ver.2.5-45 以前の奴と、比べ物にならないだろう
【ホネェホネェ!!】
【ホネェェェェ!!】
迫りくる骸骨たちだが、その動きは他のアンデッド系とはちょっと違っていた。
今までのであれば自由気ままというか、勝手すぎるような動きで、バラバラになってやって来るので対応しやすかったのだが、ここの奴らは違うようで、しっかりと単体で受けることが無いように常にある程度のまとまりを持って攻撃を仕掛けてくる。
「よく訓練されたスケルトンのモンスターというか、いつぞやかのキングリッチが出した軍勢より手ごわいかもね!!」
【シャゲェェ!!】
【ガウガーウ!!】
こういう幽霊船だからこそ、幽霊じみた船員がいるのはお約束かもしれないが、こうやって実体のある相手だとかなり面倒でもある。
剣を持って切り付けてきたり、甲板上の大砲を撃ってきたりと、それでいて自分達の船に被害が出ないように計算しているようで、油断できない。
けれども、僕らの方も目には目を、歯には歯を、連携には連携をという事で負けてはいない。
【ギャビィィィ!!】
【バルルルルルゥ!!】
ルトの電撃を槍に纏い、投げつけて攻撃するセレア。
【オォォォオン!!】
【手榴弾を着火しやすいデスネ】
ロロが投げつけた手榴弾を、吐き出す黒い焔で着火し、的確に爆発させるアリスと、組み合わせを色々変えてもお互いのやり方をすぐに倍増させる連携手段は、日ごろの鍛錬の賜物だろう。
「でも、手榴弾をつくるプレイヤーがいるなら、バズーカ砲とかも作れそうなものなんだけどなぁ…‥‥屋台で売ってたやつに、なんで状態異常『ウルトラバカァン』にする爆弾も売っていたのやら?」
なお、道具のいくつかは僕が作ったモノではないが、他のプレイヤーが作って売っているモノだけれどもきちんとその性能などは実証済みで、定期購入を約束していたりする。
‥‥‥まぁ、その状態異常爆弾を真似して作ったら、状態異常『たらこ』にする爆弾という意味が不明なものが出来上がったのだがそれは永続封印予定である。どう考えてもろくなことにならない。
そうこうしているうちに、骸骨たちをある程度粉砕したところで動きが変わった。
【ホネホネェ!!】
【ホホホホネ、】
【沈マレェ!!テメェラァ!!】
【【【ホネェ!?】】】
突然響き渡った声に対して、一斉に骸骨たちの動きが止まった。
一瞬誰かが叫んだかと思ったが、声の質感から考えると人じゃなくてモンスターの類のようだが‥‥‥っと、考えている間に声の主が姿を表した。
船の奥の方から出て来たのは、海賊帽を被った骸骨。
ただ、周辺の奴らとは異なり、立派なサーベルを構えていたり、宝石のついた指輪をしているなど少々豪華な姿ではある。
【アンタラカ?コノアタシ、『キャプテン・グレイ』ノ船デ暴レテクレタノハァ!!】
「キャプテン・グレイ?」
【そう言えば、賞金首系のNPCのリストに‥‥‥ありましたネ。未だに捕まってない、大海賊にして100年ぐらい前の人物として載ってまシタ】
「いや、100年前の人物が今も賞金首って‥‥‥」
【エルフの人だと、かなり寿命が長いので適用されるようデス。とは言え、目の前の状態を見ると既に死亡してアンデッド系の『キャプテンリッチ』になっているようデス】
―――――
『キャプテン・グレイ』
アルケディア・オンライン内の時間にておよそ100年前に暴れたという、女海賊。
元々はとある国の令嬢だったそうだが、性分に合わず海に出て、海賊家業を起こした。
その結果、人柄に惹かれて多くの船員が集い、一大海賊になった。
『キャプテンリッチ』
リッチの中で、キングの道を選べる器ではあったが、船乗りだったからこそ選ぶらしいアンデッドモンスター。
キングリッチ同様に多数の下僕の召喚を可能にしているが、こちらはかつての船員たちを召喚して船員にしており、生前の結束力によって船員の質が異なっている。
強い結束を持てば持つほど生前を超えた力を振るいやすく、その逆に仲違いをしまくればしまくるホド生前以下の力を持つ羽目になる。
―――――
女海賊だったのかという驚きはさておき、船員の質から考えると生前はかなり名の知れた大海賊だったのだろう。いつぞやかのキングリッチよりもはるかに人徳がありそうで、強さも比べ物にならないかもしれない。
いや、比べるのも失礼かもしれない。あのキングリッチ、混戦のどさくさで逝ったからなぁ…‥‥あれよりもはるかに強そうだ。
「というか、まともに喋れているよね?ちょっとおかしいけれども」
【生前が一応、人の区分だからでしょウ。マリーたちのようにもとからモンスターとは異なり、きちんと言葉をどう発するのかという事を覚えているのかもしれまセン。骨だけなので、やや発音がおかしいかもしれませんが、それでも会話が可能なほど知性もあるようデス】
モンスターとは言え生前が人でもあるため、会話も可能なようだ。
でもそれだと、あのキングリッチも確か一応人になるのだが…‥‥うん、やっぱり元々の器の差もあるのかもしれない。それだけあれは外道だったのか人の道を外れ過ぎていたのか‥‥‥とにもかくにも、そんなことはどうでもいいとして、この状況はどうしたものか。
ひとまず生前の名称で呼ばせてもらうが、キャプテン・グレイが出てきたことでちょっと状況が変わりそうで、
【ヤロウ共!!腑抜ケズニヤルゾ!!アタシタチノ船デ、相手ニ好キ勝手サセルナァ!!】
【【【ホネェェェ!!】】】
「違う、火に油を注ぎに来ただけだこれ!?」
‥‥‥より激戦が繰り広げられそうなのであった。止めに来たんじゃなくて、自ら出向いて指揮を取る人だ、このキャプテン・グレイ。
ただの集団よりも、より指揮が取れる程手ごわいかもしれない。
それでも、これはこれで面白いだろう。
というか、絶対に前のリッチ以上に慕われているような‥
次回に続く!!
‥‥‥これが、人としての差なのか