表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第01試験科中隊  作者: 津田邦次
第一章 第二次日中戦争
13/27

前哨基地攻略作戦 その2

 轟音と共に悲鳴が春の夜に響く。金色の弾頭が山なりの放物線を描いて飛んでいく。

 「始まったか」

 短く一言漏らし、手を固く握り息を細く出す。出し終わると固く握った手をパッと開いて、

 「第一小隊河川への進入を開始。全機縦隊を維持し追従せよ」

 「「了解」」

 「CP了解。進入を開始してください」

 ズシズシと大地を震わせながら六機のずんぐりむっくりした機体が河へ入っていく。綺麗に一列に並んでいるためか傍から見ればシュールな光景だ。幅一キロを時速4.6㎞で渡るので約13分水中にいなければいけない。本来ならばスクリューを使用するのだが水深的に難しい。そして、次に砲撃が開始されるのが今から約十分後。見た目に反して足は速いので、速度的には大丈夫だろうがなんせ不安定な試作機。水中で事故でも起こせば大変なことになる。

 「06進入完了」

 「こちら01。了解」

 ガルシアからの報告を受け、全機の進入が完了。後は十分間ひたすら進むだけだ。

 

 水中を相変わらずズシズシと響かせながら確実に目標に迫っている。もうすでに河川進入からすでに8分が経過した。今のところ特に何か起きたわけではない。しかし、水中はとにかく静かで、聞こえてくるのは歩く音だけ。水もそこまで綺麗なわけではなく視界も悪い。最初はガルシアが視界が狭いだの、フロートが邪魔だの騒いでいたがどうやらその気力も奪われたらしい。いつ事故ってもおかしくない上にこうも静かでは正気が削られていく。

 「残り300mです」

 時折聞こえてくるオペレーターの声が正気に戻してくれる。

 「支援砲撃開始まで残り60秒。57、56、55...」

 「10......5、4、3、2、1、開始します」

 ドンッ!という轟音が水中に広がり機体を伝ってくるのを感じる。砲撃終了までに上陸しなければならない。

 「こちら03。左腕に異常発生。関節が動きません!!」

 よりによって鷹司かッ...!!あいつは地味だが的確に援護してくれる貴重な戦力だが。

 「こちら01。肩の動きを調整しつつ最後尾へ行け。上陸後すぐにパージしろ」

 「了解」

 やはり試作機、何があるかわかったもんじゃない。


 「砲撃終了まで残り60秒。57、56、55...」

 砲撃終了まで残り一分を過ぎてようやく水面から頭が出たようで、カメラが一瞬半分だけ水に浸かった状態になった。

 「01上陸。排水を開始」

 「CP了解」

 機体の上部排水ユニットから大量の水が排水され、水が突然山のようになって浮き出て来たと見間違えそうな見た目だ。次々と機体が上陸し、最後に排水後に左腕を切り離した鷹司機が完全に陸に上がった。

 「こちら01よりCPへ。全機上陸。一機破損したが特に問題はない」

 「CP了解。CPより各機へ、それぞれの任務を全うせよ。繰り返す、それぞれの任務を全うせよ。ご武運を」

 「「了解」」

 

 岡田と鷹司と別れた後、敵基地1㎞地点へ移動。

 「ガルシア中尉はここで援護射撃を頼む」

 「やっと出番ってわけね!!いいわ、まかせなさい!!」

 かなり張り切っているらく、意気揚々と言うと、ガルシア機のフロートが真っ二つに割れ中から大型の狙撃砲が顔を出す。そのハンドガードを持ちながら機体からパージし、右手でグリップを握る。そのまま膝を付き、左腕を引いて右手を左に向け、後はきちんと構えるだけになった。

 「上野、上守は俺に付いて来い!」

 「了解」「了解」

 水中よりも移動速度が格段に上がり、やはり見た目に反して軽快に動きながら敵基地へ向かう。向かいながら武装を手に持ち替える。

 「周囲の警戒を怠るなよ、慎重に、しかし迅速に動け」

 先陣を切るので前方の警戒をし、左右の警戒を残りの二人がする。後方はガルシアがいるので大丈夫だろう。

 「敵基地まで残り800m。戦闘有効範囲に入ったわ」

 ガルシアからの報告を受け、一層警戒を努める。

 敵基地まではほとんど遮蔽物の無い坂道だが、砲撃の直後であり、敵の警戒態勢はまだ整ってないらしい。

 「敵砲台展開、狙ってる!!」

 と、思っていた時期が私にもありました。なんて言ってる場合じゃねぇ!! 

 「全機散開!!全力で回避運動を取れ!!」

 「「了解!!」」

 三機が一斉に別々の方向へ走り出し、ジグザグに走る。

 「ガルシア!敵砲台を狙撃してくれ」

 「勿論もうやってるわよ!!」

 おそらく先ほどの砲撃中は地下に潜っていたであろう砲台が見えるだけでも三基六門ある。口径までは分からないが、当たればタダではすまんだろう。そのうち一基がこちらに砲を向け、砲口から火が噴き出る。それを見た瞬間、機体の進路を左から右に強引にずらす。

 「うおぉお!!あぶねぇ!」

 そのままの進路であれば確実に当たっていたであろう。機体の少し後方に爆発音と共に穴が開く。既に次を撃つ準備が整っているらしく、砲身を微調整している。

 「まだか!?」

 「あとはそれで終わりよ!!」

 そう言いってからワンテンポ遅れて砲台が爆発し、砲塔が吹っ飛ぶ。弾薬庫にでも当たったんだろう。

 「よくやった!!」

 「当り前よ」

 気づけば敵基地まで200m切っていた。

 「敵陸戦機確認、既に起動しています!!」

 先に基地へ着いていた上守が報告する。

 「交戦は避けられそうにありません!」

 上野もすでに到着しているらしい。

 「数は?武装も教えろ。取り敢えず持ちこたえろ!」

 それだけ聞いてから全速力で坂を駆け上る。

 「機数4、武装は突撃砲と、近接用のロングソードのみ。現在は敵基地建物の陰で応戦中」

 「分かった。そこに引きつけといてくれ」


 「クソッ、ただでさえ無駄うち出来ないってのに、数的有利ってのいいよなぁ...!?」

 牽制に数発ずつ弾を消耗していく。替えのマガジンは二つ。一マガジン60発。合計180発しかない。既に一マガジンの半分は使ってしまった。

 「曹長、弾は温存しといてくださいね」

 「わかってるよ。ただ、時間かけすぎると他の敵もきちゃうね」

 隊長はどこで何をしているんだ!?

 「大丈夫、隊長を信じて。あの人は強いから」

 軍曹の言葉に力を感じたが信憑性がどうも薄い。あの隊長は戦闘では心強いが、普段があまりにもそれを思わせない。

 「でも、信じるしかないか...!!」

 「とにかく、ここで敵を引き付けてれば勝てるんですね!?隊長」

 「おうよ」

 返事だけは達者なもので、

 「まあ任せな、もう二機片づけた」

 返事だけではなかった。


 「ふう、やはり雑兵ばかりか。あまり手ごたえが無いな」

 一人、基地の周達のいる方向の左側面から回り込み既に二機を撃破していた。

 「これ以上待たせては可哀そうだな」

 

 「やばい、弾がもう一マガジンしかない...」

 何とか俺が牽制しながら軍曹が撃ち、一機撃破したものの、既に二度目、三度目を行えるか怪しい残弾数になっていた。

 「いざとなれば近接格闘戦に持ち込みます。その時は全部打ってでも敵を出てこさせないでください」

 「...了解」

 最後のマガジンを振り絞るべくそっと壁から覗き見るのと、敵機の上半身が吹っ飛ぶのがほぼ同時であった。

 「隊長!!」

 「いいから突撃だ!」

 敵の注意が完全にそれ、その期を逃すべくもなく二機は突撃砲を容赦なく敵機に浴びせる。

 「今までのお返しだ、たんと受け取れ!」

 残りの二機もこちらの反撃を回避する間もなく撃破された。

 「やったか...」

 「CPより、各機へ敵基地への掃討班を向かわせます。ついでに貴方たちへのプレゼントもあります」

 「ほほう、どんなプレゼントだい?」

 「プレゼントは二つです。一つは貴方たちの愛機。もう一つは敵の増援です」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ