二十五 いつものワンパターン
夕食終了後、少し時間をおいて、グレイスはトレーニングルームに顔を出した。
そこにはすでにジーンが居た。
グレイスは声をかけた。
「ジーン、手合わせしない?」
その問いかけにジーンはOKの回答を出す。
ウォーミングアップが終了次第、双方の様子を見て、手合わせをする約束をする。
「おい、大丈夫か?」
そう声をかけたのはこの艦の下士官。
「かまいませんよ。彼女は強い。こっちも全力で当たらないと勝てませんからね」
この声を聞いて、トレーニングルームにいた下士官達が集まりだした。
どんな試合になるか興味があるのである。
ジーンに言わせれば、
「彼女もSP資格がある。手を抜けばこちらが喰われますよ」
とのこと。
下士官達はがぜん興味がわいた。
「よっしゃ、俺たちは見物するぜ」
「面白いものとは思いませんが……」
「SP資格者同士の戦い、滅多に見れないしなぁ。この船には資格者居ないしな」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ」
そんなやり取りをしている間に、グレイスはウォームアップしてグローブをつけてやってきた。
手をぐーぱーして、グローブを手になじませていた。
ぎゅぎゅっという音が聞こえた。
軽くジャンピングもして、フットワークを確かめてもいた。
それを見たジーンが声をかけてきた。
「やるか」
「おう!」
グレイスはそう答えて、格闘スペースに足を踏み入れた。
「お願いします」
二人が声をそろえて頭を下げた瞬間から、格闘が始まった。
びゅんという空気を切る音がする。
さっと身を引いてボディブローを躱すジーン。
「お前、切り替え早過ぎ」
「問答無用!」
グレイスの攻撃が続いたあと、ジーンは攻撃を躱した隙をついて攻撃に転じた。
グレイスの鳩尾付近を狙って蹴りを繰り出す。
そこは、グレイス。動きを読んで、バク転で攻撃を躱していた。
両者よどみなく攻撃を繰り出していく。
はじめ、唖然として見ていた下士官達も、ほうっというため息に変わる。
「防御と攻撃の切り替えが早いな」
「あのスピードの攻撃を躱すなんて、すげぇ」
「動体視力がいいんだな。相手の動き、読み切ってるぜ」
格闘スペースの周りに人垣ができていた。
「えーい、ちょこまかと動きやがって」
ジーンがパンチを繰り出しながら言う。
「それはこっちの台詞よ、こっちの攻撃ことごとく躱してくれちゃって、可愛くない奴」
グレイスがパンチを避けながら、反撃の蹴りを入れる。
「俺に可愛げがあっていいものか!」
「男性にも愛嬌は必要でしょ」
こんなセリフをお互い攻撃しながら交わしているのである。
外野の見物人たちは、呆れて物も言えなかった。
「……」
「これ、どう見ても本気じゃないよな?」
「余裕ありまくりだぜ」
「あの運動量でか?」
「化け物か!」
ジーンとグレイスの戦いは、最後、ジーンの蹴りがグレイスにヒットして決着となった。
「まいった」
グレイスがぽつりと言った。
「ほんとにそうかぁ? お前、俺を使っただろ?」
「何に?」
「ストレス解消にだよ。たまってたんだろ?」
「まあね。とりあえず解消できたから、お礼言っとくわ。ありがと」
ふうっと溜息をついて、ジーンはぽりぽりと頭をかき、格闘スペースから去るグレイスを見送った。
いつものワンパターン。
二人の過激なストレス解消法は、艦内の噂になって盛り上がった。




