ver.2.5-39 中型アプデの、ちょっと前に
‥‥‥アルケディア・オンラインの中型アップデートが帰宅したら始まるという事で、結構楽しみにしている人が多いだろう。
大型アップデートほどではないだろうけれども、こまめなアップデートよりも目に見える変化は多くあるだろうし、新しい場所が開けるのかもしれない。
素材、モンスター、スキルに称号、料理やドロップアイテムなどにも新しいものが追加されるだろうし、もしかするとエルフやドワーフのような新種族が出てきてもおかしくはない。ファンタジーを元にして作られているのであれば、予想できるのは獣人、天使、悪魔、魚人、メカ…‥‥一番最後のは機械神のレイドボスの例もあるので可能性が最もあるかもしれないだろう。
だからこそ、その新しい要素の数々を楽しみにして目の前の仕事を素早く片付けるための原動力にして、仕事に励むことが出来る。そう、例え…‥‥
「‥‥‥目の前で、黒魔術の儀式っぽいものが始まっていても気にしないでいよう」
「そう、誰も目にしていない、目にしていない」
「色々と混沌としているけれども、誰も気にしない」
ぼそりとつぶやいたが、同僚が全員同意しつつ仕事に集中することでその光景から目をそらす。
というか、この会社って一応ホワイトだけど、ここまで自由にさせ過ぎるのはいかがなものなのか‥‥‥いや、気にしないでおこう。あれはもう、自業自得の結果なのだから。
「いあいあいあいあいあいあ」
「あぶだかたぶらぶらかたぶらあぶらあぶら」
「ほんにょんもんげぇどんめあいやひーまいやひーおーん」
「ぐむー!ぐうー!!」
びたんびたんと打ち上げられた魚のごとく、書かれた陣の中央で跳ねる太郎丸こと生贄。その周囲は女性社員(一部男性)が取り囲んでおり、怪しい踊りや各々独自の呪文を唱えてぐるぐると回っている。
一見すると統一性のない黒魔術の儀式に言えるが、生贄を生贄として扱う事は統一しているようだ。
何だろうなぁ、この光景。これはこれで、アルケディア・オンラインの世界でならまだあり得なくもないけど、ゲームでもない現実の世界でこんな怪しい儀式はあり得ないと言いたい。だが、起きているのだからどうしようもない事実として受け止めるしかないのだろう。
ちょっといじめのように見えなくもないが、これって太郎丸の自業自得だからね…‥‥以前はずんどこずんどこと怪しい民族儀式みたいになっていたが、ちょっと西洋風に進化したのかもしれない。
何にしても、下手に関わる意味もないので、僕らの方では仕事に集中しつつ、途切れそうになれば関係ない話題に切り替えて見て見ないふりを貫く。
「それにしても、最近のニュースとかでみるけど、ゲーム関係の発達のせいなのか他の技術も出てきているよなぁ」
「そうそう、なんかどこかのオンラインゲームに負けじと技術開発が進んでいるようで、色々と最先端のものが登場しているようだぞ」
「そう言えばそうだよなぁ、やっぱりあのゲームは面白いけど、それ以外にもやってほしい会社もいるのだろう」
「この間はレイドバトルとかやっていたが、個人的には黒き女神さまも良かったなぁ」
「ごふっ‥‥‥あっつ、コーヒをこぼした!!誰か拭くものもってないか?」
「ああ、ありますよ。どうぞどうぞ」
‥‥‥危ない危ない、ちょっと動揺しかけたせいで、パソコンにかかって駄目になるところだった。というか、思いのほか、身近にやっている人が多くなっているな。
「ああ、黒き女神様かぁ?個人的には怪獣バトルもあったあれも良かったがな。映画とかでは味わえない、大迫力だったぞ!」
「こっちはそう言えば、機械神にあたったなぁ…‥‥弾幕がすごくて、吹き飛ばされる人が多かったっけ」
それもそれで大変だったなど、何かと苦労話で盛り上がり始める。
レイドボス側に参加していた僕としては、ちょっと共有しにくいけれども、こうやって楽しんでいる人も多かったんだなと思えるだろう。
「そして今日は中型アップデートかぁ‥何があるのか、楽しみだな」
「そうだな‥‥‥お、そうだいっその事、今日はやっているメンツで集合してみないか?」
「おおいいなぁ、それはそれで楽しそうだな」
基本的にプレイヤーは現実感での関わりとかも考えて、多少は会わないようにしているのだが、それでも誰が何をやっているのか気になる人もいるらしい。
一応、自由にできるので集まる必要もないのだが、なにやら集まって盛り上がろうとしているところもあるらしい。
「そう言えば、太郎丸さんも先日からやっているという話があったけど…‥‥あの人は誘うか?」
「あー…‥‥いや、やめておこう」
ちらっと全員太郎丸の方を見たが、誰も助けの手を差し伸べることはせずに、見なかったことにするらしい。
関わらないほうが吉だと全員判断しつつ、帰宅までに仕事をやり終えようと作業を黙々と続け始めるのであった。
「おごぉぉぉぉぉ!!」
【ギャビィ!ギャビィ!!】
【ガウガーウ!!】
「皆、ただいま。ちょっと色々やってから、ログインするよ」
仕事を終えて帰宅すると、出迎えてくれたのは玄関にも置き始めた、アルケディア・オンラインと同期して繋がる小さなホログラム装置。
この中にはテイムしたモンスターたちが浮かび上がり、現実でのプレイヤーの様子を確認し、一緒に遊べるようにする機能があるらしい。以前に購入したデフォルメされた格好で出る箱庭の追加装置でもあるようで、購入履歴があれば驚きの50%オフで購入可能となり、迷うことなく選択したのである。
『お帰りなさいませ、ご主人様。プレイ前に、お夕飯が出来ておりますので、そちらをお先にドウゾ』
「ああ、ありがとうロロ」
使用人を現実に出す装置のほうも地道にアップデートが続けられているようで、現実での料理を行ったり、部屋掃除のさらに細かい部分をこなせるようになったりなどより便利になっている。
聞いた話だとこの技術を生かして、介護施設での介護要員を頼んだり、あるいは独り暮らしの中で偏りがちな食事を健康的に変えたりすることもできるため、購入する人も増えたので、結果として開発費なども向上し、よりアップデートをできるようになったらしい。
現実にちょっとずつゲームが侵食しているような気がしなくもないが‥‥‥まぁ、危険性が無いなら良いだろう。もちろん、やらかそうとする輩も出ていたようだが、そっちはしっかりと対策が取られているようで、今のところ大きな社会問題になっていない。
しいていうのであれば、家事を任せきりになりそうなので、家事をやる力が失われないように調整してほしいという話も出ているそうだが…‥‥それは一応、購入者の意思次第だろう。ああ、僕は一応、自炊が出来るように時々ロロには休んでもらっている。その時はすっごい休みたくないような不服な顔を浮かべるけどね。
‥‥‥ネット上の画像だと、どうも使用人たちは休むのを嫌う傾向にあるようで、その不服顔集で盛り上がっている人たちもいるようだ。
何にしても、夕食と風呂を済ませて、ログインを開始する。中型アップデートでどう変わるか非常に楽しみで、ワクワクしてくる。
「それじゃ、ログインっと!!」
目に見える変化が起きただろうと期待して、今日も僕はログインをする。
アルケディア・オンラインの世界はまだまだ広がるようであった…‥‥
「しかし、本当に最近、技術が出てきているような…‥‥こんなに、進歩することってあったかな?」
ちょっと珍しい、現実でのお話。
でも以前より、確実に進化はしているだろう。
怪しい謎の儀式もパワーアップしているようだが‥‥‥何もなかった、良いね?
次回に続く!!
‥‥‥じわりじわり、色々と出てきたようだ。