一 ありえないでしょ、そんなこと
プランキッシュ・ゲリラの面々は、一瞬自分の耳に入った情報を理解することが出来なかった。
「は?」
ジーンを除くプランキッシュ・ゲリラのメンバー四人が声をそろえて言った言葉はこれだった。
教官はそれを見て、念押しのように言った。
「だから、ジーン・アルファイドが麻薬のブラックエンジェル不法所持で州警察に逮捕されたと言ったんだ」
サエキ教官、通称『親父』が四人の顔を見渡しながら再度言った。
その言葉を何とか自分たちの心の中で整理して、それぞれが言葉を発した。
「ありえない」
「ありえんな」
「どこをどうすればそうなる」
「何したんだ、あいつ」
四人はせっかくの休暇を警察の取調室で過ごすことになったジーンに同情した。
「犯罪者だとは思わないのか?」
教官のその言葉に、四人は即座に反応した。
「そんなことできるやつじゃないでしょう」
「もし、本当に犯罪に手を染めるような奴だったら、警察に捕まるようなドジは踏まないだろう」
「麻薬の密売人が出来るような奴なら、俺たちはチームメイトとして付き合っていない」
「まったくだ」
四人はジーンの無罪を知っている。
性格から、そんなことが出来るような奴じゃない。
無実の罪を着せられたジーンに心から同情した。
「俺もそうだと確信しているが……。警察はテコでも動かないようだな。州警察に捕まったのが運の尽き。連邦警察や惑星警察ならもっと柔軟に対応できたんだが、州警察は身柄を少しも離そうとしない。連邦政府を目の敵にしているからな。……ジーンが一時的にでも麻薬を所持していたこと、そしてその場所を押さえられた事は事実だ。これは動かない。本人は頑張って無罪主張しているらしいが……。無実証明するにしても警察がこの状態じゃ、今は難しいな。公正な立場で対応してもらうよう掛け合ってはいるが……」
親父がそう言葉を残し、四人の前から去っていった。
「さて、どうする」
四人は顔を突き合わせて相談をはじめた。
「あいつのことだ、親切な爺さんよろしく、たまたま落とし物を拾ったってことだろうな」
「同感。拾い物を届けようと良心的な行動に出たんだろうよ」
「その拾い物が不運にも麻薬だったってところか」
「それが、特別行政府管轄の学生。……なんか、州警察が鬼の首を取ったように喜んでいるのが目に見えるわー。州警察は特別行政府が相手となると目の色を変えるし。ジーンにとっては不幸としか言いようがないけれど」
まるで取り調べの現場を見ているような状態だった。
彼らの推測は外れていなかったが……。
ジーンに心から同情した四人だった。
さて、どうするか。
友人の無罪を証明する。
それができなければ、彼らの友情は崩壊する。
――ありえないでしょ、そんなこと。
即座にそう言える関係。それが彼ら五人の関係だった。