ver.3.1-29 こうでもなければ、長旅できぬ
‥‥‥勧誘合戦が行われる中、僕らは魔導戦艦の中で過ごすことにした。
とは言え、ずっと船にいるのは飽きそうな気もしなくはないが、この魔道戦艦は改装によって内部も非常に作り込まれまくっていた。
何しろ、某宇宙戦艦も長旅のために色々とあったぐらいだ。現実の世界で使用人として働く合間に参考資料としてしっかり見ていたロロが改装に携わったのもあり‥‥‥
【ギャベェェェイ!!】
【ユッキー!!】
【【【ダルマーン!!】】】
ルトの放電に対してコユキが指示を出し、呼びだされた雪だるまの姿をした多くの雪兵たちがまとまりあって放電に耐え抜く。
【ユッキユキ!!】
【【ダルッルマ!!】】
そして放電に耐えた後、電撃を出した後の隙を狙ってコユキが指示を出せば、前に出て耐えていた雪兵の後ろから攻撃を受けていない元気な雪兵が飛び出す。
【ギャベェイ!!】
バッシィィィン!!
【【ダルマーン!?】】
だが、電撃だけではなく彼女の足でもあるタコ足が振るわれればあっけなく、雪兵たちはふっ飛ばされてあっという間に全滅したのであった。
「そこまで!!二人とも勝負やめ!!」
【ギャベィ】
【ユッキ】
雪兵が全滅したところで勝負を止めさせる。
【結構出せましたが、まだまだ経験不足ですネ。攻めるのが早かったデス】
【ユキィ~】
「とは言え、雪兵の扱いにも慣れたね。うまく扱えていたし、ルトの方も放電で隙が出来る合間に、物理攻撃での防御手段が出来ていたのが良かったよ」
【ユッキ!】
【ギャベィ!】
褒められて嬉しいのか、にっこり笑うコユキとルト。
そして二人に対して、拍手を皆で送る。
「それにしても、艦内で暴れても大丈夫な模擬戦場とは‥‥‥どうなっているの、これ?」
【衝撃吸収材として、スライムなどからドロップするスライムジェルを詰めてますからね。暴れても艦内に衝撃がいかないようにしているのデス】
「なるほど…‥‥ついでに畑もあったのは?」
【家庭内菜園ならぬ、戦艦内菜園デス。ハウスシステム内も育てられますが、エンジンの発する熱を生かさない手はなかったのデス。それに、その熱を循環させてお風呂場も作ってますので、こちらも入浴が楽しめるようになってマス】
色々と魔改造を施したけれども、全部を無駄なく利用できるように設計されているみたいだ。
戦艦内だというのに、生活スペースがかなり確保されており、大きな家のようにもなっているらしい。
「なんというか、しばらくでなくても楽だなここ」
【場合によっては、籠城戦も可能なようにしていますからネ。魔導船時代の名残として、エンジンが損傷しても動けるように帆船として動くこともできマス】
勧誘合戦の熱が収まるまでのんびり過ごしたいなと思っていたが、かなり余裕かもしれない。
体を動かさないのでなまる可能性もあったが、こういう模擬戦場も設置されたおかげでお互いの手の内を理解し合ったり、組み合わせによって新しい戦術も生み出せるだろう。
外でモンスターと戦う方が経験値も多く手に入るが、仲間同士の模擬戦でもお互い実力が高いせいかそこそこ入りやすく、なおかつコユキの場合この中で一番新しく幼いからこそ、余計に経験が入りやすいようである。
【ユッキユキ♪】
「着実にレベルが上がっているな…‥‥この様子だと、案外早く二回目の進化もあり得るかな?」
兵隊関連のモンスターとしての種族名があるので、進化した場合おそらくは階級が上がったモンスターになるかもしれないという予想は付いている。
なおかつ、吹雪や氷、冷たいものにかんしてに近いとなると‥‥‥考えやすいのは冬将軍だとか、氷大将などのモンスターになるのかもしれない。季節のニュースでよく聞きそうな名前でもあるが、調べるといるらしいからね‥‥‥雪山の方に吹雪と共に出現し、一気に全滅させる恐ろしさもあるのだとか。
とにもかくにも、地道に艦内で過ごしつつ、外の状態も確認する。
現在大空を光学迷彩を使用して飛行している状態だが、下の方はしっかり見れるように艦底部分に潜望鏡が付いており、ここからのぞくことが出来るのだ。
「でも何で、潜望鏡?潜水艦じゃないよね?」
【海底からの攻撃などに備えているのデス。ひっくり返って潜水艦モードも考えていたのもあるのですガ‥‥‥それはまた、次の改装辺りにしたいのデス。気密性をもう少し高めないといけませんからネ】
備え付ける気なのかと思いつつ、覗き込んでいるとまだまだ勧誘合戦は続いているらしい。
ついでにメールの方も確認すると、他のフレンドになっている人たちも勧誘をしたりされたりしているようだ。
「あ、珍しく中三病さんからのメールも‥‥‥何だ、この状況」
かなり久し振りに中三病さんからのメールが来ていたが、同封されていた画像を見て思わずツッコミをいれてしまった。
何やら筋肉質な手足の生えた食虫植物に飲み込まれているようだが、喰われまくっているわけでもなく、他にも似たようなモンスターに囲まれて笑顔の写真である。
あの恐怖の姉から逃れられたのかかなりすがすがしい感じであり、今が幸福とも書いているようだ。
「しかも、場所が裏魔界…‥‥何をどうして、こうなったの?」
【勧誘も人も来なさそうな地ですが、彼にとっては楽園になったようですネ】
前に一度、事故というべきか酷い目に遭って入ってしまったことがあった裏魔界。
良い思い出はないのだが、そんな場所に彼は天国を作った様だ…‥‥たくましいなぁ。
勧誘合戦も何もない地は、その場所にもあったのかと目からうろこが落ちつつ、中三病さんの幸せそうな顔によかったと思うのであった‥‥‥
【でも、これよかったのでしょうカ?】
「何が?」
【この勧誘の時期、裏魔界に逃げ込む人がいるのは予想しやすいでしょウ。だからこそ、勧誘を行う人も猛者を送る可能性があるのですガ…‥‥彼の姉、ティラリアさんが乗り込む可能性は高いですよネ?】
「そう言えばあの人、恐竜帝国ギルドとか作ったって話もあったような…‥‥」
‥‥‥幸せって、案外短いのだろうか?
案外かなり楽に過ごせている現状
けれども、ギルド同士の争いの時は迫ってきていた。
そしてついでに、平穏にも影が・・・
次回に続く!!
‥‥‥なんか増えていた。




