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五 ある朝の風景

 ジーンの麻薬所持疑惑と痴漢疑惑が解決した後、アカデミーは平穏な日々を送っていた。

 朝食に出たピリ辛ザーサイサラダにウォンは何時ものごとく特製ラー油を足し、プランキッシュ・ゲリラの面々は食事に当たっていた。

「そろそろだな、航宙訓練の発表は」

「いいチームと当たればよいかも」

 この航宙訓練、各チーム、「あみだくじ」で選ばれる。(くじを作るのは教官だ)

 三チーム一組で航行クルーが決まる。

 文字通りチームの組み合わせは、運がものをいう世界である。

 この選抜、公平さが物言うが、一部のチームで不満が爆発した。

「お前のチームと一緒になったら、こっちが足引っ張られる。冗談じゃないぜ」

「なにおう? それはこっちの台詞だぜ」

「なぁ、落ち着けって」

 他のチーム員が宥める。

 プランキッシュ・ゲリラの面々は、おかずの皿を持ちながら、騒ぎの中心を見ていた。

「あー、あの二人仲悪いもんな」

「水と油、犬猿の関係?」

「でも今までよく持ったわ」

 喧々囂々言っている同期メンバーを見る。

「でも、喧嘩はチーム発表してからでよくねーか?」

「それ、同感」

 喧騒を他所に、さっさと朝食を腹に詰めるプランキッシュ・ゲリラの面々だった。


 さて、不運というものはよくあることで。

 一週間後の朝食前、航行訓練の同行クルーが発表された。

 先週喧嘩していた二人を含むチームが、この教官作のあみだくじで同行クルーとなったのである。

「畜生、落第決定だぜ、お前のせいでな」

「何だと? 不運なのは俺のほうだ。お前、足引っ張るだろうからな。他のクルーに同情するぜ」

「けっ、二週間毎日お前と顔合わせるわけだ。最悪だな」

 これを聞いて、プランキッシュ・ゲリラの面々はこの二人と一緒に航行訓練に旅立つ同級生に同情した。

「俺ら、あの連中と一緒じゃなくてよかったな」

「毎日喧嘩の応酬の仲裁に入らなければならなかっただろうし」

「でも、なんだかんだ言って、やるときはやるでしょ。でないと、ここまでの訓練で残ってないもの」

「確かにそうだな」

 プランキッシュ・ゲリラの面々は他人事として傍観できる余裕があった。

 ……というのも。

 今回の同行チームは、なんと次席チームのライトニング・ブルーであり、彼らとは能力もコミュニケーションも抜群であった。

 文句ないメンバーと言えよう。

 もう一つのチームが問題といえば問題だったが楽観視していた。

 このチームは、今まであまり交流を持ったことのないチームで、正直に言えば、毎回合格点すれすれを行く危ない橋を何とか乗り切っているチーム、であった。

 男性五人に女性二人の七人のチームで、チーム変えは一回のみと、何とか続いてきているチーム名『ブラウン・ベアーズ』

 全員の髪の色が茶色であることからこの名前が付いた。

 一回のチーム変えのみで今まで生き残っているチームであることから、どこかの誰かさん達とは違い、協調性はあるだろう。

彼らは焦っていなかった。


 こんな朝の風景。

 日常であり非日常でもある風景だが、よくあることの一コマで片付いていた。




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