表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
405/718

ver.4.3-171 たまにはマジの踊る月夜

…ワニと戦う時、人はどう応戦するべきなのか。

 まず気を付けるべきなのは、その大顎。開く力は強いものではないらしいが、かみついた時の威力は比較にならないほど強く、なおかつ相手がグールになっているワニであれば、より強靭な大あごになっているのでさらにパワーアップしているのは予想できるだろう。

 また、普通に筋肉が肥大化しているゴリマッチョな化け物な時点で、顎以外にも全身が凶器となっているのであれば…






ジュルルルルッ…

「…くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!春の血でパワーアァァァァァップゥゥゥ!!」


 ドーンっと、某サルになったり金色になったりするどこかの宇宙人のように、血を飲んだミーちゃんの髪と目が深紅に輝きだし、ぶわっと纏う空気が切り替わって真祖としての力があふれ出す。


「今なら、何でもできる気がする…!!そう、相手が化け物のグールだとしても、どうにかなるかも!!」

「とはいえ、油断できないからね…サイドカーに装備されているほかの道具も使って援護するけど、危なくなったら黒き女神フィギュアも使用するよ」


 使用している間、本体が動かしづらいので、万が一攻撃の標的を切り替えられた場合、不味い事態になりかねない。

 でも、使う時点で相当不味い状況になっているだろうし、ならない選択肢を選ぶことはないだろう。



 廃墟と化した屋敷の地下、ある程度の距離を取って余裕ができたところで、事前にパックに詰めていた春の血を飲みえ終えて、ミントが一時的に真祖としての力をフルに引き出せるようにする。

 無くてもやろうと思えばできるのだが、血があるのとないのでは大幅に振るえる幅が違うようで、グールという禁忌とまで呼ばれるようなやばいやつが相手ならば、これで十分なはずだろう。


【ワニワニグワァァァァ!!】


「っと、相手はおとなしくしているわけでもなく、すぐに追いつきそうなほど来たか…春、ここで車を止めるから、そこにある電磁バリア発生装置で身を守って、後は小さいけど、トランク内にある道具で応戦を頼むよ」

「銃刀法違反をバリバリにやらかしている気がしなくもないけど、緊急事態だから考えないようにして、支援を行うね」


 きききぃっとブレーキを踏み、サイドカーの周囲にロロが仕掛けていた防御壁が発生すると同時にミーちゃんは飛び出し、ワニへ向かって拳をふるう。


「さてと、相手をしようかゴリマッチョワニグール…言いにくいから縮めてゴリラワニ!!お前の相手は、私だぁぁぁぁ!!」

【グワニグワニィィィィィ!!】


 空中を勢いよくかっとんでミーちゃんが拳を突き出すと、相手のゴリラワニも受け止めるように拳を肥大化せてぶつかり合う。


ドォォォォォォン!!


「うわっ、やっぱり結構強いかもこのワニ!!真祖の力、解放してないとやばかったかな!!」


 こぶしの衝突後にすぐに後方へ距離を取り、そう叫ぶミーちゃん。

 準備をしておいて正解だったようで、一撃がぶつかり合っただけなのに相当な衝撃波が発生したようで、地下空間のあちこちにひびが入る。


「長期戦は崩壊のリスクがある!!短期決戦を目指して!!」

「わかっているよ!!春の血で制限なしで振るいまくれるから、問題ない!!」


 ミーちゃんの体が深紅に輝き、紅い光の玉をいくつも周囲に作り上げる。


「接近戦は相手のほうが上のようだけど、遠距離ならこっちの得意分野!!真祖の力はこう扱うんだよ!!ぐっと握って」

ドゴドゴドゴォォォォォォン!!

【ワニグワァァァァァ!?】


 大量の紅い球がワニの周囲にまとわりついたかと思えば、一気にはじけ飛ぶ。

 爆発しているようだが衝撃の範囲を絞っているのか余すところなく集中的にダメージを与えるだけにとどまり、周囲への被害がない。


「あはははははは!!今なら相当昂っているから、他にもこういう芸当もできる!!必殺、真祖ビーム!!」

ドォォウ!!

【ワニグェェェェ!?】


 ミーちゃんが指を向けるだけで、ぶっとい赤い光線が発生し、ワニの体全体を飲み込む。

 壁に当たる直前でUターンし、何度も直撃して細くなって消えるまで攻撃を続ける。



 相手は吸血鬼の血で生み出された、禁忌の怪物グール。

 しかもそこに、ワニの凶暴さや生命力の強さが合わさって、より強靭な化け物が爆誕したはずだったが…


「せりゃぁぁぁぁぁ!!!」

【ワニワニグワァァァァァァァァァァァァ!!】


 ズドドドドッっと連打をかまし、相手が拳で殴ってきたら後ろへ下がり、空振りしたらその隙に足技で蹴り上げてのヒットアンドウェイの攻撃を繰り返すミーちゃん。

 いかんせん、相手が強い化け物だとしても…血で強化されたミーちゃんの敵ではない。

 というか、いくら血を得たとしても、ここまで圧倒的になるのだろうか。僕の血って何かテンションを上げるような薬物じみた成分が入っているとかはないよね?


 だが、一応怪物と称されるだけあって、どれほどの猛攻を与えたとしても、砕け散った肉や骨が集合し、再生を繰り返す。

 元々の生命力が強力なのか、それともグールとしての怪物だからか、何度やられたとしてもすぐさま再生してしまい、決定打とならない。


 流石に限度はあると思いたいが、ミーちゃんの強化も永遠ではないので、どちらが先にやられるかはわからない。

 相手のほうがより野性味を帯びているのならば、長期戦は避けたいと思っていた…その時だった。


ごぼごぼぼぶぐぅ!!

【ワニワニ、ガフグベェッ!?】


 突然、ゴリラワニが血反吐を吐き出し、苦しみ始めた。

 もしや相手の再生の限界が来たのかと思ったが、何やら様子がおかしい。


 陸に打ち上げられた魚のように全身をのたうち回らせて、暴れて…次の瞬間、腹が膨れ上がった。


ぶくくくく!バァァァン!!

【ゴッベバァァァァァ!!ジヌガドオボッダァァァァァア!!】

「え!?」

「中から人が出て、いや、この声もしかしてオデールか!?」


 はじけ飛んだかと思えば、中から人型の何かが出てきて、そう叫ぶ。

 人ではないようで、全身どろどろと赤黒く溶けたスライムのようになっているのだが、その声は伝わり、声の感じからミーちゃんはオデールだと思ったらしい。


 けれども、この様子だと普通の吸血鬼というわけでもないようで…



【オゴベベベ…オグワァ、ナ、ヌワンダゴノヂガラハ…!!】


 ぶるぶると震えだし、どくどくと溶けた表面が脈動を打つ。

 どくん、どくんっとまるで一つの大きな心臓のように、それでいてかろうじて人型の状態で、こぶしを握り締める。


【ズゴイ、ズゴイゾゴノヂガラァァァァ!!マルデムデギニナッダヨウダァァァァ!!】

「な、なんだよ、あれ…ミーちゃん、あれって本当にオデールって吸血鬼なの?」

「いや、あんな見た目までは流石に…まさか、グールになっていたワニに取り込まれていたけど、猛攻でワニが弱ったから、その呪縛から解放されて飛び出して…その力を身に宿しちゃった?」


 どうやら決定打がなかったのが仇となったようで、ゴリラワニの力が中途半端に弱くなった結果、恐らく食べられていたオデールのほうの血が勝って飛び出してきて、グールとしての力を宿してしまったようである。

 最悪というか、これぞ禁忌というべきか…生み出した宿主を新たなグールへと変貌させたようだ。

 化け物がより化け物を生み出す事態になるのは、確かに禁忌になってもおかしくはないだろう。


 そして、ワニと違ってまだ理性としては人に近いものがあるようで…こちらの方に、赤黒い液体のような皮膚の中から不気味に黒く輝く目玉が向いてきた。


【オゴボボボ…ゾゴニイルノハジンゾドニンゲン…モハヤトルニタラヌアイテダガ…ゾウダナ・・・バラガベッダナァ】


 言っている言葉が濁音交じりで聞き取りにくいが今、腹が減ったと言いながらこちらを見ている。

 化け物に成り果てた愚者が、こういう行動をとるときのお約束といえば…


【イダダギマァァァズ!!】

「やっぱり、襲ってきたぁぁ!!」

「第二ラウンド、このまま続けるのはちょっときついね!!」


 ぶわっと全身を膨らませ、スライムよりも粘度が高そうな赤黒い体で、僕らを襲い始めるのであった…



ワニがはじけ飛んだかと思えば、今度は中身が襲ってきた

元凶が化け物に成り果てるとはとんだ末路だが、

巻き込まないでほしいと切に願いつつ連戦へ…

次回に続く!!



…化け物が新たに最悪の化け物を生み出すからこそ、禁忌なのだろうか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「接近戦は相手のほうが上のようだけど、遠距離ならこっちの得意分野!!真祖の力はこう扱うんだよ!!ぐっと握って」 ドゴドゴドゴォォォォォォン!! 同じ吸血鬼繋がりでどこぞの幻想幼女を思い出…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ