ver.2.6-53 忘れないように、出港準備
>アップデートが行われ、いくつかの寄せられていた要望に答えたものになりました。
>特殊な事例が先日発生したため、課金専用の特殊ルームを開設いたしました。
>その他、バグの改善や細かい部分に関しては詳細をご覧ください。
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‥‥‥特殊な事例と言うのはおそらくだがあのタローン生贄事件の事だろうと思いつつも、あの出来事を闇へ葬り去り、忘れ去っておこう。
あの飲み会での悲惨な現場を思い出したくないので封じつつ、今はそんな事よりも、ようやく出来上がったこちらの方に意識を向けたい。
「というかロロ、帆船の形を残すとか言っていたけれども…‥‥帆船?なんかこう、後ろの方に結構大きなエンジンらしき物体が付いているのは気のせいだろうか?」
【気のせいデス。あれはエンジンではなく、混合性爆裂薬の爆風を後方に撃ち出す、独自の推進機関なのデス】
結構物騒な推進機関というか、どっちにしろジェットエンジンのような代物じゃないかとツッコミを入れつつも、僕らは改装が終わった船‥‥‥以前、キャプテン・グレイより譲り受けた魔導海賊船の変わり果てた姿に目を通していた。
前はもっとこう、ボロボロの空飛ぶ幽霊船であったはずの船は今、ロロの手によって大改装が施されており、新品同然に作り直されていた。
ペンキも塗り直されてコケやフジツボなども取り除かれ、キラキラと照らされた明かりによって輝き、新品だと言っても違和感はない。
だがしかし、あの幽霊船の建造当時の姿に戻したのかと言えばそうではなく、ところどころにSFチックなものが増設されており、どちらかと言えば宇宙船と言った方がしっくりくるかもしれない。そう言えば、前に限界高度の話とかあったが、その内宇宙でも出るのかもしれないので、それに合わせて作ったのであればまだ良いのかもしれないが‥‥‥いや、早すぎるか。
一応、大部分は木造のままとは言え、結構頑丈な材木を集めてきたようで耐久性能は改装前に比べて飛躍的に上昇し、防火・防水・防爆などが向上。
また、元々が海賊船と言うのもあって船の側面部や甲板上に大砲が設置されていたのだがそちらも一新しており、より最新式のものとして船上にしっかりと固定されつつ何やら砲弾を入れるための場所がない代物が幾つかあった。
【MPを消費しての魔弾発射装置を備え付けまして、あとは攻撃用混合爆裂薬による砲撃や、他の方々の攻撃を集中して打ち出せる機構なども備え付けまシタ。例えば、アリスの火を入れたら増幅し、超強力な火炎放射器にもなるのデス】
「攻撃性能上げ過ぎてないか?」
【まぁ、一応技術力の問題もあって爆発的に上がったわけではないのですけれどネ。機械神の方にいる兄から話を聞きまして、ちょっとここで使える技術を教えてもらったのデス。個人的には波ど…‥‥いえ、まだ早すぎる技術なので確立していないものがあったのですが、きちんとしていれば備え付けたかったですネ】
今さらっと、某主人公補正100%宇宙戦艦のエンジンらしい発言を出しかけていなかったか?あれって現代の技術で不可能な気がするんだけれども、それをやろうとしているのか?
とにもかくにもロロ曰く、ここまでの魔改造を施せているのは、以前のレイドバトルでボスとして招集された際に顔合わせした機械神の人が雇っている使用人から情報を得てやったらしい。
あのプレイヤーはプレイヤーで頭がどこかおかしいのか、現実での技術力も結構反映されやすいアルケディア・オンラインの世界で結構進んだ工業技術を持っているようで、その人に雇われている使用人も技術を学んでおり、共有したのだとか。
それはちょっと技術の盗用に当たらないかと不安にもなったが、一応伝えて許可は貰っているらしく、問題にはならなかった。それどころかより進んで技術を提供されたので、ならばそれを全部活かしまくってみた結果…‥‥この惨状になったようである。
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『魔導海賊船グレイ号』⇒改め『第一次改装型魔導海賊船グレイ号』
元々の幽霊船時代のダメージが修復され、改装された魔導海賊船。
船長のMPをわずかに吸収して航行が可能であり、改装によって各種性能が飛躍的に上昇した。
古くなっていた部分を削り取り、入れ替えた結果全長が10メートルほど短くはなったが、その分小回りが利きやすくなっており、船自身の意思によってより細かい動きが可能となった。
‥‥‥改装時の恐怖によって恐怖耐性も獲得し、搭乗時に『恐怖耐性:強』のバフがかかるようになった。
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「ねぇ、ロロ。なんか恐怖ってあるんだけど何をしたの?」
【…‥‥ただの修理ですヨ】
目を思いっきり背けたロロだが、本当に何をしたのだろうかこのメイド。船が恐怖するって、何があったのか聞きたいような怖いような。
ちなみに、幽霊船の時の説明でモンスターに近い存在だったらしいが、一応船だからなのかアイテム扱いとなり、テイムモンスターとは異なるカテゴリーに入るため、テイムモンスターを全員出していても問題はないらしい。使用人といい、何と言うかちょっと仲間を増やす部分での穴があるように思えるのだが、問題がないのであれば良いだろう。
【シャゲシャゲ、シャゲェ?】
【第一次が付くなら、まだ予定があるんじゃないかト?ええ、予定はありますが、現状はこれで精一杯デス】
そしてまだやる気なのかと思ったが、一応当分ないらしい。技術力や材料、後はメタいところで言えばアップデート待ちな部分もあるかもしれないので、ツッコミは放棄する。
何にしても、この船の改装は大体終えたので、これでようやく魔界での探索に乗り出せるだろう。空飛ぶ災害だろうが、相手と同じ空という場所にいればこちらの攻撃も通用しやすいし、魔界だけじゃなくて天界でも扱えるのであれば、更に行けるところが広がってくる。
他にも色々な使い道が存在しているだろうが今は魔界の方に意識を向けて、ようやく探索の再開が出来るのかと、僕は安堵の息を吐くのであった…‥‥
「…‥‥それにしても、船自身の意思があるらしいけれども、これだけ大きな船だと操船が大変そうだよなぁ」
【あ、そこは安心してくだサイ。古くなった船壁を再利用して、木製の船員を何人か配属していますので支障はないはずデス】
「そっか、船員を作って配属‥‥‥え?ちょっとまって、木製の船員って何?」
乗り込む前からさらに不穏そうな言葉が聞こえたんだが。
え?これ本当に乗り込んでも大丈夫なのか‥‥‥?
ほんのちょっと、このアルケディア・オンライン内ではオーバーテクノロジーなものが施された気がするのだが、ツッコミを放棄しよう。
この口ぶりだと今後さらなる魔改造が待ち受けている未来が見えるし、ツッコミ過労死しかけない。
ひとまず今は、当初の目的であった探索を再開することを考えるのであった…‥‥
‥‥‥流石に〇動エンジンは搭載できなかった。一応、技術はまだまだなので、ちょっと残念。ロケット花火のようなものも出て来たけれども、発展途上なのです。