ver.1.1.1-45話 誰も彼もが、尽くすのである
>‥‥‥もう間もなく、オララゴンが復活します。全プレイヤーとの今イベント最大規模のレイドバトルとなりますので、準備をそろそろ始めてください。
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「‥‥‥ついに、最終戦前夜ってところか」
イベントもいよいよ最終日が近づく中、運営から送られてきたお知らせに目を通すとオララゴンの復活が予告されていた。
あちこちで見かけるプレイヤーたちも最終戦が近づいたことで準備をし始めているようで、武器の新調やMP回復ポーションの購入、連携攻撃の練習や手近なプレイヤーとPvPをして高め合うなど余念はない。
僕のようにのんびり進めるようなものとはちがって、本格的なガチ勢と呼ばれるような人たちだとさらに入念にやっているらしく、ダンジョンの攻略やボスモンスターとの連戦情報が上がってくるほどである。
【オララゴン戦へ備えて、プレイヤーたちの動きが活発化しておりマス。その動きの中で今後の参考にできそうな動きをしているという事で、四人ほど注目すべき方々をリサーチしてみましたが、ご覧になられるでしょうカ?】
「注目すべきプレイヤーの情報?ソレはソレで面白そうかも」
最近運営から送られてきたメイドのロロがそう告げてきたので、僕は情報を聞いてみることにした。自分でのんびり楽しむのもいいけれども、他人の情報なども中々楽しめるからね。ゲームの実況プレイを動画で見るような感覚でもある。
【ハイ。それでは、プレイヤー情報を紹介しましょウ。一人目は、ご主人様ともフレンド登録されていらっしゃる中三病さんの姉のティラリアさんデス】
「最初に知り合いが出てくるのか」
【ハイ。とは言え、彼女の動きに関しては他の方々の関心の的にもなっているのデス】
聞けば、バーサーカー・ファイターの上級職になった彼女は、オララゴンへ備えて数での暴力を指針修行中だという話だ。
【他にもバーサーカーと付く上級職の方々とも知り合いになり、今まで入っていたギルドから脱退し、新たにバーサーカーギルドを立ち上げ、ギルド長として動いているようデス】
「あれ?でもギルドだと似たようなものに、戦闘狂ギルドって言うのが存在していたと思うけど?」
【あちらは純粋に戦闘を追い求める指針で、暴れまくるだけではないので衝突はしないそうデス。ですが、似たような名称ということもあって議論を交えつつも互いの戦闘力を認め合い、オララゴン戦ではギルド間で協定を結び、支援をしあう事を確約したそうデス。その為、時間帯によってはそのギルドメンバー同士が大集結し、凄まじい獣の争いのような光景が見られる可能性も出てきまシタ】
片や戦闘狂、片や理性が吹っ飛び君のバーサーカー‥‥‥いや、一部は保っているそうだが、それでも激戦が予想でき、凄まじい音を立ててオララゴンに挑む光景が目に浮かぶようである。いっそ、ティラリアさんの地獄の抱擁でオララゴンが抱き潰されて欲しい。
【シャゲェ、シャゲシャゲ】
「あ、それはシャレにならないんじゃないかって?‥‥‥まぁ、確かに」
考えていることを読んだのかマリーが呆れたように口を出してきたが、言われてみればその通りである。そもそもレイドボスがたった一人に抱き潰されるほどやわではないだろう…‥‥でも潰されそうな光景が見えるのも、あの樽潰しのインパクトがあり過ぎるせいか。
【続けて二人目としては、ゴリラマンと名乗る方デス】
「これまた知り合いというか、最初にお世話になった人だ。その人はどんな動きを?」
【テイムモンスターの制限で3体⇒5体になった事で、よりバランスを求めた結果、誰がゴリラマンか分からない混沌が産まれたと聞きマス。進撃のゴリラ帝国、もはやすべてがゴリラになる、リアルゴリラ豪雨などと呼ばれておりますが、名前だけではなく面子も強い事を確認しておりマス】
アルケディア・オンラインで初心者プレイヤーたちに優しく遊び方などを教えてくれた人だが、現在はオララゴン戦へ備え、新しくプレイをし始める人たちへの教室を一旦休止しており、準備を徹底的にしているらしい。
そしてテイムしているモンスターたちもゴリラ一色となっているそうだが、パワーファイターな集団という訳でもなく、魔法や奇襲などもお手の物にしているそうである。
【『賢者ゴリラ』、『モヒカンファイター』、『アイアンゴリィラァ』、『ファイターキングコング』、『ボイスゴリラ』が面子にいることが判明しており、ゴリラマンさんの容姿も相まって誰が誰なのか分かりにくくなっているのも、戦術と言われておりマス】
「個人的には最初と最後が気になるような‥‥‥‥」
まぁ、ゴリラって某ドンキーでパワフルファイターなイメージもあるが、森の賢者とか言われていたり知性的な生き物らしいからな。いろいろいておかしくはないだろう。
【次に三人目としては、『クラウンズ』と呼ばれるプレイヤーです。王冠の意味合いとかではなく、道化師の方の意味を持っているプレイヤー名のようデス】
「あ、知り合いじゃないけどネットで聞く名前だ」
【奇妙奇天烈、摩訶不思議、現実の世界でも有名なマジシャンではないかと言われるらしいですが、手品を使った攻撃が特徴的らしく、自由度が高いこのゲーム内でも奇抜な戦法を持つようデス。ご主人様の爆裂薬での戦法を聞き、取り入れて花火で戦うようにするなど、他の人の動きも真似をしつつ、独特な戦法に変えて動くので予想が付きにくいそうデス】
ソレはソレで、戦う姿を見てみたいような気がする。聞いた話だとピエロのような格好をしているそうだが、その動き方は魅せているように見えるようで、楽しくさせたり驚かさせたりと中々興味深い。
【そして四人目としては、‥‥‥残念ながら、プレイヤー名は不明デス。どうやらNPCのようですが、それでも謎が多く、巷では『謎の暗黒舞姫』と呼ばれるそうデス】
「なんか物騒なんだけど、それはそれでどういうのなの?」
【混沌とした赤い夜のイベント中に、華麗に踊ってその場にいる人たちへバフを付けた後、自身も踊りながら攻撃を行い、終了後にはいつの間にか消え失せるという神出鬼没ぶりを見せているそうデス。彼女と呼ばれているので女性なのでしょうが、その方が通った後は禍々しい瘴気が漂う惨状が広がっており、一説では次回アップデートで追加される何かではないかとも言われているようですネ】
その他にもいろいろいるらしいが、注目すべきプレイヤーが中々多いようだ。鞭で戦う人や、全部の防具を外して裸一貫で挑む人に、ボッチだけどすさまじい狩人としての才能を輝かせて大物を狩りまくる人等、プレイヤーが多い分すべての人々の個性も豊かであり、最終戦の全員で挑むレイドバトルでその姿を見るのが非常に楽しみになる。
あちこちで名を響かせるような者たちがどの様に活躍するのか、これも今回のイベントで盛り上がる点として注目されるだろう。
【それと、ご主人様も注目されるプレイヤーとして名が挙がっているようデス。これはこれで、中々良い事のはずデス】
「あ、そうなの?どんな感じに名が挙がっているのかな?」
【集められた情報ですと、『リア充パーティ』、『モン娘一家』、『悪の組織』、『爆破すべきハーレム』と言われているそうですネ】
「それ前半はまだマシだけど、後半が明らかにダメな奴だよね!?」
【シャゲ?シャゲシャゲ】
【ガウ?】
【バルルルゥ?】
分かっていないのかマリーとリンとセレアが首をかしげるが、ロクデモナイ言葉の意味に関してはさらされないように理解できないプログラムでもされているのか。
いや、そんな事よりも3つ目のその言い方は明らかに誰が広めたのか心当たりが物凄くあり過ぎる。
「そう言う悪名モドキみたいなのが広まるのは嫌だな…‥‥レイドバトルに少しでも積極的に参加して、払拭できるように努力するか。ロロ、オララゴンへ備えてバフ付きの料理の量産を頼む」
【了解デス。戦闘中でも食べやすいようにクッキーや飴玉など、お手軽なお菓子にしておきマス】
とにもかくにも、あちこちで注目されるプレイヤーが増える中、オララゴンとの戦いはもう間もなくである。
果たして、赤い夜のようにアンデッドたちを大量に出現させるオララゴンとやらはどのようなモンスターなのか、その全容を明らかにしてやろう。
【あ、それと関係ないのですが、NPCたちの中には、オララゴン戦へプレイヤーと協力して参戦される方々がいるようデス。プレイヤーとは異なり、逝ったら終わりますので注意してくだサイ】
「さらっと命がけで動く人が出る情報も出さないでほしかったなぁ‥‥‥」
‥‥‥ちょっと逃げるタイミングも探る必要があるかもと思ったのに、それを思いっきりくじかれた。いや待てよ?こういう情報が出ると、どう考えてもロクデモナイ行動をする奴がいるのを経験しているんだが。
何か思いっ切りやらかされる前にお仕置きしておくべきか…‥‥僕らはしばし、悩むのであった。
「ぽぴぇっくしょい!!ううぅ、なんじゃ今鼻がムズッとしたのじゃ」
「姉さんのことを誰かが噂をしているのでは?」
「むぅ、それだけわらわが有名になったということかのぅ?」
なお、何処かの姉妹でそのような会話がなされたが、一部では噂の制限がされていることを彼女達は知らない。
悪意ではなく純粋な善意で隠されているのだが…‥‥隠されたものほど暴きたくなる人が出て、結果として知ってしまう人が出た後は…‥‥今は語るべき時ではないだろう。
真剣な人も遊び半分な人ものんびりする人も、等しく挑むオララゴン。
その巨大な敵に対して、皆どう動くのか。
今、プレイヤーたちが一つになって挑む戦いが開かれようとしていた‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥人数的にはまだまだ増えそう。




