ver.5.1-99 やってくるもの拒みたい
…威力だけならば、無茶苦茶すぎるグレイ号の兵装。
そして今、その武力をもって敵艦隊はほとんど消し飛んだ。
「これで終われば、あとは正体不明の何かのほうに集中すれば良いけど…」
あれだけの攻撃、無事で済んだ敵はいない。
かろうじて攻撃の余波で吹っ飛ばされたりして生き延びたものが数隻ほどいるようだが、反撃をすることがかなわないほどの大損害を受けているのが目に見える。
このまま逃げ帰ってくれればよかったが…世の中、そううまくは行くことはない。
そもそも、あれだけの敵艦隊が用意されていたのには驚いたが、艦隊を用意するだけのものがいたということを示す。
どれだけの数の船を轟沈させたとしても、その元が潰れていないのであれば…
ブブブブブブブブゥン!!
「…まぁ、そううまくはいかないね」
【存在証明滅亡砲による空間のゆがみもありますが…どうやら、第二陣が無理やりやってきたようですネ】
虫の羽音のようなものを鳴り響かせ、滅亡砲によってゆがめられた空間からぬるりと現れ始めたのは、新たな敵艦隊。
見た目こそは先ほどの艦隊に近いが、再び改良が施されたのか今度は機動力重視のようなものになっている様子だ。
―――
>敵、先遣艦隊の99%壊滅を確認!!
>しかしながら、第二陣、第三陣が派遣されつつある模様!!
>各プレイヤー、気を抜かないようにしてください!!
―――
ログにも表示されたが、事は容易く終わってくれなかったようだ。
それに、こうしている間にもアレはやってくる。
ピコーン!!ピコーン!!
『センサーに反応有。正体不明の何者かが、再度浮上しつつありマス!!』
「こんな時に、もう戻ってきたのか!!」
空間歪曲砲で吹っ飛ばしたのに、時間が経過して再び戻ってきた正体不明のもの。
けれども、正体がわからずとも確実に何かしらのヤバいものだということは理解しており、どうにかしなければ面倒ごとに巻き込まれるのが目に見えている。
だからといって、目の前の艦隊を放棄することもできないが、考え込んでいる間にも他のプレイヤーたちが敵艦隊へ攻撃を再開し始めたようだ。
「とりあえず、艦隊のほうは他のプレイヤーがどうにかできるが…問題は、こっちの正体不明な方かな」
超強力な兵器を用いずとも、今の段階ならば他のプレイヤーたちでも敵艦隊を相手にできるだろう。
ならば、いっそそちらは他の人に任せ、僕らは正体不明な方を来ないように立ち回ればいい話なのかもしれない。
「ロロ、空間歪曲砲をまだ撃てるか?」
【チャージする時間が必要ですが、連射は可能デス。ただ、10連射もすれば熱が溜まって砲身が溶ける危険があり、しばらく使用不可能になりマス】
「冷却する間に、代わりに使えるのは?」
【空間断裂衝撃砲、時空乱流発生装置、異空圧縮砲、対消滅砲などですね…周囲への影響を考えるならば、これらの兵装が使用可能かと思われマス】
様々な妨害手段を取れる兵器は多々あるようなので、正体不明の何者かを来れないように妨害し続けることは可能らしい。
それでも、かなり物騒な名称をしているものばかりなのに、邪魔にしかならない程度にされるとは、それはそれで相手がどれほどやばいのかも理解させられるだろう。
「本当に何だろうか、この正体不明の者…いっそでてきてもらって、直接見たほうが分かるかもしれないけど…何故か女神のほうの勘で、出したら不味い警鐘がなるからなぁ…」
黒き女神の姿になってないが、何故か女神の警鐘が鳴り響く。
それだけ相手がヤバい存在なのだろうが、あの無茶苦茶な女神でもそんなことを言うぐらいなのだから、この空間に出現されたら最悪な事態になりかねない。
…いやまぁ、自分で自分を無茶苦茶な女神だというのは複雑な気分だが、そんな女神だからということでしょうがないと、最近どこかで悟りを開いている気がしなくもない。
うん、自分の女神の力でもやばいと思うのならば、相当不味い相手だと思って気持ちを切り替えたほうが、精神的に楽だろう。
「ならば、やっぱり徹底的に妨害しまくって、相手に諦めさせる方が先決か…あー、こういう時に限って、あの欲望戦隊がいたほうが良いと思う時が来るとはなぁ」
【それを言ったらフラグが立って、どこからともなく飛んできそうですよネ】
「やっぱりなしで」
思いっきり不吉なことを言われたので、慌てて訂正する。
確かにあの欲望戦隊、出てきた時点で相手を呆れさせて逃げさせたくもなる変態性の持ち主たちだだが、ただでさえ艦隊同士の戦闘で混戦しているところに、さらなる混乱の元をぶちまけることになるから呼ばないほうが吉だろう。
そうなると、やはり自力でどうにかしなければならないことになる。
「なら、作戦はこれで良いか。今は後方のほうで、他プレイヤーたちの後方支援砲撃をしつつ、正体不明物体が近づいてきたら、空間歪曲砲などをぶちかまして徹底的に障害物になってこれないようにして諦めさせるか」
『個人的には大暴れしたくもありますが…マスターの命令であれば従いましょウ』
グレイ号の火力を信じないわけではないが、世の中武力だけでは渡り歩けない。
なのでここは、ゆっくりでも着実に進められるように、安全策を取ることにしたのであった…
「…あ、でも他の物騒な兵装を使う時、周囲巻き込まれないかな?」
【それなら大丈夫デス。特殊兵装ブロック03『防壁喰絶鏡』を併用すれば、問題なく正体不明の敵にだけ集中して攻撃可能デス】
「何、それ?」
【光を当てた無機物の一部だけを狙った場所へ転送する装置でして、敵艦が頑丈な防壁を持っていたとしても、えぐり取るようにしてその部位を失わせることができるものデス。転送装置としての流用が可能なので、他の方々へ迷惑をかけないようにすることは可能でしょウ】
…表現が少し物騒だけど、ようは単純な転送装置の一種というべきか。
うーん、存在滅亡砲よりもさらに穏やかな方じゃないかな、ソレ。
【まぁ、無機物限定でしか効果ないわけではないのですが…仮に有機物交じりの物体が相手だと、ちょっとばかりこう、グシャてなりますけどネ】
潰れるの?そう思ったが、違うようでもっとえげつないことになるらしい。
既に実験済み…というか、ロロが作ったものではなく、機械神からおまけで付けてもらった装置であり、実験映像もあるそうだ。
しかも、元は兵器ではなく、どこでも〇ア的な運用を考えていたものだったらしい。
移動が面倒なプレイヤーのために、ちょっとしたワープゲート代わりで売れるかと思って作成し、実験をした結果…悲惨なことになり、兵器転用になったらしい。
何があったのか、聞くのが怖いな…
失敗しても、別物として利用できる
こうやって文明は発展したのかと言いたいが、
その実験映像だけは見せないでほしいかも…
次回に続く!!
…ホラー話にあるような、そんなものらしい




