悪女で毒婦の恋心。
いつも読みに来て下さってありがとうございますですv
誰も私の恋心を信じない。
贋物だって決めつける。
金目当て。地位目当て。悪女。毒婦。
それはもう言いたい放題。
だから、面倒くさくなってしまったの。
もう、その通りでいいじゃない? って。
だって。私は知ってる。
私の恋は本物だって。
多分、王子様にだって伝わってる。
伝わっているといい、そう願っている。
王子様の優しくて蕩ける様な笑顔が今でも忘れられない。
『絶対に、リィズを僕のお嫁さんにする。約束だ』
そう言ってくれた王子様は、二度と私の前には現れなかった。
その男爵令嬢は、王太子と両想いになれたと思っていた。
王太子は幼い頃からの婚約者に婚約破棄を突きつけ、男爵令嬢を選ぶと告げた。
その腕に守られて、両想いになれたと思ったのに。
王子様は結局、婚約破棄できなかったようだ。
そうして王宮に呼び出され連れて行かれたのは国王陛下と王妃様のいるお部屋だった。
そこで、私の家の爵位が低くて、私自身の教養が低いからという理由で。
私の事は愛妾にしかできないと告げられた。
愛妾ということは、王子様は正妃様は別に迎えるということで。
私には何の権利もなくて、王子様の愛が無くなったらそこで終わり。
私との間に子供ができてもその子は庶子で、王子様の本当の子供として認めて貰うには、私の子供を正妃様へ養子に出さなければならないんですって。
両想いになったはずなのに。
王子様を正妃様と分け合わなくちゃいけないなんて。
それもどう考えても半分こじゃなくて、ほんのちょこっとだけ端っこを齧らせて貰える権利って感じじゃない?
そんなの多分きっと、…間違いなく気が狂う。
気が狂った私はきっと王子様に捨てられて。
私も、王子様自身も、もしかしたら生まれているかもしれない子供まで全部ぜんぶ不幸にする。
だから、国王陛下に
「王太子を諦めてくれたら、なんでもいい1つだけ願いを叶えよう」
そう言われて、私はおとなしく頷いたの。
でもあれね。
なんでも1つだけと言われて
「では国王陛下の正妃にしてください」って言ったら
王妃様はどんな顔をしたかしら。
勿論、そんな要求しないけど。
でも、その程度の意地悪を頭の中で考える位は許されるんじゃない?
そうして私は、意地悪は頭の中でだけにして、
“できるだけ地位が高くて私と今すぐ結婚してくれる人”
と、結婚したいですって国王陛下にお願いした。
「判った。選定に入るのでしばし待て」
その御言葉で、私は家に帰された。
この話し合いの時も、結局私は王子様には会えなかった。
地位の高い人、って言ったのには勿論理由がある。
もし。人妻でもいいと王子様が私を迎えに来てくれたら
それが結局愛妾というちっぽけな存在としてだったとしても、馬鹿な私は王子様の手を取ってしまう。
だから。少しでも王子様が、私の夫になる人に対して
その存在を意識できる存在であるように。
ものすごい年上でも、太っていようが、痩せすぎだろうが、禿げていようが構わない。
でもあれね、この条件だと私の恋を認めなかった人の言葉に信憑性がでちゃうわね、と苦笑いする。
でもいいの。
私以外の誰かに愛されて当然の人とは結婚できないもの。
王子様に捧げたものと同じだけのものを、私の全てを夫になる人に捧げることはできそうにないから。
どうしても、
心の中にいる王子様の笑顔が消えてくれないから。
好きよ。きっと、死ぬまでずっと。ううん。きっとお墓に入っても。
天国にはいけないから貴方には二度と会えない。
それが寂しい。
そうして。
今日はついに結婚式の日。
なんと吃驚。
私の結婚相手が決まったと国王陛下からの通達が来たのは
なんと昨日。
お相手との顔合わせも無し。
お名前も知らないし、その地位も財産も何も教えて貰えなかった。
別にいいけど。どうでもいいし。
急遽すぎてお母様がご自分で着られた花嫁衣裳を慌ててサイズ直しして着る事になった。
これ、あれよね。間違いなくお相手には財産ないわよね。
まぁいいわ。
毒婦だの悪女だの言われ放題の私と結婚してくれる人がそんなに好条件だったりしないわよね。当然だわ。
むしろ、国王陛下の命令でいきなり知らない女、それも評判最悪の私と結婚するような人だもの。
すっごい瑕疵があって当然なのだわ。
私は、王子様の邪魔をしないで生きていけるならそれで充分なのだもの。
「時間だ、リィズ」
父が迎えに来てくれた。
そのままエスコートして貰って、教会のバージンロードを一緒に歩く。
お父様、お母様、ごめんなさい。
ここまで育ててくれたのに、こんな結婚しかできなくて。
自慢の娘になれなくて、ごめんなさい。
言葉にしたら、却って二人を悲しませそうで口にできないけれど。
そうして。
街のちいさな教会で、歩いていった先に立っていた人は。
「リィズ。綺麗だ」
「……りおさま」
私の、王子様。
「リィズをお嫁さんにするって約束は守れたよ。でも、それだけしか守れなかったけど」
リオ様は、恥ずかしそうにそう言った。
「王太子じゃなくなっちゃったんだけど。平民の僕でも…」
なんと、王太子の地位、というか王族としてどころか貴族としての身分もすべて投げ捨ててきたという。
「それでも、リィズは僕のお嫁さんになってくれるかな?」
そんなの当たり前すぎる。
でも、言葉なんかでなくて。
たたひたすら。何度も何度も頷いて。
私はその人の胸に飛び込んだ。
リズちゃんとサリオ君の別ルートもどき(笑
ラストはこんな感じで終わっても良かったなぁと思ったり。
サリオ君が王太子だったことなんかないんだけどw