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ver.6.0-11 ニガ団子の暴風雨

『女神印の極・腐ニガ団子』

製作評価:15

効果:「腐食性ニガ団子」のレシピが改良され、黒き女神の力によってさらに増幅された結果、それはもはや団子と言って良いのかと思われるような代物に化けてしまった。

一口食えばそれだけで臓腑が腐り果て、二口喰えば肉体にも影響を及ぼし、生きたまま膨大なデバフの腐海へ沈むことになる。

なお、直に触っても影響はなく、あくまでも「食べる」行為を行わせなければ効力を発揮しないようにされているため、飾る程度ならば問題無し。

また、腐食に耐性があるならば効果が失われ、ただのニガ団子として食することが出来る。

―――――


「…やっばいもの、出来ちゃったかも」

「どこかのどんな生物も言いなりにできる恐るべき団子と比べると、これまた別の意味でやばいのが出来たね…」


 グレイ号艦内、特別製増室。

 その中にて、ハルは黒き女神の姿で団子を作成していた。


 突如として現れた宝石獣たちに対抗する手段として、腐食性のある代物が有効かもしれない可能性をもとに作成し、より効果を上げるために女神の力を練りこんだわけだが…やり過ぎてしまったのかもしれない。


 流石に直に手で触った傍から腐ることはなく、食べなければ効力を発揮しないのである程度の安全性は確保できているのだが、説明文だけでもゲテモノを超えた危険物になっているのがうかがえるだろう。


【あとはこれを、艦内の製造工場で量産するだけですネ。緊急事態なので量産性を重視するため、多少効果が下がりますが…下げないと、これはこれでやばそうデス】

「もはや団子言って良いのだろうか、コレ」


 凄い今更な感じがするが、よくよく考えれば一番最初に武器として使っちゃったのは自分でもあるので、何とも言えない。

 ニガ団子がこのような代物に化けるとは、最初の頃の自分に話しても信じることは無いだろう。




 とにもかくにも、そんなことを考えている今この瞬間にも、あのモフモフの楽園には宝石獣たちが襲撃しており、必死になって防衛している人が多い。

 彼らの手助けのためにも、モフの平和を取り戻すためにも暇はないのだ。


「それじゃロロ、緊急量産体制へ!!出来上がり次第、グレイ号の各砲塔へ装填し、宝石獣たちの口へ照準を合わせ、砲撃をしてくれ!!」

【了解デス!!】


 すぐさま団子が運び出され、増産態勢が整えられる。

 グレイ号の艦内の生産工場は本来、特殊砲弾などを生産する設備だが、この時ばかりは団子の生産へと切り替え、字面だけでいえば平和なように見えるだろう。


 だがしかし、その作られる団子が平和とは程遠く…食べ物で遊ぶ気もないし、出来れば兵器転用は避けたいと思わなくもないが、この時ばかりはどうしようもない。




 ガコンドゴンと音を上げ、続々とデータがセットされて作成され始めた団子が姿を現し、運ばれていく。


【砲撃開始!!】


 撃ちだされるのは、エネルギー弾や砲弾ではなく、ニガ団子。

  

 次々に増産された傍から打ち上げられ、綺麗な放物線を描き宝石獣たちの口内へ直撃していく。



ドォォォォォン!!

ジュワァァァァァァ!!

『『『ジョゲェェェェェェェァァァアアアアアアアアア!?』』』


「おお!?なんかすごい効いているぞ!!」

「どろどろに溶け始め…しかも、これすごいデバフが付いているのか、さっきまで攻撃がほとんど通用しなかったのに、だいぶ通じるようになった!!」

「やれやれ!!この隙にモフの極楽浄土を守りきれぇぇぇ!!」


 宝石獣たちの弱体化にプレイヤーたちが士気を上げ、攻めに転じる。

 先ほどまでは一方的に攻められていたが、立場が団子で入れ替わる…字面にすると意味不明なようだが、事実だから仕方が無い。



「よし、グレイ号はこのまま団子を撃ち続けろ!!僕らも攻めに出るぞ!!」


 船に砲撃を任せ、こちらもすぐに外に出て宝石獣たちへ襲撃をかける。


 一度砕ければ脆くなるものは多く、宝石獣たちも例外ではなかったようで、鉄壁の守りも団子で砕けけて塵と化し、撃破されていく。



 攻撃に転じたプレイヤーたちのモフモフへの執念がすさまじかったのもあり、宝石獣たちになすすべはないだろう。


 断末魔を上げる片っ端から、その口元へ団子が降り注ぐ。


 このまま全滅させられれば良かったが…ふと、有ることに気が付いた。


「…ん?何か妙だな」

「どうしたの、ハル?この状況、団子で好転してかなり攻められているけど、何かあったの?」

「こいつら、次々撃破できているが…声がおかしい時点で疑問に思っていたけど、モンスターじゃないのかもしれない」

「どういうこと?」

「ドロップアイテムが一つも落ちていない」


 

 アルケディア・オンラインのモンスターであれば、通常撃破した際に何かしらのドロップアイテムが生じているモノである。

 それはレイドボスだろうと何だろうと例外ではなく、運営が設定した敵であれば大抵入手できるのだ。


 レアドロップ等の入手率が低いものも存在するとはいえ…これだけの数の宝石獣を撃破し続けているが、これっぽっちも何も手に入ってこないのである。

 いや、ドロップアイテムどころか、経験値などもなく…本当に、何もない。



「空虚な存在を倒しているだけのような…やっぱり、何かしらの異質な存在なのか?」


 そこにいる。存在はしっかりとある。

 それなのに、何もない。


 現実世界の動植物でもあるまいし、倒しても何も出てこない、何も得られない状況に対して、ハルは違和感を覚える。


 言いようのない異物というべきか、それとももっと違う何かのような…とりあえず、そんなことを考えている暇があれば、モフたちの安全のためにもさっさと撃破したほうが得策化と気持ちを切り替えた、その時だった。



『ジョロゴゲェェェェェェェ!!』

【グマァァァァァァァァ!?】


「ん!?なんだ、今の普通のモンスターっぽい鳴き声が混ざっていたような」

「あ、アレを見て!!」


 ひときわ大きな咆哮が響き渡り、その声のした方向へ目を向ける。


 そこにいたのは、口元には団子が大量に詰められつつも、何か大きな熊のようなモンスターと争っている様子の宝石獣の姿があった。



「あの熊は…ブラッドグリズリーか。この惑星でたまに出現するというモンスターだな」


 カフェにいるモンスターたちと違って、野生の熊のモンスターである。

 偶然にもこの辺りで発生し、その気性の粗さから宝石獣にも果敢に激突し、団子で弱っている宝石獣を狩ろうとしたのだろう。


 だが、何か様子がおかしい。

 熊が思いっきり宝石獣に食らいついているように見えるが…


ジュブグワ・・・ドロロロボゥ!

【グマァァァァ!?】


「「えっ!?」」


 腐食しどろどろになり始めた宝石獣が素早く動き、熊の頭を覆い尽くす。

 突然の出来事にあっけにとられていると、どろどろになったその肉体が染み込み、熊の体が大きくなり始める。


 体毛が輝きはじめ、まるで宝石獣のように転じていく。

 熊の顔が崩れ去り、巨大な眼球の様なものが成り代わり、一つ目の巨大な化け物へと成り果てる。



【グマァァ・・・・ジョグマボォァァァァア!!』


 声が切り替わり、モンスターから異形の化け物として咆哮を上げる。




「HPバーが出現した!?レイドボスに、なったのか!?」

「何だありゃ、合体したのか!?」

「ボスネームは…『宝石寄生獣 ジュエライツベアー』!?そんなの、聞いたこともないぞ!!」


 名が体を表すというか、今起きたことがそのまま名付けられたというべきなのか。

 たった今、この瞬間宝石獣が寄生したようで、熊がレイドボスへと切りかわる。


 それと同時に、周囲で倒されつつあったはずの宝石獣たちがすぐにプレイヤーたちから離れたかと思えば、ジュエライツベアーに飛び込み、身を溶かし、巨大化させていく。


 あれだけ多くの数があった宝石獣たちが一つになり…恐るべき化け物になるのであった…



【ジョボグマァァァアァァァァァアァァァァァ!!】

















…寄生されたされた哀れな化け物が爆誕したその頃。

 ある研究施設に輸送されて、オンラインの世界に送り返す前に調べられていた宝石に、ある変化が起きていた。


 誰も触っていないはずなのに、急にぶるぶると震え…異常に気が付いた職員たちが動くよりも先に、現実世界から姿を消した。


 まるで最初からそこに無かったかのように、幻だったとでもいうように。




 その宝石はどこかへ、向かったのである…





混ざり合ったその時に、異物はその世界の理を得る

無かったはずのものが入り込み、そこでの姿を獲得する

異形は溶け合うことで、その情報を…

次回に続く!!



…厄介事の香りしかないなぁ

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