ver.5.2-135 フェアリーカナシー
まさかまさかの、現実世界の妖精化。
何度か黒き女神の姿になるという非現実的なことをやってきた身とはいえ、流石にこうなることは読めなかった。
いやまぁ、相手が引退したとはいえ元が付くだけの妖精女王ならば、妖精に関してのプロフェッショナルなのは間違いなくて、やることが可能なのかもしれないが…それでも、この現実を受け入れにくい。
「あらあら、無性とはいえ結構可愛らしいわね。いえ、無性だからこそ、もしかすると飾り付け次第ではどっちにでも捉えやすいような容姿になっているのかしら」
「飾り付けとかしなくていいから!!・・・って、あれ?あっちと違って、現実だと普通の話し方ができる?」
ちょっとわかりにくいが、オンライン上では少々話す感覚が異なっていた。
確かに口は開き喉から発することが出来たはずだが、なんというか言っている感覚が通常とは異なっている。
女神の時も少し違えども普通とは違う感覚だったはずだが…どういうわけか、この現実ではまともに話せている感じがするのだ。
「100%、あの世界と同じってわけじゃないからね。でも、その姿のほうが、ここでは都合が良いと思うわよ」
「妖精の姿は逆に、色々と都合が悪い気がするんだけど…」
「そうでもないわよ、その姿の通り妖精としての力が使えるけど…女神としての姿を使っての行動よりは負担が少ないわ」
「…負担?」
「噂程度には聞いていたけれども…あなた、女神の姿を使って色々とやらかしているって言うわよね」
滅茶苦茶否定したいが、否定できない悲しい事実。
どうしようもないことなので仕方がないと思うが、やらかしてきた実績はある。
「女神の力は確かに強大みたいだけど…その分不自由さも多いはずよ。加減とか、そのあたりがね」
「確かに、それはそうだと思う。制御していても、うっかりしたらやばそうだしな…」
「その強大な力が、世界そのものにも実は負担をかけているのよねぇ」
「え」
話を聞くと、どうやら本来、神の力を持つ者が直接現実世界に顕現するようなことは避けたほうが良いとのこと。
大きな力というのはそれだけ周囲への影響も与えやすく、目には見えないけれども空間…いや、世界そのものにも負荷をかけていたりするらしい。
普通は神の力を扱うような奴が世界に出てくることはないが、ここ最近黒き女神の力を使っていたことで、影響が出てきたようなのだ。
「世界が負荷に耐え切れずに、崩壊するってことはないわ。そのあたりの詳しい仕組みに関しては、専門外だから特に言えないけれども…でも、大きな力というのは、それだけ影響があるのよ。場合によっては世界の外の方にもその世界の中身が見えて、引き寄せたりするようなこともあるらしいのよね」
なんだろう、物凄く心当たりがあるような。
知らない間に、何かとんでもないことをしでかしてきているような気がしてきたぞ。
「でも、その妖精の姿なら問題ないわ。こっちはこっちで、見たことが無いような力を持っているようだけれども…流石に、女神ほどではないわ。もしも、人外の力を扱いたいなら、そっちを基本にして、どうしようもない時だけ女神になったほうが良いわね」
「女神は切り札にして、やるときは妖精の方か…いやいや、そんなに力を使うことないって」
「わからないわよ?大きな力というのは、何かと引き寄せるらしいから…案外、あなたが女神の力を持っているからこそ、色々とひかれてくるのかもね」
嫌な可能性だが、当たっているのかもしれない。
それならば、妖精になるよりも女神の力を無くす手段を得たほうが良いのではないかと思うのだが、あまりおすすめしないようだ。
「あるといえばあるけど…ガチで死ぬわよ」
「命のほうが無くなるの!?」
どういう方法なのか聞くのが怖くなったので、やめておこう。
もしもそれで失敗して女神の力があったままなら、その場で早く女神としての人生、もとい神生が始まってしまう。
色々とお騒がせなこともありつつも、いつの間にか時間が経っていたようで、そのまま元妖精女王は後は観光のためと言って去ったのであった…
「…荒らすだけ荒らしたよ、あの元妖精女王」
「というかハル、そろそろ妖精の姿から戻ったらどう?」
「それもそうだな。えっと、どうやって戻るかは…あれ?」
…そういえばこの姿、どうやって戻ればいいの。
戻し方を先に教えてほしかった
後悔しても意味が無いので、探るしかない
そう、絶対に方法がないわけでもなく…
次回に続く!!
…嵐を呼ぶ元妖精女王




