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第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
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試作兵器試乗

 「私が副隊長の岡田慎介、少尉だ」

いかつい顔のおっさんがそう言って手を差し出した。握手をしながら、

 「ところで、格納庫で何を?」

というのも、自己紹介の後アナウンスで第一格納庫に呼び出され、パイロットスーツに着替えさせられた。帝國のパイロットスーツは青色を基調としたぴっちりスーツなのだが、各部に衝撃緩和材が入っている。格納庫には大きい布がかぶせられている何か(恐らく陸戦機であろう)がある。

 「君は、第三世代格闘機の搭乗経験はあるか?」

 「一応、シュミレーションは数回と練習機に一回だけ...あります」

 「乗れるか?」

 「私が?ですか?」

第三世代機はまだ配備開始されたばかりで数も少ないと聞く。やはり、試験科とだけあるにここにいち早く配備されたのだろう。

 「君は確か石田博士のお墨付きだと聞いたが?」

確かに石田博士の実験に参加したこともあったけれども、そこまで言われたことがなかった。そもそも、石田博士とも実験以外でロクに話したこともなかった。

 「確かに実験には参加しましたけど...」

 「ええい!つべこべ言わず乗れると言え!」

急に怒声が響き思わず背筋を伸ばし、手を太ももの横にピシッと合わせて、

 「乗れます!!」

と、勢い良く叫ぶように言ってしまった。

 「最初からそう言え」

 「はい」

そう力なく返事をして、

 「もっと気合を込めろ!」

 「はい!!」

そんなことをしていると、

 「あのぉ、そろそろこれに乗って欲しいんダケド、いいカナ?」

どこかで聞いた癖の強い声が後ろから聞こえて来た。振り返るとメガネをかけたひょろ長い冴えない感じの男性がたっていた。

 「は、博士!分かりました。おい、聞いていたな」

まったく副隊長は隊長と違って普通に軍人していらっしゃる。見たことのあるその男性こそ、陸戦機開発主任にして現場主義の変態技術者の石田源之博士だ。はいと答えると、少し下がるよう言われたので数歩後ろへ下がる。すると博士は大きい布がかぶせられたソレの後ろへ回り何かの機械を操作した。すると、ガコンッという音と共に布の固定が解除された。そして、布を助手と数人が掛かりで取り去るとソレの全貌が明らかになった。その機体は薄い緑色で武装は付いていないように見える。下半身は椅子に座っているように折り曲げられ、上半身は40度ほど倒れている。足は今まで見た機体のどれよりも細いが、どうやら太ももに大型のジェットエンジンのようなモノが取り付けられている。その上半身はやはり、今まで見た機体のどれよりも細くコックピットがあろう場所は四角く出っ張ている。これも、今までの機体とは大きく違う箇所だ。ショルダーアーマーは四角く簡素なものだが、第01試験科中隊第一小隊の部隊章である狼が太陽を振り返っている絵が描かれている。頭部は丸みを帯びた形状で、メインカメラのモノアイが突き出ており、それを囲むように装甲が突き出ている。

 「どうだい?なかなかの出来ダロ?コレ」

 「これは...初めて見ました」

 「そりゃそうさ、こいつは世界に一つだけの機体だからネ」

 「世界に...一つ...?専用機?やったー!」

 (こんな機体乗れません!)

 「本音と建て前が逆になってるヨ」

 「ゴホンッ、軍曹、乗るといったからには乗りこなして見せろ!」

 「は、はい!」

ちなみに、と博士が機体の説明が始まった。

 「型番はTAAG-PP-022、試作二ニ式陸戦機戦国。まぁ、戦国はワタシが勝手に名付けたんだケド。大東亜重工製二〇式噴射エンジンを二基、大東亜重工製二ニ式噴射エンジン一基搭載。固定武装は無し、武装切替補助装置の試作モデルが付いてある。ホラあそこ」

そう早口気味に言って指を指したのは機体側面後方。脇の下のちょっと後ろに武装を固定する装置と展開するアームが折りたたんで格納してある。

 「そして、気になる装甲はチタニウム合金を使用しているヨ。巡航速度はだいたい180km/h、最高速度は320km/hが今の限界だネ。でも、そんなに出すことは無いかナ。巡航速度の場合航続距離は200kmぐらいだヨ。ココ、重要だからネ。従来型より、航続距離が短いからネ。武装は50㎜突撃砲までなら好きに選んでいいヨ。近接武器もココにあるのならどれでもいいヨ」

「あっそれト、これから最終調整するから乗っテ?」

楽しそうにそれだけ言うとキーを渡し、格納庫の隅にあるちょっと大きめのプレハブへ入っていった。

 「乗れ、そして示せ、お前の力を」

ラスボスっぽいセリフを少尉は言ってプレハブに入った。機体正面に立ち、上面ハッチのキー挿入口を探し、それが矢印マークの先にあることに気づきカバーを外す。そこに、先ほど受け取ったキーを挿すとハッチが開く。中に通信用のヘッドセットがあり、それを装備すると、

 「ハァイ?、聞こえてるよネ?起動の仕方は従来機と変わらないヨ。操縦桿は、慣れてもらうしかないけどネ!とりあえず起動してみテ」

取り敢えずキーを右操縦桿の近くの挿入場所に挿すして左に回す。すると真っ暗だった機内はモニターの光に照らされ明るくなり始める。コックピットの内部は正面にモニターが一つ、その上に横長の長方形のものが一つ、サイドに一つずつある。操縦桿はひじ掛けのような所から左右一本ずつあり、それぞれ棒の部分にトリガーが二つ、天辺は平らで少し広がっており、そこに三つのボタンと一つのアナログスティックが付いている。正面左右のいくつかのスイッチを上げ、操縦桿を前に倒すと、ゴォという音と共に機体が起き上がるのを感じる。完全に立ち上がると数歩前へ動かす。操縦感覚が従来機以上に敏感で驚く。が、操縦できないほどではない。

 「どうだい?乗り心地は?個人的には良くできた方だと思うんだけどネ」

 「敏感ですが、いけます!」

 「それは良かったヨ。ブースターも使用して自由に動いてくれて構わないヨ。あっでも、基地内から出たらダメだヨ」

許可が下りたので好きに動かしてみる。右足のペダルを踏み操縦桿を左右同時に前に倒す。

 「ぐっ...」

しかし、予想とは違い機体は少しの間もなく急加速からの離陸。物凄いGに耐えながら辛うじて姿勢制御を行う。

 「うおぉ!!」

急旋回しながら一気に高度を上げる。

 「おお...空を...飛んでる...?」

 「なかなかいい成績だヨ。初めてでここまでしたのは隊長と君だけダ」

 「今は、素直に嬉しいです!」

脚部のサイドブーストをアフターバーナーで急加速させ、左右にステップを踏むように動く。シュミレーションと違い細かなバランス調整はOSが勝手にやってくれている。

 「敏感すぎるぐらいが丁度いいですね!これは!」

 「そうでだろう、君ならそう言うと思ったヨ!言い忘れてたけど脱出装置なんてものは無いからネ!」

 「......え?付いてないの?」

 「うん、付いてないヨ」

マジかよ...付いてないのかよ、ツイてない。あ、今のは付いt(ry

取り敢えず着陸しよう。先ほどまでの興奮が冷め急に冷静になった俺は、サイドブーストを噴かせながらゆっくりと地に降りたのだった。

 



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