~同行(アテンド)~
とうとう今日、遺跡の探索に向かうこととなった。
メンバーは僕と少女の2人きりだ。
ただ、これは王国としての調査ではない。どころか、彼女の父親にすら話していない秘密の探索だ。
と、いうのも、あの後彼女なりに探索への参加を頼んだらしいのだけれど、断られてしまったことでぷっつんしてしまったとのことだ。
「勝手に探索に行ったりして、大丈夫なんですか?帰ったら僕、殺されたりしそうだし……」
そんな僕の憂鬱など意に介さず、彼女はこう言った。
「大丈夫ですよ。ちゃんと今日は街にお出かけをすると言って出てきましたし、夕食の時間までに帰れば、ばれないですって」
既に城を出てきてしまった以上、今から引き返す訳にも行かないか。
一応、あの後王様にも僕のプログラミングの知識は認めてもらえたようで、この後も身元が判明するまでは居させてくれることを約束してもらった。
「今からどこに向かうんですか?」
そう、今更ながらに尋ねる。
そもそも探検などというものは事前に場所について調べて、準備していくべきだろう。
「ああ、そういえば言っていませんでしたね。遺跡は街の外れ、終端のある場所から、更に進んだところにあります。私たちは簡易的に遺跡と呼んでいますが、見た目はただ少し古く、人の住んでいないだけの一軒家です」
「遺跡……というには僕のイメージとは大分かけ離れているんですが」
「そうですね。国内にはありませんが、隣国との境にある森の中などには創造もつかない技術で作られた、古代の城なんかもあるらしいですが……もしかしたら、貴方も隣国の生まれだったりするかもしれませんね」
「そう……なんですか。では、僕の思っていたほど危険な探索にはならなくて済みそうですね」
というか、ただの古民家を漁るだけであれば、もはや探索とすら呼ぶべきではないのかもしれない。
たどり着いた”遺跡”は、やはり見た目はただの古民家のようで、少し胸をなで下ろす。
玄関を開けると、靴が2、3足放置されていた。
「なんだか生活感のある感じですね。いつごろまで人が住んでいたか、とかは分かっているんですか?」
「それが、”分からない”んです。公文書などを確認した限りでは、ここに家が建てられた記録も、住んでいた人の戸籍も、見つからなくて。どころか、街の人たちにこの家について聞いてみたこともあるんですが、誰も記憶にない……と。お父様も、こんなところに家があるはずがないと兵士の人たちを派遣して、それであの資料が見つかったんです」
もしかしたら、実はとてもミステリー溢れる遺跡に迷い込んでしまったのではないのかと、恐怖心が芽生えるが、少女の様子を見る限りでは、どうにも帰ってくれるようには見えない。
まあ、前回の探索でも特に問題はなかったようだし、床を踏み抜いたりでもしないように気を付けよう。