第二回瀋陽総攻撃 その6
いつもより短くなっちゃった。頑張れたら明日投稿するかもしれない可能性があるような気がする。
上守周は応急処置を済ませた女性パイロットを上野機の閃雷の狭いコックピットに頭を上にして吊るように固定した。
『固定出来ました』
直ぐに隊長からの応答が入る。
『こちらも換装終了だ』
通信終了と同時に上野曹長がコックピットから話しかけてきた。というよりも独り言だったかもしれない。
「この人...どうしてそこまでして...」
戦うのか、という言葉が聞こえたような気がした。中華共和国に限らず世界でも陸戦機パイロットの数自体が非常に少なく女性パイロットは全体の5%程と言われている。その中で裏ではまだ女性差別が強く残っていると言われる中華共和国でエースパイロットにまで登り詰めた彼女に、上野曹長は思うところがあったのだろう。
「...」
返す言葉、或いは残す言葉が見つからずに、彼女を一瞥して閃雷の手に乗り地面に降りる。
いつの間にか先程まで聞こえていた戦闘音がなくなり静まり返っている。戦闘が終わった合図か、嵐の前の静けさ、か。
嫌な静寂に包まれた瀋陽に荒風が吹きすさび静寂を破る。
上守を下ろした上野機はハッチを閉め、立ち上がる。隻腕の機体は隊長に指示を受け、歩行で後方へ下がって行く。
隊長が周囲の警戒にあたっていた天笠少佐に通信を入れる。
『少佐、敵影は?』
『ありません。今までに確認された機体は八機と聞いていました。私は実際はもっと多いと予測していましたが...』
『...』
隊長は悩むように沈黙する。
ブーブーブーブーブーブー!!!
(レッドアラート!!...最重要撃破目標出現!?)
『しまった!!こっちが本命か!?』
つまり、487陸戦機中隊をたった一機で壊滅させた機体、Ch-01がこの戦場に現れたのだ!
アラートを止め、どこに現れたのかを確認すべくマップを確認する。博士の予想では北東からの進攻だったが...。
『...ど真ん中じゃねぇか!!』
戦術マップに赤々と大きな点が示すのは瀋陽のど真ん中、今回の作戦の第二目標である地下施設の付近だ。直ぐに隊長からの通信が入る。
『中隊各機、傾注!!各機絶対に奴の直線上に入るなよ!くれぐれも警戒を怠るな!攻撃は俺と少佐に任せろ。各機作戦通りにやれよ!!』
『『『『了解!!』』』』
『よし、これだな...』
周は隊長の指示で戦域外近くにある武装コンテナ一杯に、三つに折りたたまれて詰めてあった”ソレ”を取り出した。展開すると機体の全高程もある長い砲身と、グリップの先に大きなリボルバーについているようなシリンダーが付いている。そう、基地防衛戦にて活躍してもらった対軍団兵器とやらの試製五八式拡散爆式重砲の改良型だ。と言っても構造は全くの別物で、電磁加速器と呼ばれるものだ。つまり、目には目を、レールガンにはレールガンを、と言う訳だ。四つ穴があるシリンダーのうち二つがバッテリーに換装されており、砲弾も拡散弾ではなく専用の徹甲弾になっている。そう、この兵器の最大の問題点はたった二発しか撃てないことだ。
(なんで俺がソレを...。外したらどうすんだ...)
いいや、と考え直し、指定された場所へ向かう。
現在展開中の領域は高速道路が南と西に通っており、その内側に巨大なビル群の形跡がある。中隊はかなり前線を下げ、そのほとんどの機体は東の居住区にいる。そして、その南側の西側の斜めに通った高速道路の上に巨大な横に伸びた長方形の影が入る。
『隊長!!敵影確認!!』
『よし!行くぞ!!』
そういうや否や南の高速道路に飛び出す。一気に加速し、西側の高速道路との交差点を左折する。
ダァン!!
そこを狙っていたように上空の敵は発砲したが、外れ高速道路のコンクリートを抉る。左右にランダムに蛇行しながら一気に距離を詰める。敵機も狙いを定めようとするが、細かい動きに翻弄され、照準が定まっていないようだ。しかし、有効射程まではまだまだ遠い。
(やはり直接攻撃するのは難しいか...!)
しかし、構わずほぼ真上まで来た敵機に射撃する。恐らくは当たっただろうが、やはり斥力により威力が消滅している。何としてでもここでこちらに注意を引かせなければならない。そのまま高速道路を直進する。話に聞いていたように旋回能力は劣悪なようで、後ろに回った鵲を全く追えていない。しかし、その鈍重さ以上に強固な盾と、鋭い槍を持っている。これを煽りながら引き付けるのは大変そうだ。