているのかもしれない

「かなり大量に取れるけど、ここまで順調に来ると逆に怖いな‥‥‥」

【シャゲェ?】

【バルゥ?】

「いや、何と言うかこういう調子のいい時に限って、何かがありそうな気がしなくもないんだよね」


 アサシン島の各所の中でも、かなり珍しい薬草があるという場所で僕らは採取を行っていたが、思わずつぶやいてしまう。

 到着して20分ほどで、かなり大量の薬草を入手できたが、順調すぎる時ほど油断してはいけないとこれまでの経験が警鐘を鳴らしているのである。いや、何と言うか前例がそことそこと‥‥‥


【ガウゥ?】

【何故、私達を見ているのですカ?】

「‥‥‥あ、ゴメン。ロロはまだ違ったか」

【何がですカ?】


 うん、まだなはずである。多少メイドとしてはおかしい部分があるが、それでも使用人の類は雇えるので彼女みたいなのが他にもいておかしくはないだろう。だが、他の面子‥‥‥進化した姿が予想外だった面々は、例としてはあっているはずである。強くなったりするのを予想できるけど、流石にその後に起こる変化は予想外なことが多いからなぁ‥‥‥進化と薬草採取は全く関係ないように見えるけれども、何か良さそうなところで斜め上の何かが起きるのは同じに思えてしまうのだ。


 とにもかくにも、ある程度キリの良いところまでこれたのであれば、一旦ここでログアウトして引き上げたほうが良いだろう。調子に乗った者はイカロスしかりカラスしかり‥‥‥例えとして分かる人は多分そんなにいないのかもしれないが、やり過ぎてはいけないのが良く分かっている。

 だからこそ、今一番いいところを見極めて引けば、それで良いはずなのだ。



「良し、そろそろログアウトしようかな。ハウスシステムで一旦引き籠って‥‥‥」


‥‥‥後はもう、ただ単純にいつも通り終えればいいだけの話。これで明日もここから始めていけば、何も起こらずに済むだろうと思っていた。

 だがしかし、運命というのは残酷なのか、それとも意地の悪い神様でもいるのだろうか。



【シャゲェ?シャァ‥‥‥シャゲェッ!!】


 マリーが何かに気が付いたかのように、ふと周囲を見渡した‥‥次の瞬間、素早く跳躍して僕の身体に巻き付きながら全力で場を離れる。

 何事かと、その巻き付かれて引きずられる衝撃に驚いていると、先ほどまで僕がいた場所に何かが振り下ろされて、ビッタァァァンっと凄まじい音が鳴った。


「な、なんだ!?」


 全員素早くその場から距離を取り、戦闘態勢を取る間にもびたんびたんと何かが振り下ろされては音を鳴らす。

 そして、その全容が把握できたところで…‥‥ようやくその正体を僕らは確認できた。



【イイイイイイイイカァァァァァァァァァァァ!!】


 どこに口があるのかとツッコミを入れたいが、見た目から考えるとあの触手の奥の方に存在しているのだろう。というか、見た目そのままな鳴き声をしているのもいかがなものなのか。


「というか、巨大なイカ!?なんで陸地にいるんだよ!!」

【図鑑図鑑‥‥‥っと、これイカじゃないですネ。『ブラッククラーケン』というモンスターのようデス】


―――――

『ブラッククラーケン』

巨大なイカのモンスターとして有名どころなクラーケンだが、それを更に黒く染めた姿をした巨大なモンスター。平均して25~30メートルほどのサイズが確認されている。

ただ黒くなったという事ではなく、船で遭難した人々の怨念がクラーケンに憑りついて変貌を遂げた結果と言われており、本来は海中でしか活動できないはずなのだが、陸上でも自由自在に動けるようになった。

なお、人肉をクラーケンは好物としているが、ブラッククラーケンは人の怨念が憑りついているせいなのか生で捕食することは無く、ある程度焼いて食べるという微妙な習性を持っており、その調理に失敗して身を焦がしているとも言われている。

―――――


「グネグネニュルニュルした触手…‥‥そうか、こいつが目撃情報があったモンスターでもあるのか」


 納得したが、それはそれとしてなぜこれがこの島にいるのかという謎がある。

 クラーケン同様に凶悪狂暴らしく、陸上でも活動可能とは言え、どうしてこんな薬草が群生する場所で蠢いているのか。


 警戒しながらよく見れば、触手をむやみやたらにうごめかしているだけではないようで、僕らを狙う以外にも周囲の薬草を引っこ抜いては食べて‥‥‥



ごぼうべぇぇぇ!!

【イカァァァァァァァァ!!】

「食べて吐いている?薬草を食べて何がしたいんだ?」


 もぐもぐと咀嚼しては、ぶべぇっと吐き出しているようで、それを繰り返している。

 僕らの方も狙っているといえば狙っているようなのだが、それは元々の食欲故の行動のようであり、本命は薬草のようにも見えなくもない。


【生で食べても効果はあるはずですガ、吐くと意味はないのデス】

【バルゥ?】


 時々やってくる触手の攻撃をかわしつつ、ブラッククラーケンの行動に対して全員答えが出てこない。食欲で狙って来ても、薬草を食べて吐く行為に何の意味があるのかと疑問を持つのだが‥‥‥



「‥‥‥ひとまず、襲われるのも何だし、戦闘に集中できていない様子だから、一旦大人しくさせるか」


 理由は不明だが、ひとまず動きを止めてよく調べたほうが良さそうだ。相手の触手攻撃は厄介でもあるが、薬草を食べる手もあるせいなのか戦闘に集中しておらず、隙を見て抑え込めそうである。



 一本、また一本と触手を地面に食い込ませたり、毒で動けなくしたりと行動し‥‥‥そして全部の触手を抑え込み、ようやくゆっくりと観察をすることが出来る状態になった。


【イカァァァァ!!】

「さてと、イカそっくりな見た目なだけに、きちんと体の真下の方に嘴のような口があったが‥‥‥これ、もしかして中の方で何かあるのか?」

【ふむ、どうやら何かがひっかかっているようデス】


 まじまじと至近距離で確認したところ、イカの口の中に何かがひっかかっているのが見て取れた。どうやら薬草を食べて吐き出す行為をしているのは、このひっかかった何かがかなり不快であり、それを吐き出す行為をすることで一緒にずぼっと抜けないかと試していたようだ。


【ガウガーウ?】

「うねうね動いているが、何か大きなタコっぽいな?」


 内部で蠢く何かは、見た目的にタコの足が見えたので、おそらくは大きなタコでもこのイカは呑み込んで、見事に吸盤などが口内に吸着してしまったに違いない。

 そう思って、せっかくだから引き抜くことにした。こちらはこちらで見たことが無いタコだが、討伐したらタコ焼きなどをドロップするかもしれないからな。


「とは言え、どうやって引き抜こうか?」


 手を伸ばそうにも、奥の方でつかみにくい。潜り込むのもありだが、流石にまだ生きている巨大イカの口の中に入りたくはない。というか生臭い。


【吸盤の足なら、何かを投げ込んでくっ付かせて、それを引っ張れば抜けるのデハ?】

「それだ」


 丁度ロープなんかも持っているし、牽引力ならセレアが都合が良い。


 そう思い、ロロの提案した作戦にのることにしてイカの口内にロープを巻き付けた適当な鉱石を投げ込んで、あのタコ足に吸着させた。


きゅぽんっ


「お、うまくいったようだ。セレア、全力で引っこ抜け!!」

【バルルルゥ!!】


 ロープの先を体に括り付け、セレアがかけると吸着した物体と一緒にタコ足が引きずられてくる。巻き添えに合わないように距離をとりつつ見守ると、ずるずると引っ張られて‥‥‥


ずっぽぉぉぉぉぉぉん!!

 

 豪快な音と共に、タコ足の何かがイカの口から引っ張り出された。中の唾液とかでベチャベチャしている様子だったが、ロロが水鉄砲を出してすぐに洗浄する。

 そして、そのべたべたに汚れた粘液から出てきたのは…‥‥


【キュ、キュルルルゥ‥‥‥‥】

「デフォルメされた、マスコット的なタコが出てきたな。いや、ここまでタコすぎるタコの姿は珍しいかも」

【『プチオクトパス』デス】


―――――

『プチオクトパス』

小さな丸っこい、マスコットキャラクターになっていそうな見た目のタコのモンスター。

海中をゆったりノンビリと漂って暮らしており、性格は非常に穏やかで人懐っこいとされている。

だがしかし、その吸盤の吸着力は非常に強く、まだ幼い時だと制御が効かず何もかも引っ付けてしまうという問題がある。

慣れると自分の意思で吸着を自由自在になり、より行動範囲を広げて安住の地にくっ付いて暮らすという。

―――――


 どうやらまだ幼かったようで、吸盤の吸着は自身の意思でどうにもできなかったようで、喰われたひょうしにくっ付いてしまい、そのままずっと吸着していたようだ。

 そしてその感覚が不快で、ブラッククラーケンは薬草が実るこの島に訪れ、必死に剥がすために嘔吐しやすいように不味かったり苦い薬草を食べては吐くようにしていたのかもしれない。


 とりあえず、引きはがせたのは良いのだが、どうしたらいいのかこの状況…‥‥


「んー‥‥‥危険度だとブラッククラーケンの方が絶対に高いし、トドメを刺すか。プチオクトパスは放置でも大丈夫だよな?」

【シャゲェ】

【ガウゥ】

【バルゥ】

【それで良いかと】


 どこからどうツッコめばいいのか、そのツッコミも面倒くさくなったので今日のところはざっくりと終わらせ、ログアウトを行うことにしよう。

 プチオクトパスには危険性が余り無いようだし、放置しておけば気が付いてさっさと海に戻るだろう。


 そう思い、動けなくなっているブラッククラーケンを楽にしてやり、ドロップ品の『超高級イカ墨』を確認するのであった…‥‥


「このドロップ品、使えるのか?」

【イカ墨パスタが作れそうデス】

イカのドロップ品のイカ墨。

使い道に困るが、まぁ使えないことも無い。

しかしなぁ、タコを呑み込んで困るイカって…‥‥

次回に続く!!



‥‥‥なお、当初は銛を突き刺して引っこ抜く予定だったが、絵面がちょっとあかんかった

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