ver.3.0-15 収まらぬなら、むしろ爆発させろと
‥‥‥休日だったので、僕らはログインする。
けれども本日は、ただログインをしてやるだけではない。
「‥‥‥孵化準備完了、出したらすぐにぼわっと出てくるのか」
「時間経過後、自動で生まれるんじゃなくて出すことででるっぽいね?」
一応、変なことにはならないように、より大きな変なものを用意しておいたほうが良いかもしれないと考え、孵化させる場所は選んでいる。
「でもなんでここにしたのじゃよ?他にもっといい場所があったじゃろ。そしてそろそろ離してほしいんじゃけどなぁ!!久しぶりに来たと思ったら何じゃこの仕打ちは!?」
「え?だって出てくるのがランダムだから、下手にやばいのが出てきたときにどうしようかなと思って、考えた結果のじゃロリのもとなら大丈夫じゃないかなって思ったもん。いざとなればフォレストガーディアンを出してくるしね」
「それは試練とかやる時限定なのじゃが!!あんなもの、めったにやることもないんじゃが!!」
「そうなの?へー、お兄ちゃん交流関係広いというか、こういう可愛い女の子と知り合いなのも羨ましいなー!!」
「ぎゃあああああああああ!!しめつけがぁぁぁぁ!!」
久しぶりに出会ったとたんに、トーカによって抱き死め(誤字にあらず)られているのは、エルフが住まう村の、その奥の方にある祠を主な拠点にしているのじゃロリことレティア。
結構長いこと会っていなかったような気がするのだが、月日が経過してもその容姿に変わりはなく、やることなすことが面倒事引き起こし厄災マシーンだったけれどもトーカにとっては可愛いものとしてストライクだったらしく、速攻で捕まったようである。お仕置き系統の称号もないはずなのに、のじゃロリにかなりのメンタル的なダメージもあるようだ。
「まぁ、それと解説もできたらお願いしたいと思ったんだよね。エルフってこう、色々と知っていそうなイメージがあるからね」
「お主ら、プレイヤーじゃと魔物図鑑があるじゃろうが…‥‥というか、ちょっと見ぬ間に増えているのぅ」
【オォォン?】
ぎちぎちと拘束から逃げ出そうと抵抗しつつ、ちらっとアリスを見るのじゃロリ。そう言えば、最後に会ったのはまだルトが加入したばかりのころだった気がする。
そしてついでに、欲望戦隊もとい欲望五人衆の原点というべきか作り出したタローンとも遭遇した時だったような‥‥‥悪の組織が潰れたけど、あの五人ってクビになったという認識で良いのだろうか?
とにもかくにも今はそんなことはさておき、これから卵を孵化させるというイベントが待っている。
いざという時の対応のために来たのもあるが、こういう幻想的な森の中でやったほうが、どことなくイメージ的に似合っているので、合わせるために訪れたというのが真の目的だったりするのだ。
「とりあえず、僕とトーカの持っているそれぞれの卵を同時に出すか。すりこみとかはないんだっけ?」
「無いはずだよー?きちんと卵を持っているプレイヤーに確実にテイムされるんだって」
「新しい命の誕生は喜ばしいことじゃけど、この状態はもうちょっとどうにかならぬのかのぅ?いい加減にせんと、出禁にするのじゃが」
「されるんだったら、悔いのないようにもっとやるよ?」
「…‥‥やるのも地獄、やらぬのも地獄って、何じゃよこの仕打ち」
諦めろ、のじゃロリ。それが、妹と出会った可愛い者の末路なのだから。
なお、ロロとシーサー、二人の使用人の姿を見ないが、実は今ハウスシステムのドッグ内にて共同で作業を行っているらしい。
というのも、クエスト達成によって二次改装が行われることになった魔導船だが、シーサーがロロに対して使用人としてのなじみだから、作業を手伝うと言って場から離れたのである。まぁ、彼女の使用人仲間と言うのであればとくに気にもしないが、できればやらかし過ぎないように見張ってほしいとは思う。
「無理だとは思うなー。だって彼、面白い事は徹底的に面白くする主義で、やらかしを助長する可能性もあるんだよ?」
「‥‥‥‥もうどうにでもなれ」
多少、諦めていたりするので気にすることもあるまい。というか、技術を底上げして今度は何がどうなるのかが考えない方が幸せだろう。改装予想時間だと、この孵化の1時間後ほどに終わるらしいけれどね。
そんなビッグな考えないようにしているとんでも事態を目にするのであれば、先にまだ心の準備がしやすい卵の孵化を見たほうが良いと気持ちを切り替えつつ、同時に出す用意をする。
「それじゃ、やるよトーカ。合図として、3」
「2」
「1」
「「それっ!!」」
同時に動き卵を出した途端、カッと光がその場をあふれ出た。
眩しくて目がくらみそうになったが、そのどさくさに紛れて素早くのじゃロリがトーカの腕から抜け出し、一番隠れやすそうなルトの触手へと避難する。
トーカの二つの卵、僕の一つの卵から生まれたのは…‥‥
【パォォォォォォォォォォン!!】
【アンギャァァァァァアァス!!】
【スノー!!】
大きな鋼色をした象に、なんか放射線を吐き出しそうな怪獣に、氷の結晶のような物体。
三者三葉、それぞれ違う姿のモンスターが誕生したようだ。
―――――
「アイアンエレファント」
鋼の身体を持つ象の姿をしたモンスターでありつつ、まだ幼体の姿。
幼いころは鉄壁の防御で身を固め、次第に強固な守りは攻撃へと転じていく成長を辿っていく。
「ドラゴダンス」
ぴかぴかと体のあちこちを光らせ、踊る怪獣のようなモンスターでありつつ、まだ幼体の姿。
巨大化する道を選ぶか、さらなる道の道を行くのか、先を予測するのが非常に難しい成長をしていく。
「スノークリスタル」
氷の結晶の姿をしたモンスターでありつつ、まだ幼体の姿。
全身から出る冷気はまだ幼いのでひんやりとさせる程度だが、成長すれば周囲を凍てつかせることが可能になる道を選ぶことができるようになる。
―――――
「あー、産まれたての幼体だからか、図鑑説明もなんか初期っぽい感じの説明になっているようだね」
「なんで象とゴジラみたいなのが私のほうなの!?お兄ちゃんの方が、まだ可愛い結晶じゃん!!」
‥‥‥どうやらアイアンエレファントとドラゴダンスはトーカの方で、スノークリスタルは僕の方らしい。
ついでにログにも出てきたが、名前を付ける必要があるようだ。今までネームドモンスターばかりだったから、これはこれで新鮮かもしれない。
「まぁ、また次の機会まで頑張ればいいと思うよ。それに、頑張って育てたらもしかするとマリーたちのようになるかもしれないよ?」
【シャゲェ!】
もともとマリーたちだって、蛇やパンサー、馬のような姿をしていたし、最初からこの見た目ではなかったのだ。
「なるほど‥‥‥だったら、可愛くなるように育てるね。お兄ちゃんのところの子のようになるのを目標としましょう!よろしくね、メーちゃん、ジラゴン!」
【パォォォン!】
【アンギャァァス!】
気分を変えてすぐに名付けをして、そう口にするトーカ。安直な名づけのような気もするが、分かりやすい方が良いのかもしれない。
「そう考えるとこっちは‥‥‥雪の子だし、スノーは安直すぎるから‥‥大雪、吹雪、雪崩‥‥‥それよりももうちょっと小さく、『コユキ』で良いかな?」
【スノ♪】
どうやら気に入ったようで、コユキは嬉しそうにくるくると宙を舞う。
新しいテイムモンスターが入ったことに、全員歓迎しつつ…‥‥この後にやる、二次改装お披露目に向けて覚悟を決めるのであった。
「良いイベントがあった後に、とんちきすぎるイベントかぁ‥‥‥」
「お兄ちゃん、遠い目をしているけどそんなにとんでもないことになるの?」
「なるの?じゃなくて、なるんだよ。絶対にというか、想像を超える様な事をしでかされるなぁ‥」
「‥‥‥のぅ、もう関係ないから出て行って欲しいのじゃが。って、あれ?もしかして出番これだけにされぬのかのぅ?」
まだまともなモンスターが出て内心ほっとしていたりする。
でもこのあとのイベントへ、驚愕を使いきれなかったのはどうだったのか。
心構えをしっかりしないと、大変なんだがな‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥少なくとも、何処かのハロウィンの重ねた建物よりはましだと思う。分かる人には分かるけど、最初聞いたらなんじゃそりゃと言いたくなる、あのレベルを目指したい。