六 航行訓練開始
三回生後期課程の実習訓練が始まった。
訓練の中でも特に大きなウエイトを占める、航行訓練である。
二週間の訓練で、実際実務に当たっている航宙船に乗り込み、先輩航宙士の指導を受けながら訓練を受ける。
第一クールのメンバーは、今日からその訓練にあたる。
全体で六クール、十八チームが参加する訓練である。
「くーっ、早く俺も宇宙へ行きたいぜ!」
ジーンが言った。
「俺たちは第四クール、まだまだ先だ。おとなしく勉強していようぜ」
第一クールから第六クールが終わるまで、教官たちの授業は行われず、E-ラーニングで授業が行われる。自分のペースで勉強が出来るわけだ。
と言っても、最後に履修科目試験が行われるため、のんびりとはしていられないが。
「だって、宇宙だぜ。あの星の光の中の蒼い闇を渡るんだぜ。くーっ、腕が鳴るぜ」
ジーンが興奮した様子で言う。
「腕を鳴らしちゃダメだろうが、ほどほどが一番だ」
カイルが呆れたように言った。
「船医だからって、憧れを捨てちゃいけないな」
「誰が捨てた!」
何やかんや言って、みんな訓練が楽しみなのである。
「その前に、お前ら勉強ー! E-ラーニングの提出課題出せー!」
サエキ教官の、『親父』のおっかない罵声を聞いて、地上に残っている学生たちはレポート提出に精を出していった。
さて、二週間後――
第一クールのメンバーがアカデミーに戻ってきた。
皆げっそりして、顔色もあまりよくない。
――訓練が足らない――とのこと。
訓練に持ち込んだ荷物をずるずる引きずって、寮に戻っていった。
「お前たち、訓練レポート出せよ」
そのオヤジの声にげそっとした顔を見せた。
「一体、どんな訓練だったんだ?」
他の学生たちは興味津々。興味を隠せない。
「行ったら分かる」
とは、第一クールを体験した学生からの言葉だった。
第二クール、第三クールの学生たちも、第一クールの学生同様、顔色を悪くしてアカデミーに戻ってきた。
「何事も勉強、勉強」
と言っていたところを見ると、第一クールの学生同様、未熟さを痛感してきたらしい。
――自分たちの訓練はどうなるのだろうか。
プランキッシュ・ゲリラの面々は、面白そうな顔をした。
――来るなら来い、受けてやる
そんな心境だったのではないだろうか。
第四クールの訓練は、もう、すぐ先のことだった。