二十三 ほっと一息
ブラックホール回避の危機一髪から少しして、グレイス達は休憩時間に入った。
「……死んだ」
「俺も」
「右に同じく」
食堂で男性陣はぐったりとしていた。
グレイスは男性陣ほどではないにしろ、脱力感は否めなかった。
「くったびれたー」
そう言ってアイスティをぐびっと飲む。
「何で、私達の実習訓練はこう災難続きなのよ。テロリストに遭遇するわ、反省文地獄を見るわ、ブラックホールに引きずり込まれそうになるわ……。災難続きもいいところじゃない」
グレイスの言葉に他の面々もうんうんと頷く。
そして、一人の男に人の目が集中した。
「な、何だよ?」
「やっぱり何か持ってる? パート2」
視線の集中を浴びて、ジーンがたじろぐ。
「何かって、何だよ。 俺のせいかよ! それよりパート2って呼び方やめろよな。さすがの俺でも傷つくぜ」
「そんな可愛げのある性格じゃないだろ?」
その会話を聞いていた、他の士官が尋ねてきた。
「パート2って何だい?」
わいわいと士官が集まってくる。
「ああ、こいつのあだ名です。『アカデミーで一番ついてない男パート2』ってやつ」
その言葉を聞いて、士官たちは爆笑した。
「お前、ついてない男なのか?」
「あだ名の理由って何だ」
わいわいとにぎやかになってきた。
「こいつ、警察に麻薬密売人として誤認逮捕されたんですよ。痴漢とも間違えられたし。それでついてない男パート2」
ゲラゲラと士官達は笑い続けた。
「アカデミー学生の君を麻薬売人と誤認して逮捕に痴漢? アカデミーの学生はそんな事をしている暇ないだろー? 警察もバカだなー」
「それで? パート2が居るってことはパート1もいるわけだ。そいつは?」
「俺らの後輩の二回生なんですが、入寮前にバスジャックに合うわ、初日に足の骨折をするわの災難続きの奴で。そいつがパート1です」
「ついてない奴ってのは居るもんだな。まあ、これ以上災難がないことを祈ってるぜ、パート2」
ジーンがポンと肩を叩かれた。
「うわ、先輩たちまでそれを言いますか? ……まあ、仕方ない、これは甘んじて受けましょう」
ズーンと沈みながらもそう言い、アイスコーヒーをごくりと飲んだ。
散々パート2と騒がれ、ジーンはふてくされながらも黙ってその場で休憩していた。
今後、この艦上ではジーンは「パート2」と呼ばれることとなる。




