ver.5.1-88 黒煙の空
…大幅パワーアップを果たしたグレイ号。
それでも、襲撃をかけてきた相手がどこの誰なのか不安は残るだろう。
「学習して、やばいぐらい強化されるタイプだったら不味いかな」
【そこは大丈夫デス、こちらも戦闘データを元に、常に最適化できるようにしていますからネ】
「それはそれで、敵に負けず劣らずのやばさを持ってないかな?」
ミーちゃんのツッコミはさておき、戦闘は終了し、少しの間の平穏が戻ってきた。
しかしながら、またいつあの艦隊の様な襲撃があるかわからないだろう。
そもそもの話、条件を満たさないと入れないこの妖精郷に対して無理やり入ろうとしてきたり、あの筒状船と同じようなところから来たらしい相手が何者なのだろうか。
そのあたりの調査は僕らでは手に負えないので、ひとまず運営に報告を出しておく。
グレイ号のやばすぎるデータも一緒に出していいのかと思うところもあったが、それはそれで問題ないらしい。
【世の中には、私以上に凄い改造を施すプレイヤーもいるようですからネ。まぁ、一介のメイドができる改造に対して、専門職レベル…いや、それ以上に極めている方々からすれば、児戯レベルかもしれないデス】
「これで児戯だったら、世の中のほうがおかしいって」
どこに一隻の船で無数の艦隊を殲滅できる戦艦を作ることが、児戯レベルとされる世界があるのだろうか。
そんなものあったら、むしろ見てみたいだろう。
いや、見ないほうが良いか…存在しないほうが良いのか。技術レベルが極まり過ぎて、ディストピアのようなことになっている気がする。
運営へ記録映像を提出し、あとは任せるだけになる。
場合によっては呼び出されて、何かあるかもしれないが…まだわからない。
「念のために、ネットの掲示板で何か情報が無いかと探ってみたけど…やっぱり、似たようなのが出没しているようだよ」
「うーん、正体不明の艦隊…あちこちで出ているのか」
僕らだけが襲撃されたのかと思ったが、そうでもないらしい。
膨大なネットの海を探ってみれば、各所で同じようなケースに遭遇したらしい報告が上がっており、何かしらのイベントの前触れなのかと期待する人もいれば、被害がヤバいのでどうにかしてほしいと叫ぶ人もいる。
「万人に撃退は厳しいけれど、それでも一部では成功か…何名か、心当たりがあるな」
突撃恐竜艦隊とか、どこかの女帝が想像できるし、変態流星群は…敵味方双方にとって遭遇したくないだろう。
何にしても、絶対に倒せないような存在ではないようだが、驚異的なのは間違いないとプレイヤー全員の認識にあるようだ。
ある海域ではその被害を示すように、魔導船の墓場になっているような宇宙の海域も出来上がっているらしく、探せばもっとあるのかもしれない。
「厄介事がじわりじわりと出てきているような…来たら撃退できそうだけど、来ないでほしいなぁ」
「ハルがそういうと、厄介事の擬人化された化身が、満面の笑みをしながら全速力で駆け寄ってきそうだよ」
「何そのおぞましい話」
そんなもの、擬人化どころか駆け寄ってきてほしくない。
駆け寄ってきたら黒き女神に眷属の力を合わせて全力で空のお星さまにするレベルで殴ってぶっ飛ばしたい。
そのままどこかの火山の火口にホールインワンさせて、黒煙をあげて焼き尽くせれば…
「…あれ?もしかして厄介事って、物理的に消し飛ばせるのか?」
「どういう想像したの?」
それが出来たら苦労しないだろうが、ちょっとした希望が見いだせたのかもしれない。
何かと厄介事が多いこの世の中、ぶっ飛ばせる手段を試すだけの価値はあるだろう。
ハルはしばしの間、女神の力で厄介事をこの世の中から消し飛ばせるのではないかと思案するのであった…
「…ああ、そっか。生まれる前に空間、いや、厄介事を生みだす根源の世界そのものを消し飛ばせればいいのか…」
「それ、やらかしたら邪神と言われるような類に近づきそうなんだけど」
…まぁ、そもそもそんなこと、無理だと思うけどね。思うだけでも、良いだろう。
あ、でもどこかの世界に追放レベルに関しては前例があるし…やろうと思えば…うーん…
厄介事、概念的には存在するだろう
その概念を滅ぼせれば、平和になるのだろうか
しかし、それでも生まれるからこそどうしようもないのが現実であり…
次回に続く!!
…新作揺らぐ。まず、某緑の衣っぽいけど最近はそれ着てなくて厄災とか言われる勇者の最新のやつが面白いのが悪い。




