二十四 第二次艦上訓練再開
一時間の休憩を挟んで、グレイス達は艦橋に戻ってきた。
「引き続き頼むよ、訓練生」
その他艦長の言葉に「了解」と返す訓練生だった。
グレイスは航宙士の席に着く。ジーンは火器管制、ロバートは科学技術のモニター前、カイルは艦上作業員の状況把握の画面に着いた。
「訓練再開します。操舵士、本艦はポイントマークII、プラス3‐αへ進行」
グレイスが航宙士として指示する。
監督官である先任士官も了承する。
「ポイントマークII、プラス3‐α、了解」
操舵士が答え、船は指定ポイントへ航行を始めた。
星の海が、移動を始める。艦が移動している証拠だ。
この移動速度が正常なんだと、グレイスはうんうんと納得していた。
「楽しそうだね」
グレイスの指導教官である、アルマーノ中尉が言った。
「星がゆっくり動く、この光景が好きなんです。前のブラックホール時の光景はもうこりごりなんですが」
「それは俺でも遠慮したいなぁ。……この光景忘れるなよ」
「はい」
グレイスは再び操作盤に目を向けた。
航海は穏やかに続いた。
グレイス達はこれ幸いと、抱えていた疑問点を教官役の士官にぶつけていた。
教官達も大したもので、その疑問にすべて答えていた。
「教官達、さっすがだな。疑問点にすべて答えてくれたよ」
「こっちもそうよ。すごく助かる。意思の疎通も確かだし、安心して学べるわ」
グレイスはすでにメモ帳二冊目。
知識の泉を探索しているようなそんな感じになっていた。
それは他の訓練生も同様だった。
「シールド強度を保つための裏技があるとは知らなかった。技術部に迷惑かけずに強度保つ方法を学べたぜ」
「こっちは艦上のパワーバランスの取り方かな? 技術部門からの視点で目から鱗だったよ」
「それは俺の方も同じ。患者の振り分け、同じようでいて微妙に地上と宇宙じゃ違うもんなんだな。勉強になったよ」
夕食をつつきながら言う。
彼らはすでに勤務時間を終え、自由時間となっていた。
ツナサラダをつつきながら、グレイスは話題に入っていた。
「この艦に訓練で割り振られて、ラッキーって感じかな?」
「それは俺も同じだ」
「俺も同じく」
「同感」
身になった実習のようだ。
「実習が残り三日とは信じられないよ」
「もっと乗艦していたいよな」
「本当」
レタスをシャリシャリ食べながら、グレイスは言った。
「あと残り三日。吸収できる事案はこなしたいわよねぇ」
「それは同感」
「同じく」
「それはそうだ」
サラダをつつきながら、グレイスは言う。
「でも、ブラックホールはもうご遠慮願いたいわよねぇ」
「当たり前なことを言うな」
ジーンが反論する。
「ブラックホールの一件があったから、私、法務士官としての訓練まともに受けてないのよね」
その言葉にジーンが反応した。
「それは俺も同じだ、航宙士の訓練ほっといて、火器管制ばっかりやってるからな」
「悪いわね、占領しちゃって」
「いや、俺の中では、火器管制の方が比重が高いから文句はないが」
「私の場合、法務士官とどっこいどっこい何だけどな。法務士官としての仕事がほとんどない」
「それっていいことなんじゃないのか? もめ事がない証拠だろ?」
「それはそうだけど、担当事案もなく、すぐに前線に出されても困る」
「そりゃ、ごもっとも」
訓練に対しての意見が続く。
本日の主食であるハンバーグを食べながら、ジーンは言った。
「俺も、航宙士やってないから、いきなりナビゲーターしろと言われても困る。これらはアカデミーに帰ってから自主学習しようぜ」
「了解」
こうして残りの時間も過ぎていった。




