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プロローグ
ぶわっと浮き上がる感覚。
太ももの下から、手のひらから感じる筋肉の躍動。
人間にはない筋肉で動く大きな翼が羽ばたき、ちっぽけな私を乗せ大空へと舞い上がる。
頬を切るように過ぎていく風の感触に、閉じていた目を開ける。
「わ、あ…!」
青と白だけの世界が飛び込んでくる。
地面が、あんなにも遠い!!
「すごい!すごいよノア!!私達飛んでる!!」
「クァッ!」
私を乗せた彼女も嬉しそうに鳴く。
黒曜石のように美しい鱗を撫でながら、彼女の努力を称賛する。
「よく頑張ったね!えらいよノア」
「クァッ!クァッ!」
喉を鳴らし、機嫌のいい声で鳴く彼女は、この広い大陸の中でも特に稀とされる、黒竜だ。
黒々とした艶やかな鱗に覆われた大きく立派な体躯をしているがまだまだ子供の彼女の背にで、私はまっすぐ前を向く。
「行こう。ノア」
「クルァ!!」
私の掛け声に応える様に、彼女は大きな声で鳴き、その大きな翼を力強く羽ばたかせた。