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第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
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満浦基地防衛戦 その2

 ――日本帝國第二ポイントだった場所。中華共和国軍第二小隊の面々は片手を失った漸撃の腕を脚部を損傷した殲撃の腕との換装中だった。

 「クソッ。右腕がやられた。敵陸戦機のパイロットできるな」

錢上尉は悪態を付きながら、しかし敵パイロットを素直に褒めながらコックッピトから出て来た。

 「殲撃の腕部と武装を交換します。陆一級軍士長の機体から取りましょう。陆一級軍士長は郝一級軍士長と共に撤退してください。」

 的確な指示を出しているのは第二小隊副隊長の谢中尉だ。奇襲作戦をかけてみたら奇襲されたなんてマヌケなことをしでかした上に最新型の陸戦機を一方的に損傷させられた挙句、殲撃一機の脚部を破壊されて、戦闘離脱する兵士を出してしまったことの責任に潰れそうな面持ちだ。

 「すまんね。指揮官に向いてないんだ俺」

そんなことをバツの悪そうな顔で言っている錢上尉の機体の腕を殲撃で換装しているのが郝一級軍士長だ。

 「私が 不甲斐ないばかりに、上尉は悪くありません...!」

そう言って機体から降りて、換装作業を手伝っているのは陆一級軍士長だ。

 「戦闘しか能のない上官を持つと苦労するよ。転属願いでも出すことを勧めるよ?」

護衛に残った第三小隊の郁一級軍士長が冗談交じりにそう言った。

 「おい。そういうことほ言わんほうがいい」

そう言った楊二級軍士長に、数人が賛同の意を示した。

 「よし、終わったぞ。すまんな、待たせた」

郝一級軍士長の言葉を待っていたかのように錢上尉は立ち上がり、機体に登りながら、

 「よし。陆と郝は撤退開始。我々第二小隊は第一小隊と合流後、敵基地攻略及び本隊到着の支援を開始する!」


 -作戦領域第三ポイント

試験科中隊の第一、第二小隊は敵一個中隊を殲滅すべく山の稜線の裏側で待ち伏せしているため、片膝をついて姿勢を低くしている。

 「陸戦科の奴らはうまくいってるのか」

 「小鳥遊中尉...うまくいってなきゃ俺たちはここで退屈な時間を過ごしたりしてねぇよ」

小鳥遊中尉と呼ばれた男はコックピットの中で頭の後ろに両手を回し、足をモニターと操作パネルの境目の段差に足をかけている。そんな中尉の映像を見ながら、愚痴ったのは百目鬼少尉だ。

 「すこしは静かにしてな」

 「それが上官に対する口の利き方か?少尉。今日で三度目だ」

二人はそれぞれ中尉は玄海に、少尉は閃雷乙に搭乗している。機体自体は何らおかしいことは無いが、二機の持っている武装がおかしい。通常では突撃砲二門か一門だが、玄海の左脇下に抱えられているのは、180㎜無反動砲で側面に円筒型の弾倉が付いている。右手には長刀が装備されている。この長刀は佐々木機が使用している大東亜重工製一九式汎用熱刃長刀とは違い、三尾重工製六〇式高速回転刃長刀だ。閃雷乙は両手でポンプ式ショットガンが装備されている。これは如月製作所製五式甲爆散弾砲で、スラッグ弾が装填されている。

 「そこまでだ、来たぞ」

中隊長としてそれだけ言うと、大和の機体を起き上がらせる。周りの機体もそれぞれ起き上がり、武器を構える。

 「視認しだい攻撃を開始する」

 「「了解」」

隊員全員の声を確認し、陸戦科と敵の到着を待つ。先頭の玄海は稜線から肩の内側、人間でいう鎖骨の最後の方に装備されている細長く先端にカメラが付いている内視鏡のようなもので稜線の先を頭を出さずに見ている。

 「敵機視認!数およそ8!」

 「攻撃開始!」

味方の多種多様なカスタマイズが施された機体が高くジャンプし稜線を越え、一気に斜面を駆け降りる。味方陸戦科小隊に気を取られている敵陸戦機二個小隊の綺麗な鋒矢の陣の横の側面二機に小鳥遊機がそれぞれ一発ずつ180㎜無反動砲を撃つ。その内最初の一撃は二列目右側面の殲撃のコックッピトに吸い込まれるように綺麗な弧を描きながら飛んでいき、命中。APFSDS弾が装甲に穴を開けた。あれではコックピット内が金属の残骸により無茶苦茶に破壊され、パイロットはほぼ100%死亡しているだろう。それに気づいた側面三列目の敵が射撃してくるが、難なくそれを躱し前傾姿勢を起こす。近距離で取り付けてもらった右側の固定120㎜滑空砲をぶっ放す。発射されたAPFSDS弾は左肩に命中し、敵機の姿勢を大きく崩す。分かりやすく出っ張ったコックピットを左下から右手に装備している85㎜突撃砲の銃剣で突き刺す。敵機が動かなくなったことを確認し、銃剣を抜き次の敵に狙いを定める。既に鋒矢の陣は解かれ偃月の陣に変わっていた。他の機体も交戦中で、それぞれが互角に戦っている。その内の上守機が敵新型機の相手をしており少々手間取っていた。

 

 「くっ...実戦は厳しいな!」

敵新型機にかなり苦戦を強いられているが、新型機なのはこちらも同じ。敵も閃雷との違いに困惑しているだろう。38㎜突撃砲では敵正面装甲を貫通できず、敵もまたこちらの装甲を貫通できないでいた。

 「射撃戦では埒が明かないか!こうなりゃ自棄だ!くらえオラァ!」

両手の突撃砲を補助装置で格納し、背部に装備されている長刀を引き抜きながら一気に距離を詰める。敵も突撃砲を捨て、左腕に装備されている鍔のないロングソードを引き抜き、後退する。四脚では近接戦闘に向かないと判断したのだろう。しかしここで逃げられる訳にもいかない。ついに射程圏内に敵を捉え、撃破しまいと刀を振るう。敵機もそれをロングソードで受け止め、火花を散らす。しかし刀は少しずつ敵機の肩に近づく。

 「装甲は厚いがパワーはこっちが上か!!」

あと少しで刀は肩を切り裂き敵を撃破するまで近づいたが、敵は左前足の膝で自機のコックピットに蹴りを入れ、ぐらついたところで右手で殴り、距離を距離を取った。

 「ぐぅ...」

どうにかバランスを立て直し、刀を構え中段に直すと同時に大きく振りかぶり、同じく剣を大きく横に構えている敵機に突撃する。

 「オオオオオっラァッ!!」

自機が少し一瞬速く刀を斬り下ろすと、敵もそれに続くように姿勢を低くしながら大きく右上に切り上げる。この一瞬の差は大きく、先に斬り下ろした刃は敵機の頭部を割り、肩を切り落とす。敵の剣の塚が右腕の関節に直撃し、ひしゃげる。腕はあらぬ方向に曲がるが、左手だけで肩の切り口から止めを刺す。刃がコックピットまで届いたのか抵抗していた腕が動かなくなる。

 「初撃破...か...?」

そんな余韻に浸る間もなく、次の敵が襲い掛かってくるが、

 「俺に任せな!」

そんな声が無線越しに聞こえたかと思うと、次の瞬間には敵機が火花を散らし、爆散する。

 「隊長!!」

 「フッ、カッコいい登場だろう?」

そんな戯言を抜かしつつ、

 「損傷個所は?怪我はないか?手短に報告しろ」

 「右腕部の関節がイカれましたが、それ以外は何も...いや、あと敵の新型、38㎜じゃ正面装甲には通用にないようです」

 「そうか...腕はパージして戦闘続行できそうならついてこい。その場合後から合流する攻撃機に替えのパーツを持ってきてもらう」

 「了解。いけます!」

操縦桿のボタンで腕をパージする操作をする。シャァァァァ、と音を立ててショルダーアーマーごと肩部から右腕が外れる。右の武装切替補助装置を展開しいつでも突撃砲を撃てるようにする。左腕の刀を捨て、突撃砲を撃てるようにする。長刀は左右背部に装備されているため片腕が無い今は、一振りで十分だ。

 「よし、いけそうだな。ん?敵が撤退し始めた...?」

隊長の疑惑の声を聞き周りを見回すと、確かに後退している。

 (なんでだ?新型は破壊したが隊長機らしき機体はまだ残ってるし、弾薬が尽きた?いや、それは無いか、まだ予備を背負っている奴もいる。じゃぁなんだ...?)

残念な脳みそをフルで使うが分からない。

 「どうしますか?隊長!」

鷹司曹長の声に隊長は、

 「深追いするな!全機警戒態勢を整えろ!このまま合流点まで後退する。そこで補給を完了次第敵の攻撃に備える!」

そう言い終わったとたんオペレーターから、

 「敵二個大隊規模の混成部隊が接近中です!!」




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