ver.5.1-62 たまには変えてみるのもありで
さて、基本的に欲望戦隊の戦闘方法だが、普段は攻撃に積極的に出ているわけではない。
タローンたちの職業はタンクマンになっており、防御力に特化している方であり、マッチョンやアティが大きな一撃を振るえるように、極力守って戦うような戦法を得意としている。
だがしかし、今この場にはその二人はおらず、通常の状態であればダメージを与えるのにも一苦労するだろう。
ましてや、このブラックバットの単体の能力もそこそこ強く、決定的な一撃を叩き込めなければ吸血のスキルでHPを回復してしまい、タンクマンの職業を持つプレイヤーが体力タンクとして利用されかねない。
そのため、普通であれば苦戦を逃れることはできなかっただろうが…そんなことを彼らは予想していなかったわけではない。
むしろ、こういう時に備えての牙も隠し持って磨いていたのである。
「きぇぇぇぇぇ!!」
「どりゃぁぁぁぁ!!」
そう、何もメインの職業だけが、このアルケディア・オンラインの世界で目立っているわけではない。
サブで職業を有することが可能であり、それを利用したのである。
欲望戦隊のメインの攻撃力は、マッチョンとアティ。
その二人だけに頼りきりでは、万が一の場合全滅を免れないだろう。
それに備えて密かに彼ら自身の攻撃力を底上げするために…サブ職業をセットしており、このブラックバットたちとの戦闘で全力で使用することを決めていたのだ。
アルケディア・オンラインでの職業による補正は多少あるが、現実世界での実力もまた反映されるもの。
彼らがその実力で、ブラックバットたちに勝てるだけのサブ職業というのは…
「気合のこぶしぃぃ!!」
「瓦割りぃぃ!!」
「バックドロォォップ!!」
「波〇拳!!波〇拳!!昇〇拳!!」
サブ職業、『異種格闘家』。他の格闘技をスキルとして利用できる特殊な職業。
現実世界ではある道場に在籍しているようだが、その実力を活かすには都合の良いサブ職業であり、タンクマンの防御力をあえて拳や足へ集中させることで、攻撃力を爆発させて活かしているのだ。
ひょっとこのお面を外し、元の戦隊としての姿で戦うさまは、明かりがあればザコたちを相手にする戦隊ヒーローもののように見えただろう。
惜しむらくは、纏う欲望の熱気のせいで少々歪んで見えており、どっちがヤバい奴らか闇夜で見えないことぐらいだろうか。
とにもかくにも、欲望戦隊は各々の力を全力を振るい、ブラックバットたちを片付けていく。
たとえ相手にとって都合の良い場所だとしても、感覚を研ぎすませまくった彼らにとってはどうということもなく、自在に動きまくり…そして数分もしないうちに、ほぼ全滅をさせた。
全てを倒さないのは、たった一体のブラックバットを狙うため。
他の余計なものも排除することで確認しやすくし、確保を試みる。
ブラックバットのテイム条件は、他のテイムモンスターたちのテイム条件と比較すると非常に容易い分類に該当するもの。
仲良くして、友好関係を築き上げることで、自然とテイムできるようになるらしい。
テイム条件の中には鬼畜なものも多いのだが、比較的楽な方だろう。
この凄惨な現場になったところで、友好関係を築き上げられるかは不明だが…策が無いわけでもない。
「とりあえず今は、築く前に逃げないように捕獲を!!用意していた捕獲用の道具で…!!」
流石にこの状況ではすぐに築けないので、ゆっくりと時間をかけてやれるように捕獲の用意を行う。
この場所で捕らえ、達成まで近づいてきていた…その時だった。
ぼんっ!!ばしゅん!!
「「「「んなっ!?」」」」
何か妙な音が響いたと思った次の瞬間、そこに目当てのブラックバットの姿はなかった。
闇夜故に視界が限られているが、それでも研ぎ澄まされた感覚から彼らは感じ取る。
いつのまにか忍び寄っていた何者かの手によって、ブラックバットが捕獲されたということを。
あっという間の出来事で、あっけにとられるもすぐに我に返る。
「お、追えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ここまで来て、横取りされてはたまらない。
その思いで、すぐに彼らは横取りをしてきた何者かを追跡し始めるのであった…
「---作戦第二段階へ移行。順調に進み中っと」
…その動きを見ていた女神が、そうつぶやいたが、彼らの意識は横取りをしたものへ向けられており、気が付かれることはなかった。
旨く行きそうなところへ、突如の乱入
何者かは不明だが、かすめ取られてはたまらない
そう思い、欲望戦隊が追いかけるが…
次回に続く!!
…他、格闘系のネタもやりたかったけど、今回はこれになった。




