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第8話『ムラ長の娘:セタ』


 セタは人工楽園の場所を教え、少女に鍵を

 渡した。これは複製であり、ノーラが人工

 楽園に衣服と一緒に落としていったモノだ


 マスターキーは、セタが持っている


 セタは少女に人工楽園へ向かわせた

 ノーラとの最後の会話から…、特に気に

 なる点を調査させるつもりだ



 自分でその場へ迎えへばよいと考えたが

 …ムラの長である、親に対しての意地が

 あった


 ネムコはゼッタイにいる。と言って…、

 研究を始めた。だが、彼はそれを永続的に

 は許さなかった


 錬金術が禁忌である、というのは表向き

 の理由で、本当の理由はセタの婚約者が

 決まったからだ


 ムラの長は一人娘のセタを可愛がってい

 たが、このまま彼からすれば"よくわから

 ない変なこと"に没頭し、今後絶対に結婚

 、交際すらもしないで終わるのでは…?


 と先々を心配したからで、その為に用意

 した婚約者は隣ムラの長の長男であり、

 セタとは親交があり、見た目も財力もそ

 れなりにある


 肝心のセタは、そんなことには全く興味

 が無いようで、ネムコの研究を理由に反

 抗している状態だ


 セタは勝手に自分の未来を決められるこ

 とに嫌悪をあらわし、この軟禁部屋

 (※)から絶対に出るわけにはいかない…

 と負けられない戦い、意地の張り合いを

 している


 (※)軟禁部屋と称しているが、ムラ

 の長からすれば愛しの娘の為に、安全な

 家出の場を提供しているに過ぎない


 そんなわけで。根負けするのは、セタか

 、ムラの長か…?

 

 ムラの住人も、"バカ親子"のいざこざ、

 その行く末を生温かく見守っていた

 


 ◆

 


「さて…」とセタは情報をまとめる

 

(私は少年から再度、本の返却含め、人工

 楽園にて色々と調査をする、と聞いて

 いた。その後、…帰ってこず)


『逃げてしまった…』と宿の姉妹が狼狽

 しながら報告に来た。セタは「まだ逃げ

 たとは限らない。見つける努力をせよ!」

 

 と姉妹に命じた


 姉妹は命じられた後も立ち去らず、

 お互いを非難し合い、この下手な芝居

 に付き合いきれないとばかりにセタは

「さっさと探し出せ!」と苛立っていった

 

 ノーラには、監視役がついていたらしく

 、その男からも事情を聞いた。男は名無

 しの奴隷で、姉妹から何度も殴られたの

 だろう…顔が腫れていて、坊主頭であっ

 た髪の毛を、更に乱雑に剃られていて血

 傷がみえていた


「大変だったな…」



『いいえ』



「…私は別に怒っていない。だから、本当

 のことを詳しく、私には話して欲しい」



『…はい』



「どうして、いないと気づいた」



『はい?…』

 と男は質問の意味を考えてから、

『時間が経っても出てこなかったので、

 入って確認をした結果、どこにもいな

 かったからです』



「…ふぅん。では、扉の前にずっと居た

 …というわけだな?」



『はい』



「何かあったのか?」



『特に何も…ただ、物音がしました』



「どんな?」



『物が落ちる音です。恐らくは本が

 落ちる音だと思います』



「…本?」



『入って確認したところ、部屋の本

 棚の前に本が散らばっていました


 本は一部重なっていて、床にはアイツの

 服と小屋の鍵が一緒に落ちていました』


 男は落ちていた鍵をセタに手渡した


「この鍵だけでなく、服もなのか…?」



『はい』



「服を落とす?アノ少年の物に、間違い

 無いのか?」



『はい』



「そうか…。では消失、神隠しか?」



『…わかりません』



「ふぅん…。なるほど…他に何か変わった点

 は、無かったか?」



『………あ、もうひとつだけありました』



「何だ?」



『…待っている間、そう、物音がしてから

 しばらくして、扉を擦る音が僅かにしま

 した』


 セタは察するものがあったらしく、目つ

 き鋭く、親指の先と爪を軽く噛んだ


「念の為確認するが、出入り口の扉だな?」



『はい』



「窓から出ることはありえるか?」



『いいえ…無いと思います』



「何故だ?」



『出る理由がありません…。アイツは

 "逃げない"と言ってました』


 セタはしばし少年へと考えを巡らせ…


「ふぅん。そうか…。ならそうなんだろう。

 間違い無い」


 男は"妙に"納得しているセタを不思議

 そうにみながら、

『あとは特に無いです』と答えた


 セタは背を椅子の背もたれにつけて、目を

 閉じながら、ふぅ~と息を吐き切った後、

 目を開き天井を僅かに見上げ


「うんっ…」と自分に頷いてから、


「………わかった。もういいぞ。何かわか

 ったら、いや"オマエのこと"も含め、何で

 もいい…私に言ってくれ」と柔和な声質で

 いった


 男はセタのさり気なく加えられた言葉に、

 勝手に涙が出てきそうになったが…それ

 を堪えて、


『はい…』と返答した



「頼むよ…。アイツは重要なんだ」



『はい。善処します…セタ様の為なら』


 その言葉を聞いて、セタは笑みを浮かべ

「よろしく!…今日はもう休め!私が、

 そう言っていた、と姉妹には伝えておけ」

 といった


『はい…ありがとうございます』

 男はまた、ぐっと唇を噛んで涙を

 おさえていた


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