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第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
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未確認兵器の存在

 コツ、コツとブーツの音を暗い廊下に響き渡らせる。

 満浦基地地下14階――満浦基地における実質的な最終階層であるが、ここに入れる者は極々僅かしかいない。鶴喰煌月羽もまたここに入ることのできる人物の一人だ。本来ならば階級的に絶対に入ることが許されない機密だらけの最下層へ入ることを許されているのは、雄閣が一家、島津家家臣の最有力者である鶴喰剣仁斎の義息子であり、従四位上の官位、伯爵の爵位を持つ石田源之卿のお抱え武士として、正七位上の官位と高度なセキュリティクリアランスを与えられていたからだ。

 無機質な自動ドアの前に立ち、IDカードを認証装置にかざす。するとシュー、と微かな音をたててドアが開く。地下施設は基地の地上に露出している施設とは違い冷たく機械的な印象を受ける。

 「やあ、待ってたヨ」

 癖のある語尾でヒョロヒョロした男が出迎える。

 「博士、何が分かったんですか?」

 ここに呼ばれた理由は勿論先日出現し、第487中隊を単機で壊滅させたソビエトの未確認兵器についてだろう。

 「まずこれを見てくれないかナ?キミの意見が聞きたイ」

 そう言って今まで付いていなかったモニターの画面を付け、映像の再生を始める。音声は無く映像のみが再生される。

 「...」

 そこに映っていたのは恐らく撃破されたのであろう第487中隊の機体のメインカメラの映像だった。どうやら市街地に展開中で既に最後の敵を撃破したようだった。好戦的で前衛的な動きからして恐らく佐々木准尉の機体であろうか。周囲の残存兵力を確認すべくカメラが左右を振り返り、正面に戻そうとしたとき、それはカメラに写り込んだ―――というよりは映らざるをえなかった。約800m先の周りよりも少し高いビルの上に足と鋏をとったカニの甲羅を背負ったような人型の、甲羅から生えた左右に大きく長い筒、恐らく銃身をこちらに向けている()()は写り込んでいた。ソレは800mの距離を考慮した場合一般的な陸戦機の大きさを遥かに上回っていた。恐らく全高16m程―――一般的な陸戦機が8~9mなのを考慮するとかなり大きい―――の機体に不釣り合いなほど大きい飛行ユニットが取り付けられておりその見た目はシルエットのみでもかなり威圧感がある。

 ―――ピカッ!!

 画面中央が明るくなったとほぼ同時に画面が砂嵐になる。

 「今のは...一体...?」

 約800m先から放たれた砲弾がほとんど弾着までに時間差がなかった。それだけでなく、中華にしろソビエトにしろ二脚機の運用を開始した話は聞いたことがない。あの驚異的な主砲はレールガンの類とみて間違いないと思う。そして、あれは恐らく支那ではなくソ連だろう。アレはブースターが背部にしか付いていなかったように見える。見るからに滞空していた点も何らかの最新技術を取り入れたのだろう。

 「...」

 「ちなみに、あの距離を保って攻撃してきたそうだヨ。凄い速度でアレを連射しながら滑るように移動していたラシイ」

 「それで?どう思う?」

 「ソビエトの新兵器であるのは間違いない...と思う。なんで支那が持ってるかは知らん。左右の主砲はレールガンの類だと思う。強烈な閃光を伴った射撃で、実弾を放っているからな。」

 少し考えて続ける。

 「飛行ユニットらしき何かは何らかの新技術で飛行能力が付与されている。理由は、ブースターエンジンの配置からあれは推進用だろう。でも、滞空中は微動だにしていないように見えた。つまり、飛行ユニットに推進用エンジンと、浮遊用のエンジンが内蔵されていると考える。あと、接近戦になった場合を考慮して飛行ユニットはパージ可能だと思う。...以上です」

 博士はこちらを向いて満面の笑みで、

 「うん!キミに開示されている情報だけダトそれで正解だネ。ほぼ間違いないヨ」

 「ほう」

 俺が博士の部隊にいる限り、必ずコイツとは対峙することになる。ここで出来るだけ情報を出してもらわないと...

 「これはワタシの勝手な憶測だけど高確率でコイツはパージしない。いや、パージ出来ないヨ」

 「...出来ない?」

 自信が有るのか無いのか、特に変わった様子はなく答える。

 「うん。技術的に出来ないだろうね。多分あの飛行ユニットが肥大化を免れなかったのも同じ理由」

 「して、その理由(ワケ)とは?」

 画面に映っているソレどう考えても接近戦は不利そうな見た目をしている。

 「おそらくプレーニング・AG機関のコンパクト化にまだ成功してないんだろうナ。だから機体本体にはプレーニング・AG機関、というか動力源が内蔵されてないんじゃないカナ」

 別のモニターに3Dモデル化された、テクスチャリングする前のポリゴンモデルが表示される。 

 「しかも、プレーニング・AG機関自体は推進力を獲得しにくい上にアレを使うには相当な制御システムが必要だからナ。ダイオワン・エレクトロニクスが全力で開発していた制御プログラムもつい先日完成したし、ソ連が開発していてもおかしくはない...カナ」

 (???)

 「あ、簡単に言うとプレーニング・AG機関はデクストニウムを使用した斥力場と莫大な電力を発生させる機関ダヨ。その電力でレールガンを撃ってくるんだろうネ」

 「顔に出ていたから説明したんだろうが、さっぱりだ」

 「そういうものとして認識してくれればそれでいいヨ」

 そうか、とう頷いて暗い部屋に青い光を放つモニターを改めて見る。圧倒的遠距離から浮遊した物体からほとんどタイムラグなしで砲弾が飛んでくるのか...

 「そう言えば斥力場を生成するって言ったが、それってマズいんじゃないか?」

 「そうだネ。キミたちにとっては凄くマズいだろうネ。恐らく、150mは接近しないと少なくとも55mmまでは斥力場でほぼ無力化されてしまうからネ120mmでも250mまで接近しないと効果が薄いカナ」

 少し、違和感を覚える。

 ―――大体、陸戦機に関して最も進んでいる帝國が作ってないような代物をソ連が持っているんだ?そもそもソ連が陸戦機研究を始めたのは10年前。しかし、難航に難航し、結局出来たのは2060年に第一世代相当の物だった。しかし、最近は一気に研究が進み新型機すら出来ている。

 ...これはきな臭いな。

 「ソ連はどうしてコイツを作れたんだ?」

 モニターを見て、何かしらの作業をしていた博士に問いかける。博士は作業をしたまま、

 「さあ、どうしてカナ。さっぱり分からないナァ?」

 「知っているな?さては?」

 その横顔を睨みながら博士に迫る。

 「あーあー、分かったカラそんな顔しないデ!怖いヨ!」

 はあ、とため息を吐き、説明し始める。

 「まず、ワタシの研究が始まったとき、もう一人の研究者が居たんダ」

 「!?」

 初めて聞かされたこの事実はかなり衝撃的だった。なぜなら、士官学校時代陸戦機開発史の授業に於いて第二世代中期以降は石田博士がほとんど主導しており、あたかも一人で行っていたように聞かされていたからだ。

 「ソイツがネ、ワタシ達の研究結果の半分を盗んで、ソ連に亡命したんダ。その中にプレーニング・AG機関に関する研究結果も入っていたンダ」

 「...」

 つまり、このクソッたれを作ったのは半分石田博士ってことになるのか...?

 「...」

 いや、違う。()()()()()()はどうでもいい。――博士が第487中隊の皆を殺した要因の一つになる事実は、今は関係ない。

 「...もしかするとだけど、作ってたりする...のか?これ」

 希望と懐疑の混じった質問をする。

 「残念ながら、別の物を作っていて時間が無かったンダ」

 「別の物?」

 やっとこの話になった、とばかりに博士の機嫌が良くなる。

 「そう、こいつの登場は予想していタ。だからこれを作ったんダ!」

 別のモニターに3Dモデルのポリゴンモデルが表示される。

 「コイツにはキミに乗ってもらおうと思って、今日は呼んだんだヨ」

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