ver.5.0-16 類は友を呼ぶ
眷属のパワーバランスがぶっ飛んでいるが、近々修正が入ることを祈りたい。
そう思いつつも、とりあえず他の新要素に触れたいと思い、ハウス内にカイニスを戻し、ティラリアさんたちとも別れて、ハルたちは船に戻っていた。
「…さてと、テイムモンスターたちの言葉もわかるようになったし、他に触れやすい新要素の方に移りたいけど…どこへ向かうべきか」
「んー、冥界とかも気になるけど、アレはデスペナルティの時にあるらしいし、そうでないなら…そうだ、あちこちへ向かえる新しい宇宙港があるっていう惑星『メルダリア』へ向かうのはどうかな?」
「メルダリア…ああ、他の次元へ行けるって話の星か」
アップデートによって新たに冥界などが追加されたそうだが、これまでにも他フィールド扱いとしての魔界や天界、鏡界などが存在している。
それらに向かうには特殊なゲートを通る必要があって、宇宙フィールドにプレイヤー達が進出できるようになった今、わざわざ最初の星に戻ってゲートを目指すというのは大きな手間になるだろう。
そこで今回、あちこちに広がり過ぎたアルケディア・オンラインの世界の交通の便をより行き来しやすくなるようにということで、全部に向かいやすくなる集約型宇宙港…現実の世界でいえばハブ空港的な場所としての星…惑星メルダリアが追加されたのである。
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随時進化型機械港惑星『メルダリア』
広がりつつあるアルケディア・オンラインの各世界に通じるゲートを集約しており、あちこちの世界へ向かえるようになっているという運営の手によって建造された人工惑星。
特殊なエネルギーによって惑星内部の構造が常に変化し続けており、アップデートによってさまざまな出口を次々と開設できるようになっているため、長期的な利用が可能である。
また、結局一つの星に向かわなければいけないという文句が出そうなことも対応するために、あちこちの宇宙にワープポイントが設置されており、そこから入ることであっという間にメルダリアのある宙域へと容易に辿り着くことが出来るようになっている。
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「天界や修行のための世界などにもいきやすくか…わかりやすい場所から向かいやすくなるって言うのは、これはこれで便利で良いかもね」
「直接その場所へワープできれば良さそうな気もするけど、こういう港があるからこそ人が集まって様々なことがしやすいって言うのもあるのかも」
実際、数多くの宇宙に散らばったプレイヤーたちがあちこちからやってくる中継地点ともなる場所のため、宇宙の果てだろうがどこだろうか、あちこちの特産品を得やすいなどの利便性が開拓されているらしい。
単純にあちこち行けるだけではなく、その行ける場所を利用した商売を行う商魂たくましいプレイヤーも多いらしく、AL稼ぎにはもってこいともいわれているようだ。
「それに、まだ追加されているアナウンスはないはずなのに、特殊なスキルを持っていることでそのプレイヤーだけが向かうことが出来る世界もあるみたいだね」
「神系スキル所有者には神界、妖怪系スキルで妖界、変態系スキルで変態界とかあるって」
「前者はまだわかりやすいけど、その最後のは絶対に行きたくないな」
そこに向かえそうな人に、心当たりがあるが…うん、欲望戦隊ならば絶対に向かっていてもおかしくはないだろう。
変態も解釈を変えればまだどうにかなりそうなものもあると思うし、その解釈違いを狙って入る可能性は十分にある。
そのまま過ぎたら、意味もないがあの欲望変態共ならば問題ないだろう。戦隊と変態を言い間違えているわけでもないが、間違っていてもいなくてもそう大きな差はない…はず?
「それにしても、神界とか…それはそれで興味はあるな。こういう名が付く奴は、絶対に滅茶苦茶レアなアイテムが眠っていたりするからね」
「でも、向かうにはスキルで変身しないといけないみたいだよ。ハルの場合、向かうなら黒き女神の姿だよね」
「ううっ…」
珍しい場所へ向かうためには何かが代償になるというが。女神の姿になるとはどういう代償なのか。
まぁ、最初こそは抵抗が大きかったが、ここ最近は割とすんなり受け入れている自分がいるような気がしなくもない。
そうなりつつあるのは、何か恐ろしいような気もするが、気にしないほうが良いのだろうか。
けれども、最初から未知の界隈へ向かうのは勇気があるので、まずは既知の場所へ本当に向かいやすくなっているのかという確認作業のほうが良さそうである。
「それに、神界ってことは、下手すると最近噂の変態神とか言う存在に遭遇する可能性が大きいからな…絶対に出会いたくない」
「言われてみれば、そうだったね…それって本当に、神の類なの?スキル関係無しで真の変態が神を名乗っているだけじゃないのかな」
「それはそれで物凄く大問題なのでは」
そんなことに思考を割くのは時間の無駄ということで切り捨てることにして、進路は決まった。
向かうは惑星メルアリアへ、舵を取る。
「それじゃ、あちこちへ本当に楽に迎えるようになったのか確かめるために、グレイ号発進!!」
【あ、その前に主様、良いでしょうカ】
「ん?」
意気揚々と向かおうとした矢先、ふと気が付いたらロロが近くに立っていた。
「どうしたの、ロロ?」
【現実のほうで、主様へ訪問客のようデス】
「訪問客?」
家に来る人とは言えば友人とか家族がいるが、本日は誰かが来る予定はないはず。
それなのに、やってきたとなると誰がいるのか。
「んー、気になるし一旦ログアウトしてみるか。ミーちゃん、ちょっと待っていてね」
「仕方がないけど、別に良いか。私もログアウトして一緒に出迎えるよ」
やる気があったところへ水を差されたような感じだが、現実のほうも十分大事。
グレイ号の発信準備をロロに任せて、僕らはすぐにログアウトを行い、玄関へ向かう。
「とはいえ、誰がいるのやら…ロロが訪問客の名前を告げなかったあたりを考えると、不審者とかはないかな」
「むしろ、彼女の場合私たちが知らない間に、周囲一帯の不審者を撃退・殲滅していそうだよね」
「いやいや、流石に使用人がそこまでやることはないと思うよ」
ここ最近、近隣での空き巣被害とかの話は失せているが、そこまでやっていることはないだろう。
そう思いながら、玄関についてドアに手をかけ、訪問客を出迎える。
「えっと、誰ですかね今日来たお客は…は?」
「…え?」
玄関のドアを開け、外にいた客の姿を見て…僕らは思わず間抜けな声を漏らして固まった。
誰か、知り合いでも訪ねてきたのかと思っていたのだが、確かに知り合いなことは知り合いなのだが…ついさっき、知り合ったばかりというべきか、戻っていったはずの…
【…現実世界ニ、出レコレタゾ主ヨ】
「「…か、か、か、カイニスーーーーーーーーーーー!?」」
…まさかまさかの、眷属になりたてほやほやの黒色夜叉ことカイニスが、そこに立っていたのであった。
「いやいやいやいや、モンスタードールとか使って出ているとかだよね!?」
「あ、でもあれって確かテイムモンスター専用で、眷属でも使用できるって明言はなかったよね!?」
「というかそもそも、ドールは今日はまだ家の中にしまっているはずなんだけど!?」
「外部からだとしても、どうやってぇぇぇぇぇぇ!!」
【オ、オゴガァ…何カ、凄イ混乱シテイルナ】
「「誰のせいだと思っているの!!」」
まさかの眷属になりたての鬼が、現実世界に出てきたようだ
ドールを介した様子もないが、一体何をどうやって!?
あ、でも妖精女王の例もあったし、そこまで珍しいことでは…いやいや、それはそれでおかしくないかな?
次回に続く!!
…早々に、やらかしている模様。黒き女神の眷属だからか、それとも黒き女神でもある春自身のせいなのか、果たしてどっちだろうか




