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十七 ランニングラリー

 晴天に恵まれた今日、体育祭、もとい、ランニングラリーが行われる。

 各チームには一から二十まで書いた用紙が手渡された。

 これはスタンプカードで、各チェックポイントにいる教官にスタンプを押してもらう。

 二十個集めればゴールポイントでゴールできる仕組みだ。

 チェックポイントを回る順番は決まっておらず、任意で決められるようになっている。

 どのポイントをどの順番で回るのかも、早くゴールするためのカギになってくる。

 各チーム、作戦を練るのに余念がない。

 それはプランキッシュ・ゲリラの面々も同様だった。

「順番通りに回っていたら、距離的にロスが多いな。チェック六から回った方がよさそうだ」

 チェックポイントを書いた地図を見ながら、フレッドが言った。

「チェック六、五、三、一の順番かしら?」

「そのようだな」

 全員で地図を見る。

 どう見ても、アカデミーの敷地を一周することになりそうだ。

「げっ、チェックポイントに中央棟七階の会議室があるぜ。確かエレベーターは……」

「使用できません」

「ってことは、階段上るのかよ。……うへえ」

「チーム員全員そろわないとスタンプ押してくれないみたいだし、いい運動だわ。……ははは」

 どんな問題が出るのかも重要である。

「こればっかりはな……」

 問題は教官次第である。

 簡単なことを願いつつ、教官達の性格からすると難しい問題をわんさか出してきそうだ。

「嫌な予感するなぁ」

「そりゃ、俺もだ」

 そんな会話をしながら、ゲームスタートを待った。


「用意、スタート」

 教官のこの声をきっかけに、学生たちが一斉にスタート地点から散っていった。

 プランキッシュ・ゲリラはまず第六チェックポイントに向かう。

「第六に向かうのは俺たちだけかな?」

「分からんぞ、もう二組同じ方向に進んでいる」

 五人はバタバタとチェックポイントへ向かった。


 五人そろって第六チェックポイントに着き、チェック表にスタンプを押してもらう。

 そして設けられた問題を見る。

「げっ、こんなのわかるかよ!」

 早くも匙を投げたのはジーンだった。


――問題

「ひさかたの 光のどけき 春の日に」

 下の句を答えよ。


「知らないなぁ」

「俺も知らない」

「……」

 そういう男性陣を見て、グレイスは溜息を吐いて解答用紙をもぎ取った。

 そして記入する。


 ――しづごころなく 花の散るらむ


 用紙を二つに折って、回答箱に入れる。

「これで貸しだからね」

「お前、良く分かったなぁ」

「ジュニアハイでやった。次へ行きましょ」

 五人は次のチェックポイントである第五ポイントへ向かった。


 第五チェックポイントで、また教官からスタンプを押してもらい、問題を見た。


 ――問題

  一般相対性理論の基本方程式の別名を答えよ


またしてもジーンが嫌な顔をする。

この問題の答え(アインシュタイン方程式)は、フレッドが記入し、回答箱に入れた。


「ジーン、これはたぶん一回生でも答えられる内容の問題なはずなんだけど……。教官達もそれは考えて作成しているだろうし……」

「俺には向いてない問題だ!」

 他の四人はやれやれといった顔をして、次のチェックポイントへ向かった。


 その頃のライトニング・ブルーの面々はというと……。

 第三チェックポイントの問題で引っかかっていた。


 ――iPS細胞の正式名称を答えよ


「ほら、あれだって!」

「だから、『あれ』では分からん。正式名称を言え」

「だから、あれだってば」

「だーかーらー、意味不明な言葉を言うな、お前書け」

「えー」


 そこへプランキッシュ・ゲリラの面々が合流した。

「何? 煮詰まってんの?」

「余計なお世話だ」

「どれどれ……」

 教官にチェック表にスタンプを押してもらって問題を見るメンバー達。

「これはカイル向きの問題だなぁ。任せた」

「任せられるとしましょうか」

 焦るライトニング・ブルーの面々をしり目に、カイルが解答用紙に答え(induced pluripotent stem cell)を書き、回答箱に入れた。


「では、お先にー」

「ちくしょーっ」

こうしてラリーは進んでいった。




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