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第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
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丙一五式第〇九試験型汎用空陸戦兵器 鵲

 満浦基地地下14階のある部屋。暗く、無機質な空間に青く薄く輝くモニターに二つの3Dモデルが表示されている。一つは第487中隊を壊滅させ、そして()()に絶対に立ちはだかる敵―中華共和国の未確認兵器。そしてもう一つは、ソレを破壊するために帝國、石田博士が用意した新機体。

 「...変な形をしている」 

 煌月羽が思わずそう言ってしまったのも、見たこともない形の腰部装甲、と言うよりも推進装置の所為だろう。第一角法図面では全体的に尖ってスラッとしたスリムな印象を与える。コックピットが従来機のように前に突き出ておらず、先の方で鋭角に折れ曲がっている。更に大腿部にブースターエンジンが装備されていないのもこの印象を強めている。しかし、背面図や両側面図では後ろに突き出た、と言うより機体とは別に付けたような腰部の推進装置がやはり目に留まる。蜂の尻尾を薄くしたような推進装置は、上面の両側面に八個の噴射ノズルが、下面の両側面には六個の噴射ノズルが付いており、更に背面には武装ラックと同化した可動式推進装置が付いている。頭部も今までになく丸く、先が尖っており、デザインが泥臭さを感じさせない。

 「気に入らなかったカナ?」

 「いや、むしろ逆だ。結構気に入った。名前は?」

 「丙一五式第〇九試験型汎用空陸戦兵器、鵲ダヨ。ワタシもこの名前は気に入っている」

 「この機体は丙一五計画の第九番設計思想を適用して作られた機体ダヨ。デクストニウムを用いて大出力電気推進を実現した機体で、簡単に言うと凄い!速い!加速!の三拍子揃った機体ダヨ」

 「それで?性能は?」

 「最高速度は大体800m/hで、巡航速度も300m/hは出せるヨ。ただ、コイツの特徴として、急加速するカラ凄くGが掛かっちゃって、ソレを緩和させるのに大型化しちゃって...おっと、話が逸れたネ」

 「とにかく凄く加速するし、搭載されている〇九式電磁試験機関のおかげで航続距離とか気にしないでいいけど、例のごとく装甲は薄いからネ」

 「武装は?」

 「従来通りカナ。本当は...まだ話すべきじゃないカナ」

 何か言おうとして博士は言葉を飲み込んだ。恐らく、相当重要な機密事項だったのだろう。

 「...」

 モニターを一瞥して部屋を出ようとして、あることに気付く。

 「なあ、この機体いつ届くんだ?」

 「ああ、それなら心配ない。この基地にあるヨ」

 「へぇ。...は?どこに?これ見た感じドックに入らんくない?」

 驚愕でモニターを指さしながら問いただす。

 「まあ、まあ。地下施設のほとんどはこの研究の為に作られたわけデ...」

 「なるほどなぁ」

 「兎に角、次の出撃でコイツの性能を上に見せつければワタシも研究費に余裕が出てくるカラ、よろしくネ!」

 ...これが本音かあ。

 

 

   ◇ ◇ ◇



 23:00。既に作戦終了から約二時間が経過し、鷹司曹長の安否も分かり残っている人間は上守と上野だけであった。肉体的、精神的疲労はあるものの、後半は戦闘にほとんど参加しなかった分周には体力が残っていた。二人と言えど空気は前ほどでないにしろ明るいものではなかった。

 (...気まずい。非常に気まずい)

 上野が話しかけて来たのはなんだかんだで部屋を出るタイミングを逃してから、かれこれ数分が経ち、このまま何もしないままにするわけにもいかず、どうしたものかと思い悩んでいたときだった。

 「...上守君、私は...私はちゃんと中隊に貢献していると...思いますか...?」

 「え?それは...どういう...」

 突然の問いに質問の意図も、答えも出せないまま時間だけが過ぎてゆく。

 「...」

 「...しています。貢献しています。まだ二回しか出撃していませんが...それでも、わかりますよ。曹長がいなければ鷹司曹長の救出や応急処置も遅れていたかもしれませんし...」

 ああ、クソッ。こんなの誰でも変わらないじゃないか!違う、もっと、もっと...

 「曹長は、曹長の明るさは小隊、いや中隊を支えているはずです!曹長は、誰よりも鷹司曹長を心配していました。そんな曹長にの優しさに助けられた人はいるはずです...それに...その、曹長が居なければ小隊はむさくるしいですし...」

 バッカ!最後のは余計だバカ!ああ、クソ。どうしようもねぇ男だよ俺は...

 「ふふ、ありがとう。ごめんね。こんなこと、慰めさせるようなことさせちゃって。私、どうかしちゃってた」

 無理やり作った笑顔に涙目の美人の泣き顔は、状況が状況でも非常に絵になる。

 「そんなこと...」

 「じゃあ私はもう寝るから、おやすみなさい」

 「...おやすみなさい」

 あれで良かったのだろうか。部屋を出ていく曹長の背中は小さく感じた。

 曹長が部屋を出ていって数分も経たないうちにガチャっと音がして部屋の扉が開いた。

 「あれ、上守まだいたのか」

 「ええ、まだ風呂に入っていなので...」

 「理由になってないが」

 「まあいい。聞き給え」

 先程までの空気と真逆の雰囲気にギャップを感じながら、

 「...何をです?」

 「いろいろあって、今俺が乗っている戦国もとい大和から新機体に乗り換えることになった。せっかく魔改造した大和を倉庫の肥やしにするのも勿体ない話だ。そこで誰かにコイツを譲ろうと思っているんだが誰がいいと思う?」

 それ俺に聞くのかぁ。

 「そう言われましても」

 「いや、もう軍曹しかいない訳だし。俺的には岡田少尉か小鳥遊中尉がいいと思うんだが、どうだろうか」

 えぇ、確かにこの二択になるだろうけど、俺に選ぶ権利なくない?

 「取り敢えず小鳥遊中尉でいいんじゃないですかね?戦闘は中尉の方が出来そうな感じしますし、中尉が機体を乗り換えれば余った玄海を少尉に渡せばいいかと。閃雷は限界そうですし。なんちゃって...」

 「...」

 やめて。思いついちゃっただけだから、そんな目で見ないで。

 「シャレはともかく一理どころか俺と同じ意見だな。それにしよう」

 最初っからそうする予定だったんじゃねぇか!

 「...どんな機体か聞いても?」

 少し間が開いて、

 「まあ、すぐに見ることになると思うし、いいかな」

 


   ◇ ◇ ◇



 ――満保基地地下14階。

 「博士、久米作戦の第二段階移行が発令されました」

 パソコンとにらめっこしていた博士が急に顔を上げニヤリとした笑みを浮かべながら、

 「...そうか、第二段階カ。ところで、月夜クン、例の物は調達できそうカナ?」

 月夜と呼ばれた女性は表情を変えないまま「いいえ」とだけ答える。

 「ふ~む。そう簡単には渡してくれないカ」

 「しかし、次の結果次第では彼らも揺らぎ始めます」

 「ああ、分かっているヨ」

 またパソコンでの作業を再開し、暗い空間に静寂が戻る。

 「...それでは私はオペレーターを再開します」

 部屋を出ようとした月夜を博士が止める。

 「今からキミには中隊の直接的な戦力として戦ってもらおうと思うんダ」

 「...鷹司曹長の代替ですか?」

 「そうだネ」

 博士はパソコンとのにらめっこを止め、月夜の方を振り返り、

 「明日にでも挨拶に行くといい。ワタシから紹介するヨ」

 「わかりました。それでは」

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