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第6話『一緒に住んで、暮らして飼おう』

 ・・・


 そんなわけで、僕が思ったことは、

 "猫を飼う為にはどうすればよいか?"

 "猫を飼い続けるためにはどうすれば

 よいか?"


 そのためには、どのような生活を送っ

 ていけばよいか?


 うん。だがしかし…


 今のところ無理だろう…。こちらの

 世界では…と決意してみたものの…

 以前の世界よりも、厳しい条件だ


 仕事疲れの毎日、休日が殆どないワ

 ークライフバランスが崩壊した…

 しかも薄給の生活を送っていたので

 は"ちゃんと"飼えない…と以前の

 生活で、嘆いていたこと以上の困難

 がこの世界では待っている…


 生き物の世話をすることは命を預かる

 こと。だから、ちゃんとした環境で、

 ちゃんとした状態で、猫を飼いたかっ

 た…。だから、結局のところ何もしな

 いで終わった


 土手に架かる橋の下でラストライブを

 一人で行ったとき…キジトラの猫がいた


 自然体、そして…。のしのしと歩く姿は

 堂々としていて、土手周辺をテリトリー

 にしているベテランの老猫のようだった


 僕を遠目でジッとみながら、距離を縮め

 てきて、最後には「ほらっ、寂しがり屋

 の人間よ、私でモフれ」とばかりに触れ

 させてくれた


 僕は、そのライブの本当のラストに…

 19歳の頃に作った唄を歌って、観客の

 老猫とギター及び音楽に別れを告げて、

 その日は終わった…


 ギターを売って、ちゃんと仕事を始めた


 だが、ふつふつとした感情を抱きながら

 …その時の猫の感触や哀愁漂う情景を想

 いながら、猫を飼いたいという衝動に駆

 られつつ、状況をみて諦める…という心

 中でのやり取りを繰り返し続けた


 それは実現しないで終わったが…。実現

 させるために本当に努力したのか?と言

 われれば嘘になる


 言い訳の多い人生だった



 ◆



『いいよ。じゃあ一緒に"住んで暮らして

 "飼おうか?』


 セタに先にぶつけたのは、"仮にネムコ

 を飼うことになった場合の生活方法"に

 ついてだった


 返答は、一緒に飼おうから、一緒に住

 んで暮らして飼おうと具体的になった


 だがそれは…


 一緒に飼おうと約束してくれたセタな

 ら、そう言ってくれるのを期待しての

 ずるい言い回しのような気がした



『ただ、それを実現させるためには、君

 が望まない"買い取り"というカタチ(形

 式)が駄目なら、難しいけど…』


 "買い取り"というのは奴隷である僕を

 買い取ることだ。誰かに秘密裏でなく

 堂々と買い取られる、というのは抵抗

 がある


 今も変わりないと言えるが、ちゃんと

 した値をつけられて、売られてしまっ

 たら、その人間の完全な所有物となっ

 てしまう気がして…


 だがそれでも、ネムコ、猫の為、それ

 に僕が好きになりつつある、いやもう

 …自分の大切な"心のどこか"で好きに

 なっている"セタ"と一緒ならきっと…


 僕は、迷いながら考えた後、

「わかりました。…それでいいです」

 といった


『…まあ、そう焦らないでいいし、

 こだわらないでいいよ。君の好き

 なようにしたらいい』


『さて…』と話題を変えてセタ。少し

 相好を崩し


『私の"人工楽園"の質問をよろしく!』



 ◆



 部屋から出ていく間際、セタが

『君の名前は何だっけ?』といった


 何を言いたかったのか?はよくわか

 らなかった


「セタ…。どうしたの?」


『…何となく、君が君の名前を忘れな

 い内に、君に確認をさせたくなった

 …。特に意味は無いよ』


 僕はドアの取手から手を離し、


「よくわからないけど、わかったよ、

 言うよ」と僕は自分の名前を言った


 ノーラ


 セタは『うん…』と少し切なそうな

 表情で頷いてから、僕をじっとみて、


『君は、"私のノーラ"だ…。忘れないで

 くれ…。お互いに。私は君が本当に…

 大好きだからな…』といった


 うん…僕もだよ…。セタ


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