ver.4.2-128 神は言っていることもあるらしい
鉱山惑星…それは、字面だけ見れば大量の鉱石が眠っている鉱山だらけの星か、あるいは星そのものがどこか巨大な星からもげた鉱山なのか、様々なものが予測できるだろう。
だがしかし、そういう予想をツッコミどころある形の剛速球でぶちかましてくるのが、アルケディア・オンラインの運営会社の手法である。
「というわけで、鉱山惑星が見えてきたけど…ロロ、あのあたりに目的の星があるはずなんだよね?」
【はい、宇宙地図をもとに確認しましたが、間違いないはずデス】
「ならさ…なんで、惑星をいくつも飲み込むようなぶよぶよしたもので覆われているんだろうか」
【…不明ですネ】
…宇宙空間にて、魔導船のデッキから見える目的地の方角を見て、ハルはロロとそう話すが、きちんとした回答を得ることができなかった。
無理もないだろう。目的地の惑星は確かにまだギリギリ目視できているのだが、誰が予想できたのだろうか。
【えっと…ああ、データ分析結果出ましたネ。あれ、惑星捕食モンスター『ギガ・グラトニースライム』というモンスターのようデス】
「つまり?」
【現在進行形で、惑星をいくつも体内に入れた状態で、捕食中のようデス】
「やばそうなモンスターじゃん!!」
今までいくつものモンスターをオンライン内で見てきたが、まさか宇宙の中で星を食べるような規模に遭遇するとは思わなかった。
というか、目的の惑星にも人が住んでいるはずだけど、アレは人が無事な状態でいられるのだろうか!?
十数分後、確認を行うとどうやらスライム襲撃事態に関しては、事前に警報が発令しており、現在スライムに飲み込まれている惑星の人々は既に脱出済みらしい。
そのため、実質的な被害は飲み込まれた惑星にしかないようだが…これでは鉱山惑星でのレベル上げどころではないだろう。
「なんだろう、この計画をせっかく立てたのに、予想外の出来事でぶち壊しにされる悲しみは…」
鉱山惑星でのレベルアップを考えていたのに、一つのイレギュラーでこうも容易く崩壊するとは、世のなか厳しいものである。
「許すまじスライム…屠ってやりたい。ロロ、あのスライムって討伐できないのか?」
【計算してましたが…厳しいですネ。ご主人様の黒き女神の最大規模の攻撃や、この魔導戦艦グレイ号の艦首に備え付けた最大火力の砲撃も効きまセン】
詳しく確認すると、あのギガ・グラトニースライムというのは、過去にもあちこちの惑星を捕食して回っていることから、討伐しようという計画が立てられていたことがあったらしい。
だが、物凄く面倒な特性を持っていることが発覚したため、満腹になってから百年は動かないことを考え、単純な自然災害扱いとして放置するしかできなかったそうだ。
【どうも自身に向けられるエネルギーに関して、概念そのものから干渉して吸収して成長してしまうらしいですネ。過去には超新星爆発寸前の恒星を飲み込ませて、内部から焼き尽くす大爆発で屠ろうという計画もあったようですが、そのエネルギー自体も吸収してしまい、むしろ今のサイズになってしまったそうデス】
元々は火星位のサイズだったらしいが、その計画の失敗によって今ではいくつもの惑星を同時に捕食できるほどの巨体になってしまったそうだ。
幸いというべきか、あまりにも巨大になり過ぎたためか小さすぎるような生命体とかがいても気にすることなく無視したりするようで、近くを通過する程度であれば何とか被害に遭わないそうだ。
【着陸したら、数時間ぐらいで吸収が始まり、二度と出られなくなるらしいですけれどネ。いくつもの船が直接攻撃しようと降り立って、帰らぬものになったという記録もありマス】
「人にはもうどうしようもできない、巨大な災害ってことか…」
惑星を捕食してしまう、宇宙的災害。
そんな代物に、小さな人々が集まって対抗できるだろうか?いや、できないだろう。
「そのうえ、黒き女神の力でもどうにかできないやつか…もはや神を超えたスライムと言っていい様なやばいものなんじゃ?」
【まぁ、惑星を捕食することのみのほうに意識が向くだけで、人をどうにかしようとかそういう思考はないのがまだ幸いというべきでしょうかネ。これで満腹にならず、全てを喰らいつくす化け物だったら…いつか、宇宙そのものが滅んだでしょウ】
今できることは、あのスライムに近寄らずにさっさと去ることしかできないということもでもある。
とはいえ、鉱山惑星を今回の目的地に考えていたので、すぐに次の目的地を考えにくいところがある。
「ああもう、こうなったら普通に遊び惚けらるような場所で憂さ晴らしをしたいかなぁ…そう考えると、スライムの被害にも合いにくそうな距離で一番良いのは…ここかな?海王惑星『ルカドン』。リゾート地みたいな場所で、時期的には海水浴を楽しめるか…そうしようかな」
スライム相手に暴れられないなら、いっそ似たような水分として海で盛大に遊び惚けたい。
現実のほうの海でも良いのだが、VRMMOの海であればマリーたちと一緒に楽しめるだろう。
そう考えて、進路を変更して海王惑星へ向かうのであった…
「あ、でも向かうなら水着装備とか買っておけばよかったな」
【現地でも販売してますネ。テイムモンスター向けもあるようデス】
「ちょうど良かったけど、モンスター用も売っているのか」
…一応、確認してみたところ僕以外にも人型に近いテイムモンスターをテイムできている人や、装備品がなければ海に入れないようなモンスターもいるようで、モンスター向けの水着装備セットも現地で販売されているようである。
「真夏の海水浴場みたいな感じにもなっているか…へぇ、家ぐらいのサイズのスイカ割りや、時間によっては花火大会とかもやっているのか。これはこれで、普通に面白そうだし、ミーちゃんと一緒に行きたかったなぁ」
「ぴゅぇくしょん…うう、誰か私の噂をしているのかな?…いや、今はそんなことよりもお母さん、そっちは片付いた?」
「うーん、相手がしつこくてね。こうなったらこの鼻毛のみが永遠に伸び続ける毛生え薬をぶつけて、苦しんでもらうほうが良いのかしら…?」
目的地急遽変更し、海へ向かう
考えてみれば、ソプラノ村以来の海かなぁ
あの村のおばば様とか元気だったかなと思いつつも、
次回に続く!!
…さて、ミーちゃんたちは何をしているのやら




