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第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
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第二回瀋陽総攻撃 その3

 かつての盛況な都市の姿を失った瀋陽の中心街沿いに大型トラックが続々と展開していた。巨大で45度程度に持ち上げられた荷台には緑のシート越しに陸戦機のゴツゴツした輪郭が見える。シートは一部外されており、他の箇所も緩められいつでも起き上がれるようになっている。しかし、二機の鵲だけは特殊な腰部パーツ故に最初から歩行でここまで移動させられている。武装収容コンテナもすぐ近くに設置されている。その周りに陸上機や装甲車などの機甲部隊が展開している。現在、帝國は瀋陽突入準備が整い次第順次陸上機を突入させられる。既に小隊員は全員自機に搭乗し、いつでも出撃できる。

 『中隊各位に告ぐ。作戦開始まであと5分。繰り返す、作戦開始まであと5分。以上』

 刑部中佐の通信が大隊の展開が無事に終わりすぐに作戦が開始されることを告げた。

 (準備完了...か。敵は中華の凄腕八人...。それにしても戦力の過剰投入と言わざるを得ないな...)

 それは他の中隊員も分かっているようで、通信用の個人枠のコックピット内の映像に映る顔が強張っている。何よりも、出現するか分からない強敵のプレッシャーが更に負荷をかけている。

 『そう固くなるな、上手く操縦できんぞ』

 『そうは言ってですね...』

 上守の声が通信越しでも震えているのがわかった。

 『―時に軍曹、こんな話を知ってるか?』

 『どんな話です?』

 『ある日、空軍にスクランブル要請が来たらしいんだが、一機だけエンジンがどうしてもかからなかったそうだ。それで整備兵が困り果ててたんだが、パイロットが「機体も期待に応えられなくて堪えかねずに動き出しますよ」と言ったらしい』

 『ジョークじゃないやん!!』

 通信からは失笑とため息が聞こえてくるが、固かった表情は多少緩くなった。

 『緊張も抜けたようだしお前達ならば心配はあるまい。呉淞は制圧したも同然よ!!』

 『中隊各位に告ぐ、作戦開始まであと60秒、59、58、57、56、...』

 刑部中佐がカウントダウンを始めると皆の表情はまた固くなったが、先ほどのような重圧に耐えかねた見るに堪えない顔ではなかった。

 『30、29、28、27、26、...』

 既にシートは荷台から剥がされ、垂直に持ち上げられている。

 『20、19、18、17、...』

 機甲部隊のエンジン音が錆びた都市に響く。

 『5、4、3、2、1、作戦開始!!』

 ブオオォォォォォォォオオ!!!

 エンジンのうねるような音がして、敵を目指して突入していく。これに続くように陸戦機が荷台から降り、各々最寄りの武装をコンテナから装備していく。

  『装備を確保次第待機!各々各部隊の動向を確認しておくように』

 『『『了解』』』

 

 『はあー、私が陸戦機から降ろされるってどうなってんのよ!!』

 『まあまあ、ガルシア中尉。そう言っても此奴だってちゃんと使えばそれなりに戦えますよ』

 そう言ってガルシアを宥めるのは鳥部准尉だ。突入から数分。既に接敵してもおかしくない状況であったが、一向にその気配が無かった。

 『まあ、いいじゃないか偶には、乗ってて楽しいしな』

 『そういう話じゃないんです中尉!!』

 『ははは』

 そう言って軽く笑うのは片倉中尉だ。片倉中尉は第三小隊隊長だ。

 『このポイントもクリアか...。こうなると敵がいるかも怪しいな。だが気を抜くなよ』

 『当たり前よ、まったく...』

 五機の陸上機―丹波―は、現在規則正しく区切られた呉淞を四区画に分けたうちの北部を進行中だった。第三小隊の丹波は55mm速射砲を背部に、72mmロケットランチャーを左右腕部に装備している。軽口を叩いてはいたが、握っている操縦桿は汗で濡れていた。もしもゲリラ兵の放ったロケット弾がアクティブ防御システムを抜けてきた場合一撃で撃破されてしまう。更に、防御できたとしても破片によって脚部に異常が発生するかもしれないのだ。

 『ん?...今一瞬だけ生体レーダーに反応が...?』

 『なんだと?曹長、レーダーの誤認じゃないのか?』

 『いえ、異常は検出されません』

 『ふむ、取り敢えず見ておくか。よし、各機機体間の間隔を開けろ。曹長、座標を』

 『了解』

 宍道曹長から送られてきた座標に一番近いのは鳥部准尉だった。

 『見てこい鳥部』

 『了解』

 座標の示した場所は丁度倒れたビルの残骸が位置し、隠れるには持ってこいだ。鳥部機はガシャガシャと音を立て瓦礫の山を登っていく。中隊員がいつでも攻撃出来るように見守る中座標地点に着く。

 『目視しましたが、敵は確認できません!』

 『よし、戻れ―――』

 ドオォオン!!!

 そう言った直後、鳥部機が爆発した。ように見えた。正確には鳥部機のすぐ背後で爆発したので他の隊員からはまるで鳥部機が爆発したかのように見えた。そのまま鳥部機は姿勢を崩し、右側のロケットランチャーから倒れる。敵の放ったロケット弾はアクティブ防御システムによって撃ち落されたようだが、倒れてしまっては二発目を防御出来ない。

 『グゥ!!自分は無事です!!』

 破片による通信妨害がなくなり通信が戻った。

 『すぐに機体を放棄。完了次第ガルシア中尉は座標に射撃!!敵を逃すな!!』

 すぐさま鳥部は機体背部のハッチから脱出、それを確認したガルシアが牽制射撃を開始し、どんどん距離を詰めていく。残りの機体は、最後尾の鬼ヶ島機を残し、片倉機、四天王機、宍道機はそれぞれ回り込むために別の道路へ急いでいる。

 『鳥部は鬼ヶ島が回収しろ!』

 『了解。准尉、もう少しで二階級特進するところでしたね』

 『まったくだ!!』

 

 『...始まったか』

 最初は爆発音がしたかと思うと銃撃音がしだし、遂には瀋陽全体に戦闘音が広まっていた。

 (何か嫌な予感がするな)

 不吉な気配を感じつつ、陸戦機が確認されたかどうかを岡田少尉に聞く。

 『敵陸戦機は確認されたか?』

 『いえ、確認されていません。これは歩兵の散発的な攻撃に手を焼くでしょうな』

 岡田少尉の呟きは、戦闘の長期化が避けられないことを示唆していた。

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