三十 実技試験
第三回生後期課程の実技試験が始まった。
この試験では、とにかくパニックにならないことが重要である。
どんな問題が出てくるのかわからない。
冷や汗ものの試験である。
今回は、訓練で使用したのとは異なり、小型シャトルを模している。
よって、操船も自分達で行うこととなる。
グレイス達の試験は静かに始まった。
グレイスはどうも嫌~な予感を抱えていた。
「親父が簡単な問題出すとは思えないし……」
「そりゃ、俺もそう思ってる」
ジーンが答えた。
そうこうしているうち、艦がアラートを発してきた。非常事態である。
「十一時方向に異常発生、直ちに対処せよ」
操縦席のスクリーンを見る。十一時方向……
「重力値が高くなっていく。ブラックホールだ」
「ゲッ、俺たち経験済みじゃないか?」
「他の学生たちは経験していないでしょ、ほら、方位転身、全速力で離脱」
「シールド強度全開」
グレイスとジーンは協力して対処に当たる。
「シールド強度が足りないな、フレッド、ウォン、頼む」
「了解」
フレッドとウォンはコントロールパネルを操作して、エネルギーを操船とシールドに集中させる。
「シールド強度は?」
「安定してきた」
「離脱の方はどうだ?」
「もう少しで重力圏外に抜ける。けど、一気に抜けないと危ないかもね。ブーストを使う。総員配置に着きベルトを締めろ。カウント開始。五、四、三、二、一、ブースト始動!」
艦はブースト加速で一気にブラックホールの重力圏外に抜けた。
「状況確認、視認上異常なし、コントロールパネル上も異常なし」
「シールド強度通常に移行」
「艦内エネルギーバランス正常に作動中」
このやり取りを聞いていた教官がOKサインを出す。
「プランキッシュ・ゲリラ、終了だ。出てこい」
その声を聞いて、チーム員は試験場から出てきた。
「難しい設問にしたはずなんだが、流石に一度経験していると違うな。対処法も研究していたようだな……合格だ」
その言葉に、よっしゃ! とハイタッチをかますメンバー達。
今回出番のなかったカイルは別に実技試験がある。
「お前ら、学科試験落とすなよ。これで落ちたら目も当てられないぞ」
「ご心配なく。学科も突破して見せますよ」
そう言って笑いながら試験会場を後にしたプランキッシュ・ゲリラの面々だった。




