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第5話『猫を飼えなかった理由』


 読んでもらいたい本一冊。そして、特に聞

 きたいことが…ひとつ、セタに出来た


 名無しの男は、僕が抱えている本をみて、

 冷たく、少し憐れんだ視線を投げた


 その視線は、

『そんなものは、オマエには必要ないだろ

 う…』といってるようにみえた



 ◆



 帰ると僕と同じくらいの年の少女(名無し

 の奴隷)が火打ち石と藁で火起こしをして

 いた


 僕はまだ下手くそなので、彼女の手元をよ

 くみて学ぶ。少女は集中していて、僕に気

 づかない


 火を焚き終えると、僕に気づいて、無言の

 まま…何も言わずにお互いに…となった


 僕が抱えている本をみて、

『…勉強するの?』ときいた

 

「しないよ…。調べてるだけ」と伝えると


『何を?』と少女


「ネムコだよ…伝説の生き物!みつけたら絶

 対に飼うよ。懐いてくれたら…だけどね」


 少女は無表情のまま

『…頑張ってね』と小さな声でいった


「ありがとう」と返して、僕はセタの部屋に

 向かった



 ◆



『では、またお願いしますね…』


 と…セタの部屋から出てきたのは"宿の姉

 妹"、僕の奴隷主だ

 

『…あら、"お気に入り"になって、名前

 まで付けてもらったんだってね?』


 と…微笑ましく姉の方が言った

 僕は何も言わない。ただコクリと頷いた


『…じゃあ、またね。もう雑用なんてしな

 くていいの』


『そうそう、姉さまの言う通り、そんなの

 は価値のないニンゲンにやらせてしまえ

 ばいいの…』


『…違う、価値があるのよ。みんな、それ

 なりにあるけど、それには今の値札に応

 じて、高いと、私の嫌いな言葉…"安い"

 があって、その価値に応じて扱いに

 "ちょっとした"差ができるの…』


 と人差し指と親指を使って、ちょっとし

 た差を示す


『…ふふ、そうだね、姉さま。ごめん』


 その会話をしながら二人は…僕を置いて

 微笑ましく去っていった



 この姉妹は、ある意味しっかりしていて

「奴隷を効率的に運用するには?また、よ

 い売値にするためには、どうするべきか

 ?」をいつも考えている


 少年である僕の場合。この姉妹の方針は

 、その"変"の趣向者の相手をメインでさ

 せて金を取る。男女問わず、少年愛を好

 む輩はいてもちろんセタはそんな存在で

 は無いと思うが…


 で、青年に育ってくれば、"何でもさせ

 る"存在。まだ若いウチは趣向者への提供

 や肉体労働や商売人への丁稚奉公、その

 他諸々をさせて全ての蜜(利益)を搾取

 する


 現実世界での派遣労働と搾取される割合

 以外は変わらない。奴隷の維持費(異世

 界)=与えられる僅かな報酬(現実世界)

 と考えれば、どちらも同じともいえるが…


 死ぬまでこき使われて、価値が完全に無

 くなれば…身勝手に捨てられるだけで。

 想定されるのは、全て搾取されるが故に

 貯蓄はなし。未来は無し


 衣食住があるのは、奴隷として契約され

 ている期間だけ…。疾病や事故等で、使

 いみちが無いと判断されれば…自由にな

 れる


 それは何ら望みのない"残酷な自由"だ


 まあそれは仕方ない。こちらの世界では

 セーフティーネットが無いのだから、

 ボロボロになれば食いつなぐことは不可

 能だ…


 だが現実世界には、セーフティーネット

 はあるが、猫を飼える余裕なんて無いだ

 ろう…


 何にせよ、先々や、今の労働環境を考え

 ると…猫をちゃんと飼うのは難しい…と

 いえる


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