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公爵令嬢と雷獣4

鼻歌交じりに私は必要なものをトランクに詰めていく。

ウェーブルに旅立つまであと少し、雷獣騒動の事で一時期お母様に反対されかけたが、何とか説き伏せ、ウェーブル行きはなんとか死守したのだが、お供を数人連れていくことになってしまったのは致し方ないのかもしれないと割り切り、取り敢えず、王都から出られることを喜びながら私は旅支度をする。

「んー…しっかしセルティナの衣装って派手なのばっかね…」

ピンクのひらひらとしたドレスや至る所にリボンのついたドレスとまあ、なんというか、お嬢様らしいドレスの数々に私は溜息を吐いた。

ごちゃごちゃとたくさんの装飾がついたド派手なドレスは一見してお金がかかっていることがわかる代物で、ぶっちゃけると今の私の趣味に合わない。

シンプルイズベストを掲げて生きて来た小庶民の私にはこの派手で動きづらいだけのドレスの良さがわからない。

「流石に捨てるのはもったいないよな…」

自分で稼いだお金で作ったドレスじゃないけど、趣味じゃないから着てないのに捨ててしまうのはもったいない。

そんなふうに考えること自体庶民的なんだろうけど、今の私に貴族のお嬢様のような贅沢三昧の生活をしろと言われても恐れ多くてできない。

フリマかリサイクルショップはないのだろうか。

この今後も気ないであろう衣服たちをタンスの肥やしにしておく気にもなれないし、どうしたものか…。

「キュウ?」

「んー?なんだい?」

「キュイッ!」

大量の衣服を眺め途方に暮れていた私を見上げ、楽しそうに一声鳴いてドレスにじゃれついたのは、あの日助けた雷獣だ。

金色に茶色の縞模様の茶虎のような雷獣は私に懐いてしまったようでこうして私の近くで遊んでいる。

ああ、猫みたい。可愛い…

モフモフした生き物を見ているだけでも癒されるのに、無邪気にじゃれる姿など至福と言っても過言ではない。

「可愛いなあ」

手を止めて思わず雷獣を撫でまわすと雷獣は嬉しそうに喉を鳴らし擦り寄る。

「そういえば、君に名前つけてないかったね」

「キュウ!」

「何て名前がいいかな…」

この子を飼うのなら名前ぐらい付けてあげないと可哀想だよよね。

「んー…」

ちょっと大きいサイズの猫のような姿、ふわふわモフモフの毛並み、ふさっとした立派なしっぽに三本角。金色の瞳に三角耳…

雷獣を見ながら名前を考える。

この愛嬌と気品に溢れた姿に似合う名前か…

「んー…テト。テトなんてどうかな?」

「キュウ?」

「君の名前、テトってどう?」

「キュイッ!」

嬉しそうな一声にその名前で決定する。

今日からこの雷獣はテトだ。

「テト。今日から私が君のご主人様だ。よろしくね」

「キュイッ!」

「え?ええ!?」

抱き上げて、その朝焼けのような黄金色の瞳を見つめて宣言する。

その瞬間、私の足元に見たこともない魔法陣が浮かび上がり、青白く発光し私とテトを包む。

「っ!?」

それはほんの一瞬の事で、魔法陣は気付いたときには消えてあたりは元に戻っていた。

「え?なに今の…」

「キュイ…?」

テトを抱きしまたままあたりを見回す私を、テトが不思議そうに見つめてくる。

「テト?」

「キュイ?」

「なんだったんだ?さっきの…」

不可思議なことに頭をひねっている私の腕からテトはするりと降り、何事もなかったよにまた遊び始めた。


「んー…まあ、いいか」


よく分からないことは分からない。

世界は不思議に溢れてる。でいいか。


私は考えることを放棄し、荷造りを再開するのだった。



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