ver.3.2-74 その力は無事に、ふるわれてしまったのdeath
‥‥‥最狂にして最凶な身内に連絡を入れて10分後。
どうやらすぐに動いてくれたようで、メールが届いた。
ペポン♪
「あ、来た来た。えっと‥‥‥うん、大丈夫だ。あと数十秒もしないうちに、鏡面ののじゃロリをどうにかできるって」
「どうにかできるって何をやったんだ?」
メールの内容を読み、そこに中三病さんが疑問の声を上げる。
まぁ、疑問に思うのも無理はないだろう。一介のプレイヤーにすぎない僕の身内が、本気でこの状況をどうにかできると信じ切れないからだ。
だが、その証明はすぐに届くことになった。
ヒュルルルルルーーーードォォォォン!!
【毎度おなじみ、音速お届け超高速メイド、ジェッター!次回大型アップデート用に開発された試作品ジェットを新たに搭載し、光の速さになってただ今時間通りにお届けに参りまシタ!!】
「…‥‥あー、手ごろな奴に届けさせるってばぁちゃん、コホン、フロンお姉ちゃんのメールにあったけど、こっちが来たか」
位置情報が分からなければ辿り着けない島なのに、大空を切り裂いて現れたのはいつも何かを届ける用事がある時に出てくるロロの使用人仲間。
なにやら以前であった時よりも小型化したジェットエンジンみたいなものを積んできているようだが、その性能は飛躍的に上昇しているようで、他にも気になる情報を吐いていた。
でも、今はそんなことよりも届けられた物が大事だ。地面が勢いで抉れてガラス化しているが、気にするようなものでもない。
「それで、届けに来たものは?」
【こちらでございマース!!ブラックボックス崩壊NPC用に、管理者上位権限コードを取得されたフロン様が開発された新しい身体デス!!それとこちら、全使用人用アップデートディスクですので、お二人にインストールして、作業を行ってくだサイ】
【おや、私達にもですカ】
【アップデートをいち早く、やれってことかだゼ】
ぷしゅうううっとクリスタル上の物の中に何か浮かんだ物体を壊れかけている鏡面ののじゃロリの横に置き、ロロとシーサーにはなにかディスクを手渡す。
どうやらこれがお届け物の内容のようだが、短時間でこれだけ用意するとはフロンお姉ちゃんは凄まじい行動力を持っていたようである。
うん、まぁ大体予想は付いたけどね。実家で幼い時に誘拐を企てた人たちに対して、瞬時に社会的に抹殺したからなぁ‥‥‥誘拐のゆの字が出るよりも早く、話を聞きつけた瞬間にやってくれたあの思い出は強烈すぎる。
とにもかくにも届け物を終えたジェッターはすぐに飛び去り、ロロとシーサーがインストールを行い、すぐに医務室にふたたび鏡面ののじゃロリと新しく届いた体を引き込んで扉を閉める。
「で、あとは待たされるだけか‥‥‥この様子なら、無事に終わるかな」
「相変わらず、フロンお姉ちゃん凄すぎるのよね‥‥‥昔、小さい時にちょっとませて宝石をねだったら、おもちゃじゃなくて本物の、それもギネス級のダイヤモンドを持ってきたぐらいだったものね」
「本当にどういう人なんだよその人」
「「ぶっ飛び過ぎた身内です」」
中三病さんのツッコミに対して、僕等は声をそろえる。
そうとしか言いようがないのだ。爺ちゃんや母さんなども色々とおかしい人がいるのだが、身内の中でもあの人だけは桁外れに凄まじい。
最近はやや疎遠気味とはいえ、うっかり何か願うと斜め上に来るからなぁ…‥‥頼みごとがしにくいのもあり、連絡を取ることはそうしない。
やってほしいことはやってくれるのだが、加減の壁も突き破り、常識の壁も粉砕玉砕してしまうような人なだけなのだ。
それはともかくとして、こちらの方の願い事が叶えられた今、運営に対してのほうもすでに終えている可能性があるだろう。
というかさっき、ジェッターが管理上位権限云々なことを言っている時点で、相当ヤバい目に遭った可能性がある。
その為、何か情報がないのか確認を取ってみたが…‥‥やはり、色々とやってくれていた。
「お知らせ内に出ているな‥‥‥社長交代辞任、一部事業撤退及び吸収、合併された部分もありつつ新規事業に参戦、その他色々と人事異動…‥‥短時間の間に起こり過ぎて、情報がまだまだ出てくるようだ」
「何処かの悪徳会社を、一夜にして乗っ取った話もあったかも。まぁ、ココは悪徳じゃないけど‥‥‥それでも、内部事情を見て整理しているのかもね」
「‥‥‥うん、もうハルさんの身内だからってことで、納得することにしたよ。気にしたら多分負けだ」
中三病さんもツッコミを放棄したが、とりあえず状態としては色々と望み通りになっているようだ。
これで運営側の方も痛い目を見ているのかという疑問があるのだが、社内の人にならば何かしらのダメージはあるだろうし、突然の環境激変は会社にとってかなり苦労するものになるだろう。
そう考えるとこれである程度報復できたのかなと思っていた、その時だった。
プシュー
【ふぅ、あっさりと終わりまシタ】
【完璧に治療、できたのだゼ!】
医務室の扉が開き、先ほどの大治療に比べて比較的早い時間でロロたちが出てきて、無事に成功したという話を受けた。
どうやらこれで、どうにかなったようだし、後は細かい部分の情報をより聞いて確認するだけのようだ。
デウスエクスマキナとか言うような気がしなくもないのだが、たった一つの電話で一気に様々な面倒事が片付いてくれたようで、良かったのであった…‥‥
【でも、まだですネ。起動にエネルギーが足りませんので‥‥‥ご主人様、ちょーっと黒き女神になってくれないでしょうカ】
「え?」
【どうにかできた部分もあるが、多分、それ前提でやっているところがあるようなんだゼ】
「はい?」
…‥‥前言撤回。面倒事、解決し切ってなかったもよう。というか、黒き女神の力が必要って何をどうすればいいんだよ。
全部頼り切りは駄目よ、と言われた気がする。
でももうちょっと、どうにかしてほしかったかな。
まぁ、贅沢は言わないが‥‥‥女神を使う時点で、嫌な予感もするのだが
次回に続く!!
‥‥‥久しぶりに、あの苦労人だしたいなぁ




