ver.1.1.1-37話 出てくる場所、絶対に間違えている
【ウゴォォォォォォォス!!】
びりびりと大気が震えるような咆哮を上げ、スーパーロボットが起動し始めたようなポーズをとるフォレストガーディアン。
出てくるのであれば、もっとこうメカメカしいSFとかスチームパンクの世界にだとは思うのだが、そのツッコミを入れたとしても聞く耳を持たないだろう。そもそも耳があるようではなく、モノアイの巨人にうっそうと全身が緑に覆われており、森その物が巨人になった印象を与える。
「勝っても負けてもいいイベントのようだけど…‥‥負けたくはないな」
【シャゲェ】
【ガウガウ】
【ヒヒーン】
ぼそっとそうつぶやくと、全員が同意するように頷いた。
無理もないだろう。このフォレストガーディアンに負けることは、こいつを呼びだしたのじゃロリに負けるようなものでもあり、それは絶対に嫌だと思えたのだから。というか、ちゃっかりと距離を取って安全地帯からにやにやとみている生意気そうな顔に、苛立ちを覚えなくもない。あと絶対に運営に意見を述べて、お仕置きを可能にしてもらって、しっかり灸をすえさせてもらおう。
そう言う想いも抱きつつ、今はこの目の前の敵に対して挑むのみ。見る限りには大型のパワーファイターのような印象も与えるが、それだけではないような気がする。
キュインキュインキュインキュインキュイン!!
パウワウワ!!
「って、案の定目からビーム出すのかよ!?」
目が光りながら何かを貯めるような音がした方と思えば、次の瞬間にはビームが解き放たれており、僕らは慌てて回避するも着弾地点からの衝撃波にふっ飛ばされる。
モノアイのような目はただの目ではなかったようで、直ぐに全員の気を引き締めて戦闘に当たる。
幸い、次弾が装填されるまでに何かあるのか、あるいは冷却しているのか、目の部分から煙が出ている様子が見て取れて、次の光線までは時間があるらしい。
ならば、この時間で攻める手段を模索するべきか。
「とりあえず全員、まずはそれぞれの攻撃を合わせるぞ!!何が効果的なのか、短い時間で探り出すんだ!!」
ばっとばらけ、それぞれの攻撃を試すことにする。どの様な手段が一番効果的なのか探り、一気に攻めきる手段を見つけ出さなければいけないだろう。
当然、次の発射までフォレストガーディアンが大人しくするわけもなく、大きな手足を振り回してくるが、その素早さは光線よりはマシな方だ。直撃すればただでは済まないだろうが、僕らの方は全体的に素早く動けるので、回避行動に専念して地道な攻撃をするぐらいはできる。
【シャゲェェ!!】
しゅるるるっと腕をかいくぐり、絡みついてマリーがクナイを突き立て、毒をしみこませる。だが、その毒は毒々しい色合いを周囲の皮膚に与えるものの、広がる様子は鈍いように思える。毒の耐性を持っているのか、あるいは回復能力の方が高いのか。
【ガウガウ!!】
だだだだだだんっと蹴り飛ばし、リンが猛烈なラッシュをかけるが、木の肌は思った以上に硬いようで、こちらも決定打になっていない様子。しかも、枝葉が生えて来たかと思えば、それが衝撃を受け止めるように動き合い、威力を鈍くしているようだ。
「となると、打撃や状態異常のほうに高い耐性を持つようだが‥‥‥なら、これならどうだ!!セレア、全速力であいつの周囲を駆け抜けろ!!」
【バルヒヒーン!!】
高らかに叫び、セレアが地面をけり上げ、フォレストガーディアンの周りを駆け抜ける。
僕も騎乗しており、相手の攻撃が飛んできそうでもギリギリで交わし(躱し)合い、相手の行動の隙を見つけたところで、道具を試していく。
毎度おなじみ改良中の爆裂薬に、先日使用したロケットパンチに刃を付けて斬撃を可能にしたカッターパンチ。
相手が木の材質に近いならば火や氷に弱いのではと思い、大炎上薬に大氷結薬と新しい薬品を試したり、マリーの毒だけではなくドロップ品の様々な薬物を組み合わせた状態異常役をぶちまけて耐性の穴も探っていく。
ついでに、こちらへの攻撃が集中しないように、攻撃手段を模索する方向からかく乱するためにマリーとリンがそれぞれ動き合い、攻撃を分散してダメージを防いでいく。
「ほほぅ、中々連携が取れているようじゃが、それでも倒すにはまだ足りぬのぅ。決定的な一撃が、無いと見る」
避難した大樹の上で傍観してつぶやくのじゃロリの声が聞こえてきたが、そう思うのであればそう思わせておけばいい。
決定的な一撃は探っている最中であり、用意をするのであればすぐにできるのだ。
「とはいえ、確かに一撃に欠けるが‥‥‥全部が全部、効果的ではないとも言い切れないか」
セレアに騎乗しながら、振り落とされないようにしがみつき、攻撃も合間に仕掛けて様子をうかがう。
状態異常系統は耐性があるのだろうけれども、複合させた大量の毒薬で効果がそれぞれ違っているようで、広がり具合が異なっている。
蹴りに拳、斬撃などの攻撃も一発一発が鈍らされるが、組み合わせによっては効果的にできるかもしれない。
‥‥‥戦闘中でも、周囲の状況を把握することで、何がどうしているのかはっきり理解することが出来る。
そう、仕事でも多くの仕事の山があったとしても、どれがどう動くのかを把握し、効率的にこなせればできないことも無く、やりようがある。
それをこのゲーム内に活かすだけであり、全員の持てる力を活かせば相手が大きかろうともどうにかできるはずだ。
「全員、一旦集合!!一か所に集まると攻撃集中のリスクもあるが、出来れば少しの間、相手から目をそらさせろ!!マリー、毒の霧を思いっきり散布!!」
【シャァ、ゲェ!!】
マリーが手をかざし、くいっと動かすと瞬時に周囲に湧き上がり始める毒々しい霧。
何も毒攻撃を物理的にするだけではなく、状態異常攻撃としてはこうやって霧で攻める手段も彼女は手に入れていたのである。
まぁ、代償としてこれ敵味方関係ない無差別型のもので、使用機会がすごい限られてしまうが、毒状態になったところで解毒剤を用意しているので直ぐに服用してダメージを減らす。
【ウゴォ!?ウゴォォォォォス!!】
瞬時に広がりを見せる毒の霧に驚愕したようだが、この程度のものなら関係ないというようにフォレストガーディアンは攻撃を仕掛けてくる。装填を終了したらしい光線がきたが、毒の霧で僕らの位置が把握し切れていないので、外れていく。
幸い、この毒の霧は可燃性のものではないので大爆発の心配はないだろう。やったら最後、自爆モノになりかねないからな。
とにもかくにも、霧で少しの間相手の攻撃を回避することから解放され、作戦を話し合う時間が出来上がる。
ほんのわずかな間、それでも全員耳を傾け、そのすべてをしっかりと確認し合う。
「それじゃ、霧が晴れたら一気に反撃を仕掛けるぞ!!」
その一言に全員うなずいて了承する。相手は一人、こちらは一人と3体で数では上であり、例え相手の個人の強さが上だとしても、連携し合ってその差を無くせば良い。
そう思い、僕らは霧が晴れると同時に、話し合った作戦を実行するのであった…‥‥
「ついでに、討伐後にのじゃロリにお仕置き可能になったら絶対にしよう!!」
【シャゲシャゲシャゲェ!!】
【ガウガァァァウ!!!】
【バルヒヒヒヒン!!】
‥‥‥気のせいかな?ガーディアン討伐よりも、お仕置きができたら絶対にやってやるぞという意志の方が強くて、更にやる気が溢れていないか?
眼からの光線は、モノアイを持つモノのお約束かもしれない。
けれども、お約束のような相手であるからこそ、やりようは見えやすい。
連携することで、効果的に攻め込むことが出来るのか…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥なお、もしもこの物語を書いていなかったら、多分没にしたスチームパンクを主体にした錬金術師モノの物語で、敵役として出していたりする。やらなかった理由?ありきたりだったのと、何処かのメイドが確定で出てくるのが目に見えたんだよ。




