ver.2.5-43 魔界のために、大海を行き
‥‥‥偉業を成した友人が出来たのは良い事だろう。しっかりとそれに見合った称号も得られたようだし、実験がやや失敗気味だったとはいえ、それでも新しい可能性が開けたのだから無駄ではなかった。
【遠い大陸に墜落して、戻るのに苦労しているというメールに関してはどうですカ?】
「全力で見て見ぬふりで」
何にしても、大空を行く手段としては何も作るだけではなく、やはり元からあるものを利用したほうが良いという事で、ファンタジーを主軸に置いたゲームならば、この海に大空も行けるモンスターがいるかもそれないと希望を抱いたのだが…‥‥
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「ひでぇぇぶぅぅ!!」
【シャゲェェ!!】
【ガウガーウ!!】
「進めば進むほど、どうして海賊が釣れるのやら」
海上を移動している時に遭遇することのある海賊イベントに、現在何回も遭遇しており、その度に海賊たちの断末魔を僕らは聞いていた。
いやまぁ、他のプレイヤーも良く乗る定期船タイプではなく、今回は自分たちで自由に探してみようと思い、以前あったレイド戦の報酬で得ていたALをつっこんでプレイヤー用の海上移動船を一隻購入していたのだが、それに乗ってみると思いのほか遭遇しまくっているのである。
個人で海上を移動できるようになっていたが、どうも海賊の遭遇率は上がっているらしいが、こうもほいほいやってくると退治する方も大変だ。まぁ、全員強いしそんじょそこいらの海賊には簡単に負けることはないのだが、絵面的にどっちが海賊なのか怪しくなりそうだ。悪の組織の次に女海賊団とか言われないよね?
「くそう!!なんでこの船の奴らは強いんだよ!!」
「おかしらぁ!!全滅してしまったですぜぇ!!」
「ぬわぁにぃ!?」
っと、どうやら今回襲撃してきた海賊の頭と思われるコテコテの海賊の格好をした男性が叫ぶが、そんな事をしている暇があればさっさと逃げたほうが良いような気がする。なーんかこう、遭遇していると分かるが海賊によって質が違うようで、手ごわそうな者から凄い典型的な三下風の海賊団もあるようで、今回は後者の類のようだ。
【ギャビィ!!】
「んぁ?なんだこの吸盤あ、しゃしびれれっれれれれっれれれれ!?」
背後を取ると気づく奴もいたが、今回は思いっきりハズレの部類のようで、あっけなく討伐を終えてしまった。歯ごたえの無い奴が相手だと微妙過ぎて邪魔にしかならない気がする。この辺りは運営に改善の願いを出しておくべきか。
そう思っていたが、ふと海賊ならばこの辺りの海に関して知っていることが多いのではないかと考えついた。周辺の事を聞くならば、その現地民に聞くのがまず手だからね。相手が海賊だろうと情報を聞き出せないか‥‥‥あー、いや、僕自身が話すように聞いても、無駄かもなぁ。
【そういうわけで、私がご主人様の代わりにお話をいたしまシタ。皆さま、快く協力してくれまして、有益な情報の確保ができまシタ】
「有益な情報、あったのかな?」
適当な島の港につき、海賊たちを引き渡す中、ロロから僕はその情報を聞いた。
こういう交渉事には使用人だからこそできる事もあるようで、かなり多くの情報を引き出すことに成功したみたいだ。おかげでこの先何を狙えば良いのか分かりやすくはなったが、どうやって情報を聞いたのかに関してまでは細かく聞かないことにした。
だって、あの海賊たち真っ白になっていたしね。NPC何だろうけれども、心がぼきぼきに折れる様な目に遭っているかのような状態になっていたし、どの様なことが起きたのか想像したくはない。それとひとつ驚きだったのは海賊たちの中にはプレイヤーも一部混じっていたようで、しっかり運営に取り締まられる予定である。
何にしても聞いた情報によれば、今回の海賊たちはやや三下気味のものだったとはいえ、弱い視点だからこそ強者を知る事もできたらしく、面白い話があった。
「ココから東の海域、霧の深い海域で夜の時間帯に、月明かりに浮かぶ物体の情報?」
【ハイ。間違いなく海にいたはずですが、月が出ると同時に浮上し、海上の宙を漂うように動き、進んでいたという情報デス。サイズからクジラのような何かが飛んでいたと言っているようですが、その情報から考えると宙を漂うような巨大なモンスターがいるのだと思われマス】
月夜限定なのかが気になるところだが、宙を漂う大きな物体という点は良い情報だろう。僕ら全員が乗っても漂えそうな、そんな巨体のものがいるのであれば非常に気になるところだ。
もしもテイム可能なモンスターの類であれば、魔界のあの空を支配する災害のようなモンスターたちにも対抗しやすいし、有力すぎる情報である。
―――――
>NPCから情報を聞くことで、解放条件が達成されました。
>特別クエスト『月夜に浮かぶ怪物体の謎を追え!!』が受注可能です。
『月夜に浮かぶ怪物体の謎を追え!!』
人里離れた、静かな霧の海。
その海に嵌夜中に、突如出現する巨大な影があり、何者なのかは誰も分からない。
その謎を探り、報酬を手にしよう!!
>受注しますか?
―――――
「ん?これ、受注可能なクエストになるのか」
NPCとの信頼度を上げて解放されるクエストなどはあったが、こういう形で解放されるものもあるらしい。まぁ、現地民に聞けば解放される類であり、丁寧なお話を海賊たちからしてもらうなんてことは普通はないのだが、どうも達成したようで出てきたらしい。
思わぬものが出て来たが、クエストとして出てきて報酬もある以上、受けないという手はないだろう。
「それじゃ、このクエストを受注してみようか。行くだけの価値もありそうだしね」
具体的なクエストクリア条件などが出ていないが、こういうものは直接出向いて見ないと分からないことが多い。
そして今後のことも考えるのであれば、今は少しでも情報があればいいと思い、僕らはそのクエストを受注することにしたのであった‥‥‥‥
「それにしてもロロ、使用人が何で海賊たちから話を聞き出せる技能があるんだ?」
【使用人たちには様々な専門分野を教えてくれる方々がいまして、その中でも特別な講師から受講したことがあるのデス。黄色の髪をたなびかせ、モーニングスターや電気鞭を扱う様は、ちょっと狂気もとい猟奇的でしたが、中々ためになりまシタ】
‥‥‥その講師、大丈夫なの?なんかこう、女王様的な危ない人じゃないよね?
ちょっと謎な講師の情報が出て来たが、それは置いておこう。
今はこの出て来たクエストを確認して、魔界攻略の鍵になるかどうか見るのだ。
しかし、空飛ぶ怪物体‥‥‥巨大なクジラとかなのかな?あるいはシチュエーションから考えて幽…‥
次回に続く!!
‥‥‥ちらっと最後の方に出て来たが、どうやら元気にやっているらしい。
でも何でこればかりが目立つのか…‥‥他もちょこっと出したいな。
既にだいぶ、侵食されているとしか思えないが。