表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/88

第4話『熊手の一撃』

 ・・・


 部屋の暖炉の前には、揺り椅子があり、

 人間の代わりに本が一冊置いてある


 まずはそれを手に取ると、揺り椅子に

 慎重に座って小さく揺らす。で、本を

 捲ると、中にセタの付箋を兼ねたメモら

 しき紙が挟まっている


 何が書いてあるのか?まったく読み取れ

 ない。頁をみても、まったくわけがわか

 らない


 絵だけをみて、何となく想像を膨らます

 その絵は、空を飛ぶ目の大きな毛の長い

 獣の絵で、もじゃもじゃした外見は、空

 飛ぶスパゲティーモンスターをもっと猫

 に寄せて可愛らしくしたようだった


 所詮、百聞は一見に如かず…か。と僕は

 そう思ってから本を膝の上に置き、しば

 らく揺り椅子を揺らし、軽く揺られなが

 ら部屋を観察した


 目の前やや右側にはレンガ造りの暖炉が

 あり、薪が炭と化していて今は使われて

 いないの見て取れる


 後ろの壁には二つの本棚、左の奥角にも

 、こちらは大きな本棚…そしてその本棚

 の上には燭台が一つある。今は日照の明

 かりが窓から降り注いでいて、ロウソク

 を灯す必要はない


 ただ、あんな場所にわざわざ、燭台が一

 つポツンと置いてあるのが気になった…

 で、何か棒のような物が刺さっているの

 がわかった


 揺り椅子から立ち上がり、本棚の前に立つ

 …。上には当然ながら届かない…結構な高

 さがある。上部から二段目の本にギリギリ

 手が届く程度だ


 踏み台、もしくは脚立があればよいが…

 揺り椅子以外に僕が乗っても大丈夫、且つ

 高さが足りる物が見当たらない


 さて…と冷静に考えるも、何も思い浮かば

 ない


(何か…無いか?)と本棚をみて、そこに

 ある分厚い本をみる…


 あっ…コレを使おうか?


 踏んでしまうのは気が引けたが…この上の

 状況(本棚の上の状況)が気になって仕方

 がない。あとでセタに謝っておけばよいか

 ?それとも、先に断りを入れておいた方が

 よいか?


 まあ、でもセタならあっさり許してくれそ

 う…ネムコの為なら仕方ないといって、ね


 うん…。やろう



 ◆



 本を積み上げ、階段を作り、慎重に踏みし

 めて上がる。棚の端をつかんで、首を少し

 伸ばす


 段が少し足らない。本を足してから、再度

 慎重に踏みしめ余裕をもって、確認する



 "熊手の一撃"とばかりに深爪の傷跡が三本

 棚の上にあった。コレは、その傷跡に突き

 刺さっているナイフで傷つけたのだろう…


 グイグイと押し引きをしているとナイフが

 抜け落ちた。刃よりも木の柄の部分が大き

 いつくりとなっている

 

 そして刃の先端にはアカ黒いモノがついて

 た。もしかして…これは誰かの血液だろう

 か?


 何故こんな箇所にて、こんなコトをしてい

 たのか?何かの儀式か…?それとも、この

 異世界、この地域での風習、厄除け…


 もしかしたら、これがセタが言っていた、

 ネムコを呼び寄せるおまじないなのか?


 ………う~ん


 燭台には短いロウソクがあり、この場所

 で灯して作業をしていたのだろうか?


 それとも…。この模様がわざわざ"誰かに

 "見えるように照らしていたのか…


 わからないけど…。何か意味があるのだ

 ろう…


 ただ、セタがナイフを持って、特に罪の

 ない本棚をわざわざ傷つけるのは…何とい

 うか、"彼女からは"想像が出来なかった


 何よりナイフを一本、突き刺した状態で置

 いていたのが、僕の感覚からは、少しの狂

 気を孕んでいるようにみえた


 まあ…でも。それは僕がいた世界とは別な

 のだから…大したことでは無いのかも…

 

 奴隷を当たりまえに肯定している価値観を

 みても、動かないモノを傷つける程度は残

 酷では無い


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ