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~初学者指南(オリエンテーション)~

「例えば、この○○に、A(エイ)p(ピー)p(ピー)l(エル)e(イー)という暗号を書き込むと、林檎を創造する設計書になる」

初老の男性にキメ顔で言われたその台詞は、僕が笑いかける理由には十分だった。

堪えろ。堪えろ僕……。

ほほの筋肉に力を入れながら尋ねる。

「この設計書は、どうやって使うんですか?その、林檎を創造?したりとか」

「これはな、実行所の先にある洞窟の中で使うことが出来る。そこには終端という機械があり、設計書を読み込むことで物体を具現化できるのだ」

ふむふむ。

この城に来るときに少女が言っていたことと、ほとんど同じような感じだ。

ところで、終端によってのみ物が生成されるというのであれば、先ほどの剣は一体どこから出したのだろうか。

突然空中から湧いたようにしか見えなかったが。

そこまで考えたところで、1つの仮説が浮かぶ。

「じゃあ、設計書を使うには、必ず終端のあるところまでいかないといけないんですか?」

そう問いかけてみる。

「そうだな。基本的にはな。だが、最近発掘された”コレ”を使えば、その限りではない」

男性はそういって、左手に着けた機器を見せつける。

「これは……?」

「仕組みはまだ分かっておらん。だが、設計書をこの中に入れると、終端を使った時と同じようなことが起こるのだ。私は、これが終端と同じように物質を生成する機械だと思っている」

そんなものか。

ただ、こんな小さな機器が物質を生成できるとは思えない。

先端についた水晶玉を見ても、多分通信機か何かだろう。

つまり、設計書にプログラムを書くように文を記述して、それを終端で読み込む。

すると、創造の書式で書いたプログラム通りに物質が生成される。

男性の持っていた機器に設計書を読み込むと、無線通信で終端を経由して手元に生成することが出来る……か。

もう少し聞きたいとこともあったが、次の仕事もあるのか、「あとはお前が教えておけ」と少女に言い残して、部屋を出ていった。

「じゃあ、続き、教えますね」

そう言って少女は、設計書の具体的な暗号について教えてくれた。

彼女は料理が好きらしく、食べ物の生成や、火の付け方などを教えてくれた。

解読されている暗号は他にもあり、今わかっている部分だけでも応用範囲は広いんだと。

それでも、質の良い紙を大量に消費することや、知識が十分に必要であることから、家事程度でこの技術を使えるのは王族ぐらいのものらしい。

少女にとってそれは、誇らしいものであり、後ろめたいものであるとも言っていた。

「そんな暗い話は止めましょうよ」と、言って話を戻す。

不意に少女の手元に目を向けると、先ほど少女が買ったという設計書が目に入る。

男性の使っていたものとのデザインの違いに気が付く。

「設計書ってどんな紙に書いても構わないのかい?」

少女に尋ねる。

「いえ。まあ、終端になら大抵の紙が反応してくれますが、お父様の持っている機械などでは、割と良質なものを使わないと動かないみたいです。あと、定義を行うときもその傾向が強いみたいで、普通に市場に出回っている設計書では、動かないことも多いんです。それに、街の人たちが使っている物は、所々が破けていたり、擦り切れていたりなど質があまりよくなくて、終端が止ってしまう原因にもなっているんです」

「でも、終端がなくても、お父さんの機器を使えばある程度は凌げるんじゃないですか」

先ほどの疑問をぶつけてみる。

「それが、ダメなんです。終端が動かない間は、あれも使えないみたいで」

やはりか。

あの機械はただ終端とのやりとりを行っているだけらしい。

もう1冊の本に少女が手を伸ばしたとき、鐘の音が聞こえた。

「あら、もうご飯の時間ですね。さあ、いきましょうか。あなたも」

「いえ、居候の身でそんな」と遠慮しようとしたが、しかし食欲には逆らえんようで、そのままいただいていくことにした。


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